目標管理~進捗管理編 |
ここでは、目標管理における進捗状況の管理の仕方について、ポイントを解説するとともに、適切な進捗管理が進められるよう、当オフィスで実施している目標管理シート上の工夫点を説明します。
進捗管理の必要性
目標管理はPLAN-DO-SEEのマネジメントサイクルを回すことで実施されますが、進捗状況の管理というのは、PDSサイクルにおけるDのフェーズとなります。
どんなに立派な目標を設定しても、進捗管理を適切に行わなければ達成は困難です。偶々うまくいくことがあるかもしれませんが、それでは、社員(部下)・上司双方にとって今後に使えるノウハウを修得することができません。物事を計画的に進めていくのはビジネスの基本であり、進捗管理はその最重要項目です。目標管理の場で進捗管理の仕方をマスターできれば、他の場面でも応用可能となります。その意味で、若手社員に進捗管理の仕方を学んでもらう場として、目標管理を位置づけることもできます。上司がそこに関与していくのは言うまでもありません。
また、上司が進捗状況をしっかりと把握しておけば、評価の的確性も高まります。社員の側から言えば、そのような上司が行った評価ならば納得性は高くなるといえます。
目標管理における進捗管理とは
改めて進捗管理を定義すると、「目標達成のための実行計画を、差異分析により軌道修正していくこと」となります。そして、目標管理においては、社員が主体的になって実施するものであり、上司はそのサポート役に徹することが求められます。目標管理は本来的に”Self-Control”するものであることを再認識したいです。
進捗管理の頻度
次に、進捗管理の頻度について、上司の立場から述べます。まずは、目標設定から評価までの間に1度はオフィシャルな面談の機会を設けることが望ましいです。これは、管理者の自主性に任せるのではなく、目標管理制度の中に中間面談として組み込むのがベストです。ただ、このような中間面談の制度化に対して、管理者から、「設定面談と評価面談の時間を取るだけでも大変なのに中間面談なんかムリだ」との声が出ることがあります。これに対しては、「中間面談をすることで、目標達成に向けて会社や上司が本気になっていることを示せます。30分でいいのでやってください」と理解を求めます。
当然ながら、進捗状況を的確につかむためには中間面談だけでなく、日常的なコミュニケーションの中でも実施をする必要があります。むしろ、日常の積み重ねがあってこそ、中間面談が短時間で有効に行われると考えたほうがよいでしょう。
ただし、このような日常の進捗管理は、やり過ぎに注意をしたいです。あまりに細かくチェックをしていると、進捗「監視」となり、逆に社員のやる気を損ねてしまいます。若手かベテランか、担当職務を熟知しているのか不慣れなのか、目標が高度なのかそれほどでもないのか、放っておいたほうがよいタイプか面倒を見たほうがよいタイプかなど、部下や目標内容によって頻度を考える必要があります。この辺のバランスは、まさに上司としてのマネジメント力が問われるところです。ただ、目安として、最低限1月に1回は進捗状況がわかるようにしたいです。
進捗管理の確認事項
進捗管理における確認事項としては、次のものがあります。
●進捗状況・進捗度合いはどうなっているか? ●設定した目標の妥当性に変化はないか? ●当初に考えた方法・手段は有効か? ●問題は発生していないか? ●達成に向けての今後の課題は何か? ●上司に支援してほしいことはないか? |
2つ目は、当初に設定した目標の重要度や難易度に変化はないかということです。環境変化の早い今日、目標自体が無意味になったり、達成が困難になったりすることもあります。進捗管理でそのような状況を早めにつかみ、目標の変更・修正等の対応をしていくことが大切です。達成しても価値のない目標管理を、ただ人事評価のためにやるという馬鹿げたことはくれぐれも避けてください。
これらの確認事項は、中間面談の場で初めて問うのではなく、普段から社員にやってもらうよう意識させておくことが求められます。まさに、これが進捗管理の指導ということです。
社員と上司それぞれの留意事項
まず、社員の留意事項として次の3つを挙げておきます。
①組織目標の達成のためには、自分の目標達成が不可欠であることを意識すること
②達成責任は自分にあり、上司は支援者であるという認識をもつこと
③上司との報連相をマメに行うとともに、上司をうまく活用すること
次に、上司の留意事項を3つを挙げておきます。
①部下の目標達成が組織にとって重要であり、強い関心を持っていることを言動に示すこと
②主役は部下であり、自分は支援者との意識を持って、部下を動機付け育成すること
③単に「頑張れ」と言うだけでなく、具体的な支援により部下と協働すること
①~③は、各々の立場から同内容のことを表していることに気づくと思います。キーワードでいえば、役割意識、主体性、連帯感といったことになります。これらはいずれも社員のモチベーションに関わることであり、この3つをうまく取り込むことが目標管理を機能させるポイントともいえます。
目標管理シートへの落とし込み
中間面談において進捗状況を確認することの重要性についてはすでに指摘しました。その実践を担保するために、当オフィスでは、目標管理シート上に次の項目を設けるようにしています。
①進捗状況 | 目標の進捗の度合いを記入する |
②問題点 | 遅れを取り戻す、あるいは状況をさらによくするための問題点を記入する |
③今後の課題 | 問題点を解決するための取り組み課題を記入する |
④上司コメント | 問題点を解決し、目標達成できるようなアドバイスを記入する |
中間面談の際の資料として、①~③は社員に、④は上司に、設定した目標ごとに記入してもらう仕組みです。①については記入を容易にするため、特に一般社員用の場合などでは、
A.非常に順調に進んでいる
B.まずは順調に進んでいる
C.少し遅れている
D.大幅に遅れている
といった形で選択式にすることもあります。
また、当該欄には面談を実施した日も記入してもらいます。面談の実行を促進させるとともに、人事や部門長等が実施されたかどうかをチェックし、実施されていないのなら、その理由を確かめ、実施ができるよう制度の改善につなげていくためです。ある企業では、一部の部署で中間面談の時期が年に1度の繁忙期と重なり、どうしても時間が取れないことから、報告のみでOKとした例もあります。
進捗状況を明示することの効果
多くの会社で用いられている目標管理シートは、目標設定と評価だけを記すものであり、上記のように進捗状況まで確認するものは少ないと思います。ただ、目標管理は評価のためでなく、組織業績向上のためにあるものと考えれば、進捗管理は極めて重要となるはずです。進捗状況を明記することで、目標達成度をより高めることができます。
もう1つの効果としては、社員と上司が協働して目標を実現するという姿勢が強調できることです。これは双方のモチベーションの向上にも役立ちます。共通目的に向かって一体感をもって取り組みというのは、非常にやりがいのあることだからです。