目標管理~目標設定編

 ここでは目標管理において適正な目標が設定できるよう、当オフィスで実践している手法を説明します。目標管理シートを設計する際のポイントといってもよいでしょう。もちろん、目標管理において最重要なのは上司と部下のコミュニケーションであり、たとえシートがしっかりしたものでも、これを抜きに適正な目標管理が進められることはありません。ただ、シートが不完全であると、適切なコミュニケーションが難しくなるのも事実です。ツボを押さえたシートは、目標達成に向けて、適切なコミュニケーションを進めるためのベースになるといえます。

 目標3要素の明確化

 目標がその機能を果たすためには3つの要素を打ち出す必要があります。「何を」「どれだけ」「いつまでに」の3要素です。
 当然、目標管理シートにもこの3つを明確に示すことが求められますが、実際のところそうではありません。さすがに目標そのものである「何を」を欠いているシートを見たことはありませんが、「どれだけ」や「いつまでに」が欠けているシートはときどき目にします。
 そのような企業の言い分は、「どれだけ」については「何を」の中に含まれているからであり 、また、「いつまでに」がないのは、半年あるいは1年といった評価期間内に実施することが前提になっているからということなのですが、前者の場合は、人によってはどれだけがあいまいになる人も出てくるだろうし、後者にしても、やはり、期限を明確にしないことには目標達成意識は弱まってしまいます。
 まずはこの3要素を明示することが大切です。

 現状レベルの共有化

 次に「何を」について、もう少し細かく検討していきます。
 目標管理でよく問題となるのは、達成状況の判断が上司と部下とで異なるというケースです。数値化された目標であればそれほど問題はないのですが、定性的な目標の場合によく起こります。その原因は、簡単に言うと、達成状態のイメージが双方で異なっていたということです。シートの記述の上では共有されたかに思えた達成イメージが、実は共有化できてなく、評価段階に至って露見したということです。これを防ぐために、できるだけ数値化するという原則があるのですが、数値化できない目標が多いのも事実です。
 そこで、重要となるのが、まず、今の状態はどうなのかという、現状レベルの共有化です。すなわち、現在はこのような状況・レベルにある、これを期末までにこのような状態に引き上げるという考え方をするわけです。もちろん、そのようなことをやっているケースも多いのでしょうが、改めてシート上に明示しようというわけです。

 目標水準の明確化

 目標水準は、上に述べた現状レベルをどのような状態に持っていくかを記入します。数値化できるものはなるべく数値化し、そうでないものは、到達レベルを可能な限り客観的に判定できるよう、その状態を表現します。表現にあたっては、下記のような禁句集を用意しておくと重宝します。
 目標水準を本人と上司とで共有化することが目標管理運用のカギとなりますので、しっかりと検討・話し合いをしたいです。なお、実現までに数年かかるような長期的な目標の場合は、評価時点までに目指す状態を水準として記します。

<禁句集の例>

禁句

修正のポイント

努める具体的成果を明示する
改善する何をどのレベルまで改善するかを明示する
調整する調整して何を実現するかを明示する
徹底する徹底することで、何をどのような状態にするかを明示する
見直す見直して、をどのような状態にするかを明示する

 方策の検討

 目標を達成するための具体的手段を明示します。目標達成できるかどうかは、この方策の的確性にかかっているといえます。よくあるのが、毎回同じような方策を記入してくるケースですが、同じことをやっていても進歩はありません。前回と何が違うのか、何を工夫するのかを考えて、記載する必要があります。上司もこの点をしっかりとチェックすべきです。方策に関しては、別紙に詳しくまとめてもらうくらいの対応が望ましいです。

 達成度の判定方法・手段の明確化

 達成度の判定をどのような方法・手段で行うかを設定時点で話し合っておくのも効果的です。評価段階で判定しようとして、判断できずに不適切な評価をせざるを得ないことがよくあるからです。これをうまく決められなければ、目標水準そのものが共有化できてないことになります。
 具体的には以下のものがあります。
 ①各種データ・資料
 ②アンケート結果・評価結果
 ③テスト結果・資格
 ④立会い・同行
 ⑤上司の現認
 ⑥成果の現物

 ウェイトの設定

 目標の数は、1個や2個では少なすぎて業績向上につなげることは難しく、6個以上だと多すぎて力が分散してしまいます。3~5個というのが適切なところでしょう。これらの目標は、組織目標への貢献度から重要度に違いがあるのが普通です。ということは、全部の目標を同じに扱うのではなく、重要度に応じてウェイトをかけるのも当然といえます。
 ウェイトは、%で表示し、合計で100%になるようにするのがよく用いられているやり方です。その際、あまり細かく刻むのも面倒ですので、5%単位や10%単位に設定するのがよいでしょう。また、ウェイト5%の目標を揚げても意味がありませんので、最低でも10%以上とするなどのルールも必要でしょう。

 難易度の設定

 目標管理の目標に難易度を設定するかどうかは企業の考え方次第です。とにかくシンプルに設計し、運用していきたいということであれば、難易度は不要だし、社員間の公平性を確保したいのであれば、難易度を設定したほうがよいでしょう。実際には、少なくとも目標管理を評価につなげるのであれば、難易度を設けた方が無難です。また、社員にできるだけチャレンジをしてもらうという観点からも、高難度の目標にメリットを与えるのは意味があります。
 難易度の設け方ですが、基本となるのは社員が属する等級です。もちろん、等級内をさらに細分化したグレードがあるのなら、それでも構いません。運用時に注意しなければならないのは、個々人の能力を基準としないようすることです。
個々人を基準にすると、評価の公平性を保てないからです。
 難易度を3段階に分けるとすると、当該等級の社員に当然求められるレベルの目標であれば中難度の目標、上位等級に該当するなら高難度、下位等級に該当するなら低難度となります。段階数は一般的に3つで十分です。

 以上、当オフィスでは、基本的に次の8つを明確に記述してもらうよう、目標管理シートの設計を行っています。目標管理制度の設計や改定を考えている方は参考にしてください。

目標項目(何を)

現状レベル(今の状態は)

目標水準(どのレベルまで)

方策(どのように)

期限(いつまでに)

検査・証明方法

ウェイト

難易度