評価得点をそのまま賞与に反映

1.一般的な賞与支給方式の問題点

 賞与の支給額の決定方式としては、基本給×支給月数×評価係数というのが一般的です。
このとき、評価係数はSABCDといった評価ランクに応じて下記のように設定することが多いと思います。

評価SABCD
係数1.41.21.00.80.6

 この方式は、評価のランク付けが必要なことから、次の2つの問題が生じます。

①ランク内で差がなくなる、ランク間で差が大きくなる
 たとえば、上から2番目のランクであるAが70点以上~80点未満のとき、79点という限りなくSに近い評価も、70点という限りなくBに近い評価も、同じ「A」の扱いになってしまうという点です。別の見方をすると、SとAの境界では、たった1点の違いで賞与に数万円、場合によっては数十万円の差が生じるかもしれません。

②得点の調整が行なわれる
 2つめは、①に起因して、評価ランクの境界に近い点数のとき、上のランクとなるよう評価者が点数を調整してしまうことです(逆に下げるケースもあるかもしれませんが)。自己評価を実施している場合は、被評価者自身がそのような調整をすることもあるでしょう。評価者あるいは本人が、「あと1点」のためにどれか適当な項目の評価を調整するのは、むしろ自然なことと言えるかもしれません。

 ①の問題点への対応として、区分を細かくする方法があります。昇給や昇格に反映させるときは5段階ですが、賞与への反映の際は7段階や9段階にする会社もあると思います。これによりランクごとの差が多少は小さくなりますが、問題が解消するわけではありません。

 ②の問題点への対応として、点数とランクの関係を社員に公開しないという方法があります。ただ、その情報は漏れてしまったり、何年かすれば経験的にわかるようになるものです。いずれ社員の知るところになると考えたほうがよいでしょう。

2.得点反映方式とは

 前置きが長くなりましたが、これらを一気に解決するのが評価得点を直接反映させる方式です。計算式としては、以下のものが基本型です。

● 評価得点×等級別(役職別)評価係数×得点単価

 等級別(役職別)評価係数というのは、等級あるいは役職によって賞与額に差を付けるためのものです(下記参照)。評価が同じならば、5等級は1等級の3倍支給されることになります。

等級12345
係数1.01.5
2.0
2.53.0

 得点単価は、賞与原資を評価得点×職位別(役職別)評価係数の総合計で除したものとなります。
考え方としてはポイント式賞与と同じです。したがって、賞与原資をコントロールできるなどのメリットも期待できます。

 デメリットとしては、評価結果によっては差が付かなくなる点があります。中心化傾向が強い会社では、同等級間でほとんど差がつかなくなるケースも出てきます。

 賞与に差を付けたくないのであればよいのですが、差を付けたい場合は、
得点を二乗する、平均点との差を倍にする、といった仕組みで得点差を拡大させることができます。他にも偏差値を用いるなど、いろいろ考えられますので、自社に合致した方法で設定すればよいでしょう。

 この方式でキーとなるのは評価係数の設定です。できれば評価係数は社員にオープンにしたいです。これにより、さらに上位の等級や役職を目指そうとするインセンティブが働くことになるからです。

 このように多くのメリットを持つ得点反映方式の導入をぜひ考えてみてください。