マイナビが7月22日に発表した、「2027年卒 企業新卒採用活動調査」によると、2027年卒業予定者の採用活動にあたって初任給を「引き上げた」と回答した企業は89.1%で、3年連続で増加している。
引き上げの理由は、「求職者へのアピールのため(59.8%)」が前年と同じく最も多く、以下、「給与制度の見直しで全社員の給与を引き上げたため(49.7%)」、「他企業が引き上げをしているため(48.2%)」と続く。厳しい人材獲得競争や物価上昇に伴う賃上げが背景となっていることがうかがえる。
このような状況を踏まえると、初任給の引き上げは今後もさらに続くように思えるが、マイナビの調査を読み解くと、「そう長くは続かないのでは」という推測も立てられる。以下、説明しよう。
第一に、新卒採用意欲に減退が見られることだ。調査では27年卒で採用数を減らした企業は全体の9.3%と少数派であるものの、26年卒に比べると3.1ポイント増加している。採用数を増やした企業を見ると11.9%で、この3年間で徐々に減少している。
米国では、AIによる新人の業務代替がダイナミックに進み大卒者の就職難が深刻化している。数年後に日本にも波及する可能性は高い。今春、日本経済新聞社が主要企業を対象にした調査では、2026年度の採用計画で中途採用比率が50.3%と、調査開始以来はじめて新卒を上回った。新卒採用競争の激化は峠を越した感があり、初任給の高騰に歯止めをかける要因となりうる。
第二に「引上げ疲れ」が懸念されることだ。何年連続で初任給を引き上げたかという質問に、「3年連続以上」が43.3%と最多で、「連続ではないが直近で段階的に」も27.3%となっている。一方で「今年初めて」は8.3%で、近年、毎年のように引き上げを実施している企業が多いことがうかがえる。
初任給の引き上げは、単に新入社員の人件費を増やせば済む話ではない。若手社員や中堅社員、さらには全社員の人件費増加にも波及する。多くの企業で、引き上げの財務的余力が狭まっていると推察される。
第三に、引上げの競争効果の低下である。調査では、初任給引き上げの効果・影響として、「他企業との待遇の差を縮めたり、差をつけることができた」は35.1%で26年卒と同じくトップであるものの、26年卒に比べてポイントはやや低下している。ここ数年、全体に引き上げられたことで、高い初任給が差別化要因でなくなってきている可能性がある。こうした状況においては、「無理に引上げなくても」との思いも出てくるだろう。
以上、新卒採用意欲の減退、財務上の制約、引き上げ効果の低下を背景に、初任給引き上げの動きは収まってくるのではないかという見立てである。
マイナビの調査では、大卒・総合職の初任給の前年上昇率は25年卒3.2%、26年卒3.9%、27年卒4.2%と上昇傾向にある。見立てが正しければ、28年卒は横ばい、そして29年卒は減少もあり得るが果たしてどうなるだろうか。