目標管理~達成度評価編 |
ここでは目標管理における達成度評価の際のポイントを解説します。目標管理では、社員本人が自己評価を行い、そのうえで上司が評価するという形が一般的です。よって、特に記述のないかぎり、社員は自己評価のときの、管理者は部下評価のときの留意点として読んでいただければ結構です。また、制度設計の視点からいえば、下記のポイントを前提に運用方法やシート設計を考えていく必要があります。
達成度評価の3つのポイント
達成度評価の際のポイントは3つあります。
1つ目は、達成度の判断です。達成度の判断は「結果がすべて」が原則です。当初設定した目標レベルにどの程度達しているかを判定するものであり、頑張ったことや真面目に取り組んだことを評価するのではないということです。通常、設定から評価までには、半年から1年のスパンがありますので、その間には予期せぬことが発生するのは当たり前のことです。結果的に、大変な努力をしたにもかかわらず、達成できなかったということも起こります。その際にも、結果だけに目を向け、その達成度合いを評価することが重要です。もちろん、逆に思わぬ追い風が吹いて、ラクに達成するケースがあるかもしれません。この場合も、たいした努力をしてないのだから高評価はしないといった考え方はNGです。純粋に結果だけを判定するのが適正な評価の仕方です。もちろん、達成に向けてのプロセスは重要ですので、人事評価の枠組みの中で無視をするわけではありません。これらは、コンピテンシー評価や能力評価でフォローをするということになります。
2つ目は、達成度評価の目的をしっかりと理解しておくことです。このように評価の際に結果だけに着目するのは、達成度評価の目的を考えれば自明のことです。達成度評価の目的は次の2つです。
①業績向上のために必要な措置や対応策の実施につなげること
②社員の能力開発の課題を明確にすること
これらの目的を踏まえると、今どのような結果になっているかをあるがままに把握することの重要性がわかるはずです。努力の有無などによって現状判定をゆがめると、①②の中身が間違ってくるということです。そもそも目標管理は業績向上のために行うものであることを再確認する必要があります。
3つ目は、目標達成状態の共有化です。正確には、これは目標設定時のポイントですが、適正な評価の前提として欠くことのできない事項なので、ここでも指摘をしておきます。S~Dの5段階評価でいえば、B評価(普通レベル)の状態だけでなく、顧客満足度の高さやコスト、スピード、波及効果等の観点からA評価とC評価の状態を想定し共有化しておくことが望まれます。
自己評価のポイント
次に、社員の方向けに自己評価のポイントを示します。これは、以下のように4つの視点から行うことで、体系性のある評価ができると思います。管理者は、このような視点から部下に自己評価をしてもらうよう指導する必要があります。自己評価チェックシートという形でフォーマット化し、社員に交付するのもよいでしょう。
視点 | 具体的項目 |
①達成度分析 | □どのくらい達成したのか/しなかったのか |
□評価は何か | |
②原因分析 | □ 達成/未達成の決め手は何か |
□ それは外部要因か/自己要因か | |
□ 障害への対応は適切だったか | |
□ コントロールを適切に行ったか | |
□ 周囲との連携は適切だったか | |
□ 上司への報連相を十分に行ったか | |
③目標分析 | □ 意味のある目標だったか |
□ 目標の数は適切だったか | |
□ 困難度は適切だったか | |
□ 他に適切な目標はなかったか | |
④課題検討 | □ 今回の目標管理活動を通じての収穫は何か |
□ 今回の目標管理活動でもっと工夫すればよかったことは何か | |
□ 次期の目標をどのように考えるか |
達成度評価の基準
達成度評価の基準は、次のような設定の仕方をします。
S | 目標水準を大幅に上回った。 |
A | 目標水準を十分に上回った。 |
B | 目標水準を達成した。 |
C | 目標水準を下回った。 |
D | 目標水準を大幅に下回った。 |
これでは基準としてあいまいではないかと不安に思われるかもしれませんが、目標内容は仕事によって多岐にわたりますので、全体の基準としては、こういう形で示しておき、後は個別に設定していくほうが望ましいです。数値目標において、よく、S120%以上、A120%未満110%以上・・・といった形で基準を設ける場合がありますが、比較的ラクに120%を超えられる目標もあれば、105%でも困難という目標もありますので、非常に運用しづらくなります。ただし、B評価(普通レベル)は、100%以上なのか、あるいは、概ね100%なのかを明確にしておいた方がよいです。
また、評価を8段階くらいに分けるものも時折見かけますが、判定が難しく、適正に機能するとは思えません。評価は5段階前後が適切です。最終的に8段階に分けたいのであれば、個別の目標の評価は5段階で行い、合計得点を8段階で評価すれば済むことです。
フィードバック面談の重要性
達成度評価で目標管理は一応のところ終了しますが、目標管理のサイクルの視点からは、次の目標に向けて新たなスタート地点に立ったともいえます。スタート地点を間違えたり、誤った方向に向かったりしないよう、達成度評価を基に、社員と管理者との間で評価内容や次期への課題を共有することが重要です。そのために評価(フィードバック)面談の役割は非常に大きなものがあります。実りのある面談をするために、適正な評価をすると言ってもよいでしょう。面談制度の設け方、効果的な面談の仕方などについては、改めて説明をしていきたいと思います。