ゾーン式賃金 |
ゾーン式賃金とは、下記のように、一定の範囲給をいくつかのゾーンに分け、ゾーンごとに評価による昇降給パターンを変える賃金システムです。
具体的に説明しましょう。
下記は、3等級(係長クラス)の賃金テーブルです。号給(=号俸)は1から20まであり、これを5号給ずつ区分して、Ⅰ~Ⅳまでの4つのゾーンを組んでいます。今期、ゾーンⅠの5号給208,000円のYさんが人事評価でAを取ったとします。そうすると、3号給アップとなりますので、来期のYさんの賃金は8号給の214,000円となるわけです。一方、ゾーンⅣの18号給224,000円のZさんもA評価を取ったのですが、こちらは1号給しかアップせず、19号給の226,000円となります。仮に、両人ともD評価だったとすると、Yさんの賃金に変わりはありませんが、Zさんは2号給のダウンとなります。
つまり、低ゾーンにいる社員は比較的昇給しやすいのに対し、高ゾーンの社員は昇給しにくく、さらに降給しやすいということです。一般的な賃金システムのように、B評価を取っていれば昇給し続けるといったことはありません。
■3等級賃金テーブル
評価による昇降給 | |||||||
ゾーン | 号給 | 賃金額 | S | A | B | C | D |
Ⅳ | 20 | 228,000 | 変わらず | 変わらず | 変わらず | 1号給↓ | 2号給↓ |
19 | 226,000 | 1号給↑ | 1号給↑ | 変わらず | 1号給↓ | 2号給↓ | |
18 | 224,000 | 2号給↑ | 1号給↑ | 変わらず | 1号給↓ | 2号給↓ | |
17 | 222,000 | 2号給↑ | 1号給↑ | 変わらず | 1号給↓ | 2号給↓ | |
16 | 220,000 | 2号給↑ | 1号給↑ | 変わらず | 1号給↓ | 2号給↓ | |
Ⅲ | 15 | 218,000 | 3号給↑ | 2号給↑ | 1号給↑ | 変わらず | 2号給↓ |
14 | 216,000 | 3号給↑ | 2号給↑ | 1号給↑ | 変わらず | 2号給↓ | |
13 | 214,000 | 3号給↑ | 2号給↑ | 1号給↑ | 変わらず | 2号給↓ | |
12 | 212,000 | 3号給↑ | 2号給↑ | 1号給↑ | 変わらず | 2号給↓ | |
11 | 220,000 | 3号給↑ | 2号給↑ | 1号給↑ | 変わらず | 2号給↓ | |
Ⅱ | 10 | 218,000 | 3号給↑ | 2号給↑ | 1号給↑ | 変わらず | 1号給↓ |
9 | 216,000 | 3号給↑ | 2号給↑ | 1号給↑ | 変わらず | 1号給↓ | |
8 | 214,000 | 3号給↑ | 2号給↑ | 1号給↑ | 変わらず | 1号給↓ | |
7 | 212,000 | 3号給↑ | 2号給↑ | 1号給↑ | 変わらず | 1号給↓ | |
6 | 210,000 | 3号給↑ | 2号給↑ | 1号給↑ | 変わらず | 1号給↓ | |
Ⅰ | 5 | 208,000 | 4号給↑ | 3号給↑ | 2号給↑ | 1号給↑ | 変わらず |
4 | 206,000 | 4号給↑ | 3号給↑ | 2号給↑ | 1号給↑ | 変わらず | |
3 | 204,000 | 4号給↑ | 3号給↑ | 2号給↑ | 1号給↑ | 変わらず | |
2 | 202,000 | 4号給↑ | 3号給↑ | 2号給↑ | 1号給↑ | 変わらず | |
1 | 200,000 | 4号給↑ | 3号給↑ | 2号給↑ | 1号給↑ | 変わらず |
なぜ、このような設定をするかと言うと、同じ係長であっても賃金の上下幅があるため、高い賃金をもらっている社員は、それにふさわしい成果(S・A評価)が求められ、低い賃金の社員は、B評価でもよくやったという考え方ができるからです。
言葉を換えると、ゾーンⅠというのは「修行段階(あるいは当該等級は不適格)」、Ⅱは「もう少しで一人前」、Ⅲは「一人前」、Ⅳは「高レベル(あるいは当該等級は役不足)」を意味しているとも言えます。ゾーン欄に示しているように、ゾーンⅠの在籍者は降格対象、ゾーンⅣは昇格対象という具合に昇降格要件にも利用できます。
評価による昇降給のパターンは、会社の特性やポリシーを反映させることになります。たとえば、昇給要件を厳しくするところでは、ゾーンⅣのB評価は「1号給↓」とすることも考えられます。
ゾーン式賃金のメリットとしては、
① 等級内で社員がどういう位置づけにあるのかを自覚でき、モチベーションが高まる。
② 当たり前のことをやる(B評価)だけでは昇給できなくなるので、社員の意識改革ができる。
③ 一定レベルまでは昇給しやすいため、低賃金の社員の生活基盤の安定化ができる。
③ 成果(評価)に応じた賃金配分となり、人件費のむやみな上昇を抑制できる。
④ 昇降格要件や賞与・退職金の支給基準等に利用できる。
といったことがあげられます。