年少者に関するQ&A

  年少者

Q.コンビニエンスストアを経営しています。近所に住む中学生が夏休みにアルバイトをしたいというのですが、働かせてもよいものなのでしょうか
 労働基準法上、満18歳未満の者を年少者といい、特別に保護をする規定を設けています。年少者のうち、満15歳に達した日以後の最初の3月31日までの間の者を児童といい、さらに特別の保護を求めています。
 まず、児童は原則として労働者として使用することはできません(労基法第56条)。
 
ただし、満13歳以上の児童は、非工業的事業に限り、
 
①健康および福祉に有害でないこと
 
②労働が軽易であること
 
③修学時間外に使用すること
 
④労働基準監督署の許可を受けること
 
を条件に使用することができます。
 
なお、映画の製作又は演劇の事業に限り、満13歳未満の児童についても、上記の①~④の条件を満たした上で使用することができます。
 
どのような業務が①②に抵触するかは、年少者労働基準規則第8条・第9条に定められています。ご質問のコンビニエンスストアの店員は、これらに該当しないと考えられ、満13歳以上であれば、使用可能と考えられますが、具体的判断は所轄労基署に委ねられることになります。
 
なお、蛇足ながら、本件は労働法の観点からみたものであり、フランチャイズ制によるコンビニ経営であれば、中学生アルバイトの可否について、FC本部にも確認をとった方がよいと思います。
(2013.4.8)

Q.年少者を雇用したときには年齢証明書を職場に備え付けなければならないと聞いたのですが、「年齢証明書」とは何でしょうか
 労基法第57条で、年少者を使用する場合は、年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければならないとしています。戸籍証明書は、氏名と生年月日を明らかにした住民票記載事項証明書でOKです。
 なお、児童を雇用する場合は、戸籍証明書に加えて、学校長の証明書と親権者または後見人の同意書を事業場に備え付けなければなりません。
(2013.4.8)

Q.年少者を雇用するときの労働契約は、年少者本人と交わすのでしょうか、それとも親権者である親と交わすのでしょうか
 労働契約は、親権者や後見人と締結してはならず、年少者本人と直接交わす必要があります(労基法第58条)。民法(第824条、第859条)では、未成年者の同意を得れば未成年者に代わって労働契約を締結できると解されますが、特別法である労基法の定めが優先することになります。
(2013.4.8)

Q.年少者を雇用するときには、本人との雇用契約書以外にも、親の同意書も必要でしょうか
 児童を雇用する場合は、親権者または後見人の同意書を徴取し、事業場へ備え付ける必要があります(労基法57条)。労基法では、児童以外の場合には同意書を求めてはいませんが、民法第4条で、未成年者の法律行為には法定代理人の同意が必要とされていますので、親権者等の同意書をもらっておくほうが望ましいでしょう。同意書がなければ、労働契約が有効に成立していないことになり、無用なトラブルを起こしかねないからです。
(2013.4.8)

Q.年少者を雇用しています。雇用する際には、労働条件について親の同意書を得たのですが、しばらくして賃金が相場に比べて低いという理由で、親の方から労働契約を解除したいとの申し出がありました。年少者本人は働きたいとのことですが、親の意向にしたがって労働契約を解除しなければならないのでしょうか?
 親権者もしくは後見人または行政官庁は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合、将来に向かってこれを解除できます(労基法58条)。この場合、親権者等がいったんは同意していたとしても解除できますし、また、未成年者の意に反する解除も認められます。したがって、ご質問のケースは、理由に妥当性があれば契約を解除せざるを得ないと考えられます。
(2013.4.22)
 
 Q.高校生アルバイトを雇いましたが、銀行口座を保有していないため、賃金は親の口座に振り込んでほしいと本人から依頼がありました。依頼通りにしてよいのでしょうか
 労基法第58条の定めにより、未成年者は独立して賃金を請求することができ、親権者や後見人は未成年者の賃金を受けてることはできません。本人の口座を開設してもらうか、現金払いとする必要があります。
(2013.4.8)

Q.年少者を雇用しようと考えていますが、労働時間は通常の労働者と同様に扱って構わないのでしょうか
 年少者の労働時間は労働基準法でさまざまに規制されています。ここでは、児童でない年少者の規制内容を項目ごとに説明しましょう。

●労働時間の原則(第60条・第61条)
 
基本的に1日8時間、1週40時間労働が限度となります。つまり、時間外・休日労働や変形労働時間制の適用は原則できないということです。また、深夜労働も原則禁止されています。

●時間外・休日労働の例外
①1週40時間で、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮する場合、他の日の労働時間を10時間まで延長することができます。
 
このとき、変形の仕方を就業規則や労使協定で事前に規定する必要はありません。ただし、計画は明示する必要があり、結果的に短縮措置をとるような運用は違法となります。 
 また、「他の日」とは1日に限る趣旨ではなく、たとえば、1週間のうちの2日を9時間労働とすることも可能です。
②労基法33条の非常災害および公務による時間外・休日労働は可能です。

●変形労働時間制の例外
 
1週48時間、1日8時間以内であれば、1ヶ月単位の変形労働時間制と1年単位の変形労働時間制を適用できます。

●深夜労働の例外
①交代制によって使用する満16歳以上の男性であれば可能です。
②非常災害時に労働時間を延長する場合や休日労働をさせる場合には、深夜労働は可能となります。なお、公務による時間外・休日労働の場合には、例外は認められません。
③農林、畜産・水産、保健衛生業に従事する場合、電話交換業務に従事する場合は、深夜労働は可能です。

●休憩時間
 
年少者は、一斉休憩の特例は適用除外となります。
(2013.4.22)

Q.当社は食品製造業で、16歳の年少者を製造ライン業務に就かせたいと考えていますが、法的に差支えないでしょうか
 年少者は、肉体的・精神的に未成熟であり、技術的にも未熟であることが多いため、就業時の安全衛生に関して特別な保護が求められます。労基法第62条では、危険有害業務の就業制限として以下の事項を定めています。

①運転中の機械や動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査や修繕をさせたり、運転中の機械や動力伝導装置にベルトやロープの取り付けや取りはずしをさせたり、動力によるクレーンの運転をさせたりするほか、省令で定める危険業務や重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。
②毒劇薬、毒劇物その他有害な原料や材料または爆発性や引火性の原料・材料を取り扱う業者、著しく塵埃や粉末を飛散し、有害ガスや有害放射線を発散する場所、高温・高圧の場所における業務その他安全、衛生、福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。
③前項に規定する業務の範囲は省令で定める。

 
①の重量物取扱い業務は年少者労働基準規則第7条に、また、①の危険業務と③の有害業務については、同規則第8条・第9条に定められています。製造ライン業務において、これらに該当する業務があれば、就業できないことになります。
 なお、児童についてはこれらに加え、同規則第9条に示された業務も就労不可となります。
(2013.4.22)