賃金に関するQ&A

 賃金の原則

Q.労働基準法でいう賃金とはどういうものでしょうか?
 労基法上の賃金にあたるかどうかの判断基準は、
 ①使用者が労働者に支払うものであること
 ②労働の対償として支払うものであること
 の2点です。したがって、毎月の給料だけでなく、諸手当、賞与、退職金なども賃金となります。逆に、①の要件から、お客様から受け取るチップは賃金となりませんし、②の要件から、会社が恩恵的に支給する結婚祝金や弔慰金、業務で必要な制服・作業服の支給、実費弁償的な出張旅費・交際費、福利厚生の一環である住宅の貸与等は賃金には該当しません。
(2012.11.26)

Q.平均賃金を算定する際の起算日はいつでしょうか?
 事由の発生した日の前日からさかのぼって3ヶ月です。なお、3ヶ月とは歴月なので、たとえば6月15日に事由が発生した場合は、6月14日から3月15日までの92日となります。
(2012.11.26)

Q.通貨払いの原則の例外として、労働協約に別段の定めがある場合には通勤定期券の支給ができるとありますが、これは労使協定でもよいのでしょうか?
 現物給付は労働協約に定めがある場合のみに認められるもので、労使協定では認められません。つまり、労働組合のない事業場では、通勤定期券の現物支給はできないことになります。また、労働協約があったとしても、その適用を受けるのは、組合員に限られます。
(2012.11.26)

Q.月例給与の支給日を、「毎月第3月曜日にする」という定め方はできるのでしょうか?
 労働基準法に定められている賃金支払5原則の1つに、「賃金は一定の期日を定めて支払わなければならない」という一定期日払いの原則があります。「毎月第3月曜日」という定め方では、支払日が変動しますので、この原則に反することになり、認められません。
 なお、支払日が休日にあたるときに、その繰り上げ・繰り下げをするのは問題ありません。
(2012.11.26)

Q.社員から今月は生活費が足りなくなったので、給料の前借りがしたいという依頼を受けました。会社として、これに応じる必要があるのでしょうか?
 社内融資等の福利厚生制度があれば別ですが、少なくとも労働基準法上はそのような依頼に応じる必要はありません。
 ただし、労基法25条に非常時払というのがあり、労働者が出産、疾病、災害、結婚、死亡、1週間以上の帰郷の場合の費用に充てるために請求したときは、既往の労働分の賃金は支払わなければなりません。「既往の労働分」ですので、“前借り”ではなく“前受け”(会社から見ると“前渡し”)となることに注意したいです。
(2012.11.26)

Q.労基法第91条では、減給制裁規定の制限を定めていますが、この条文の「1回の額」「総額」「1賃金支払期における賃金」とは、どのような意味でしょうか?
 以下の通達を参照ください。
 「1回の額」とは、1事案に対する減給の総額のことであり、「総額」とは、1賃金支払期に発生した数事案に対する減給の総額のことをいう(昭和23.9.20基収1789号)。
 また、「1賃金支払期における賃金」とは、現実に支払われる賃金の総額、すなわち欠勤・遅刻等により減額された後の賃金のことをいう(昭和25.9.8基収1338号)。
(2012.11.26)

Q.派遣労働者の賃金で、派遣元会社がA県にあり、B県の派遣先会社に派遣された場合、地域別最低賃金はどちらの県のものが適用されるのでしょうか?
 派遣先であるB県の最低賃金が適用されます。
(2012.11.26)

Q.最低賃金は時給で定められていますが、月給を時給に換算するにはどうすればよいのでしょうか?
 次の計算式を用います。
  月給額÷1ヵ月平均所定労働時間
  =月給額÷1日の所定労働時間×年間所定労働日数÷12
(2012.11.26)

Q.賃金を支払うときの端数処理の仕方について教えてください。
 次のような取り扱いが可能です。
●1ヵ月の賃金支払額に100円未満の端数が生じた場合
 ⇒50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げる。
●1ヵ月の賃金支払額に1,000円未満の端数が生じた場合
 ⇒翌月の賃金支払日に繰り越して支払う。
(2012.11.26)

 時間外・休日・深夜割増賃金

Q.割増賃金を計算するときの端数処理の仕方について教えてください。
 次のような取り扱いが可能です。
1ヵ月間の時間外労働、休日労働、深夜労働について、それぞれの合計時間数に1時間未満の端数がある場合
 ⇒30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる。
1時間あたりの賃金額および割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合、または1ヵ月間の時間外労働、休日労働、深夜労働について、それぞれの割増賃金に1円未満の端数が生じた場合
 
⇒50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げる。
(2012.12.10)

Q.当社の所定労働時間は9時~18時までの8時間ですが、遅刻した社員が18時以降の残業をした場合にも、時間外割増賃金を支給しなければならないのでしょうか?
 1日の実労働時間で計算して8時間以内ならば支給する必要はありません。ただし、就業規則で「18時以降の労働に対しては時間外割増手当を支給する」など、終業時間後の労働に一律的に手当を支給するような定めになっている場合は、支給しなければならないとも考えられます。あくまで法定時間外労働に対する手当という趣旨であるなら、規程を変更しておく必要があります。
(2012.12.10)

Q.割増賃金の算定除外賃金として家族手当や通勤手当、住宅手当などがありますが、これらであっても除外されないケースとは?
 家族手当、通勤手当、住宅手当の名称であっても、労働者に対して一律的に支給される場合には、算定除外賃金とはなりません。たとえば、通勤手当として全員に1万円を支給するような場合は、算定除外賃金に認められません。元々、算定除外賃金とは、同一の時間外労働に対する割増金額が、労働者の個人的な事情で変わるのは合理性がないという考え方があるからです。
(2012.12.10)

Q.割増賃金の算定除外賃金について、住宅手当を大都市、中都市、その他といったエリア別に金額を区分している場合は、算定除外できるでしょうか?
 住宅手当が算定除外賃金となるためには、「住宅に要する費用に応じて算定される手当」である必要があります。エリア別の場合はこれに近いといえますが、「費用に応じて算定」とはいえないでしょう。したがって、算定除外賃金とはなりません。なお、この件については、労働基準監督署の確認も得ています。
(2012.12.10)

Q.時間外労働が月60時間を超えるときには、50%以上の割増賃金の支払いが必要となりますが、この「月60時間」には休日労働時間も含むのでしょうか?
 対象となるのは時間外労働時間だけで休日労働時間は含みません。たとえば、ある労働者がひと月に50時間の時間外労働と16時間の休日労働を行ったとすると、50時間について25%以上の時間外労働割増賃金を、16時間について35%以上の休日労働割増賃金を支給すればOKです。
 休日労働となるのは法定休日における労働ですが、週休2日制の会社で法定休日を特定していない場合は、歴週(日~土)で後順に位置する休日が法定休日となります。たとえば、土日が休日であれば土曜日が法定休日となります。

(2012.12.10)

Q.当社では管理職に年俸制を導入していますが、この度、一般社員にも導入することにしました。ところで、一般社員ということで時間外・休日割増賃金の支払いが必要となりますが、年俸額の中に時間外・休日割増賃金を含めて、固定的に支給することは可能なのでしょうか?
 次の3つの要件を満たすことで可能となります(平成12.3.8基収78号)。
①年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが、労働契約の内容として明らかであること
②割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区分することができること
③割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上に支払われていること

(2012.12.10)

Q.年俸制の場合の時間外・休日割増賃金の計算方法は、どのように考えればよいのでしょうか?
 時間外・休日割増賃金の計算は、年俸制であっても基本的に月給制と同じですが、1つ気をつけなければならないのは賞与の取り扱いです。
 割増賃金の計算基礎となる賞与とは、支給額があらかじめ確定されていないものをいい、支給額が確定しているものは賞与とみなされません。このため、年俸制で毎月支払う部分と賞与として支払う部分を合計して年俸額が確定している場合の賞与部分は、賞与に該当しません。したがって、この場合は、賞与も含めた年俸額の12分の1を月の所定労働時間で除した金額を割増賃金の計算基礎とする必要があります。

(2012.12.10)