年俸制

 成果型報酬の代表的な仕組みである年俸制の事例を紹介します。 
 
1.改定の背景

 クライアントは社員数約50名のサービス業です。これまで、社長が報酬や昇進等の処遇を決めていましたが、社員数が増えてきたこともあり、等級制度・評価制度等の人事諸制度を導入し、併せて報酬体系も見直すこととなりました。給与については、成果責任を明確にするため年俸制にしたいとの要望があり、管理職への導入を決定しました。

2.改定の内容

 従来の管理職の給与は、

・基本給+職務手当+固定時間外手当+業績手当(賞与相当)

 という構成でした(他に家族手当、通勤手当等がありますが省略)。 このうち、基本給と職務手当、業績手当は、社長と社員が話し合いで決めていたため、各自バラバラのものとなっていました。

 これを新たな年俸制では、下記の構成としました。
 
資格年俸+役割年俸+業績年俸(+家族手当等)

(1)資格年俸
・資格年俸は等級ごとに設定します。
・現状の「職務手当、固定時間外手当」をベースに等級ごとにテーブル化しました。号数は25号程度です。
・テーブル化したのは、現在の賃金体系から移行しやすく、また、今後、一般社員からの昇格者や中途採用者の年俸決定に柔軟に対応するためです。
・人事評価によって昇降給させます。

(2)役割年俸
・役職に応じた固定額としました。
・役職ごとに目安となる基本給が存在したので、これをベースに作成しました。
 例)部長:基本給30万円→30万円×12=360万円

(3)業績年俸
・業績に応じて支給するもので、賞与相当額となります。
業績年俸は、基本業績年俸×役員査定で算出します。

・基本業績年俸は、現状の業績手当をベースに等級ごとに設定しました。
 例)部長:業績手当10万円→10万円×12=120万円
・役員査定の際の目安として以下の基準を作成しました。目安なので、たとえば「1.15」という取り扱いも可としています。

評価
SS
S
B
C
D
係数
1.5
1.3
1.1
1.0
0.9
0.7

・役員査定は人事評価を参考とするものの、役員独自の判断で査定できるものです。人事評価の最高はS評価ですが、特大の貢献に報いられるようSS評価を設けています。
・この査定を基に、最終的に社長と各管理職との話し合いで決定します。
 
 
以上、社長の裁量を残しつつ、ルールに沿って年俸額の決定ができる仕組みとしました。 現在の給与を踏まえて設計したので、移行もスムースにできました。