その他労働基準関係通達



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   その他労働基準関係通達

  育児介護休業
 平成3年12月20日基発第712号

 育児休業等に関する法律(平成三年法律第七六号。以下「育児休業法」という。)の施行に伴い同法に基づき導入される育児休業制度に係る労働基準法(以下「法」という。)上の取扱いについては下記のとおりであるので、了知されるとともに、その周知に遺憾なきを期されたい。
 
 記
 
1 育児休業法の施行事務
 育児休業法については、婦人局、都道府県婦人少年室が施行を行うものであり、労働基準監督機関においては、育児休業制度に係る労働基準関係法令の施行事務を取り扱うものであること。したがって、育児休業法についての相談等は都道府県婦人少年室が行うものであること。
 
2 平均賃金
 法第一二条に規定する平均賃金の算定期間中に、育児休業法第二条第一項に規定する育児休業以外の育児休業の期間がある場合においては、昭和二四年労働省告示第五号第二条の規定に基づき、平均賃金の算定において、その日数及びその期間中の賃金は、基礎となる期間及び賃金の総額から控除するものとすること。
 なお、昭和四八年二月二八日付け基発第九二号は廃止する。
 
3 子の死亡等による育児休業終了後の労務の提供の開始時期
 子の死亡等により育児休業が終了した労働者の労務の提供の開始時期については、あらかじめ定めることが事業主の努力義務とされているところであり、取り決めるに当たっては、事業主と労働者との合意によることが望まれるが、労働者との合意による取決め等がない日に労働者を休業させる場合には、法第二六条に基づく休業手当の支払いが必要となる場合があるものと解されること。
 また、このような取決め等がない場合の労務の提供の開始時期については、あくまで労使間の話し合いにより解決を図るべきものであること。
 
4 育児休業期間中の賃金等
 育児休業法上育児休業期間中の賃金支払いは義務付けられておらず、労使の任意の話し合いに委ねられていること。
 また、社会保険料の被保険者負担分については、育児休業期間中についても労働者が負担すべきものとされているが、事業主が被保険者負担分を肩代わりする場合には、当該負担分は法第一一条の賃金として取り扱われること(昭和六三年三月一四日付け基発第一五〇号)。したがって、育児休業が終了した後一定年限労働しなければ当該賃金額分を労働者に支払わせるとの取扱いは、法第一六条に抵触するものと解されること。
 事業主が育児休業期間中に社会保険料の被保険者負担分を立替え、復職後に賃金から控除する制度については、著しい高金利が付される等により当該貸付が労働することを条件としていると認められる場合を除いて、一般的には法第一七条に抵触しないと解されるが、法第二四条第一項ただし書後段により労使協定が必要であること。また、一定年限労働すれば、当該債務を免除する旨の取扱いも労働基準関係法上の問題を生じさせないこと。
 
5 解雇
 育児休業法第七条は、労働者が休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由とする解雇を制限したものであり、育児休業期間中の解雇を一般的に制限したものではなく、育児休業期間中の労働者を解雇しようとする場合には法第二〇条に規定する手続が必要であること。
 
6 年次有給休暇
 年次有給休暇は、労働義務のある日についてのみ請求できるものであるから、育児休業申出後には、育児休業期間中の日について年次有給休暇を請求する余地はないこと。また、育児休業申出前に育児休業期間中の日について時季指定や労使協力に基づく計画付与が行われた場合には、当該日には年次有給休暇を取得したものと解され、当該日に係る賃金支払日については、使用者に所要の賃金支払の義務が生じるものであること。
 
7 就業規則
(1) 休暇
 法第八九条第一項第一号において就業規則の記載事項として「休暇」があげられており、この「休暇」の中には、従来から、育児休暇も含まれるものと解してきたところであること。育児休業法による育児休業も、この育児休暇に含まれるものであり、育児休業の対象となる労働者の範囲等の付与要件、育児休業取得に必要な手続、休業期間については、就業規則に記載する必要があること。
 なお、育児休業法においては、育児休業の対象者、申出手続、育児休業期間等が具体的に定められているので、育児休業法の定めるところにより育児休業を与える旨の定めがあれば記載義務は満たしていると解されること。
(2) その他の絶対的必要記載事項
 法第八九条第一項第一号から第三号までに定められている事項は、いかなる場合でも必ず記載しなければならない絶対的記載事項であり、育児休業中の労働者、育児休業後の労働者、育児休業をしないで就労する労働者のいずれについても、これらの事項が就業規則上明確になっていることが必要であるが、これらの事項が育児休業期間等であると否とを問わず同様である場合には、殊更別記する必要はないこと。具体的には、例えば、育児休業期間中に賃金が支払われないのであればその旨、育児休業期間中に通常の就労時と異なる賃金が支払われるのであればその決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期について記載しなければならないこと。また、例えば、一歳に満たない子を養育する労働者で育児休業をしないものについての時差出勤の制度については、その始業及び終業の時刻について記載しなければならないこと。
(3) 相対的必要記載事項
 育児休業期間中の通信教育制度等の教育訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項、育児休業後の臨時の賃金等について定めをする場合においては、これに関する事項、その他育児休業中の労働者、育児休業をしないで就労する労働者等について法第八九条第一項第三号の二から第一〇号までに定められている事項について定めをする場合には、それらに関する事項を記載しなければならないこと。ただし、当該定めが育児休業期間等であると否とを問わず同様である場合には、殊更別記する必要はないこと。
(4) 育児休業に関する規則
 育児休業に関する事項については、就業規則の本則において大綱、要旨を規定するとともに、具体的な委任規定を設け育児休業に関する規則を例えば育児休業規程として一括して定めることは差し支えないものであり(昭和二三年一〇月三〇日付け基発第一五七五号、昭和六三年三月一四日付け基発第一五〇号)、また、育児休業に関する必要記載事項と必要記載事項以外の事項の双方が一括して定められ労働者に周知されることが望ましいとの観点から、事業主が講ずべき措置に関する指針(平成三年一〇月一五日付け労働省告示第七三号。別添。)1(2)においても、その旨定められているものであること。
  

  派遣労働者
 平成21年3月31日基発第0331010号

 派遣労働者の労働条件及び安全衛生の確保については、これまでも派遣元事業主及び派遣先事業主の双方に対して、その責任区分に対応した労働基準法(以下「労基法」という。)、労働安全衛生法(以下「安衛法」という。)等の遵守徹底を図ってきたところであるが、依然として法定労働条件の履行確保上の問題がみられるほか、派遣労働者の数が増加する中で派遣労働者に係る労働災害が近年増加している。
 また、今般、「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」(平成11年労働省告示第137号。以下「派遣元指針」という。)及び「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(平成11年労働省告示第138号。以下「派遣先指針」という。)が改正されたところである。
 このため、派遣労働の実態並びに改正後の派遣元指針及び派遣先指針を踏まえ、派遣労働者の労働条件及び安全衛生の確保に当たり派遣元事業主及び派遣先事業主が各自、又は両者が連携して実施すべき重点事項等について、下記のとおり取りまとめたので、職業安定行政の需給調整部署とも連携を図りつつ、監督指導、個別指導、集団指導等によりこの内容を徹底し、派遣労働者の労働条件及び安全衛生の確保に遺憾なきを期されたい。
 
 記
 
第1 派遣労働者の労働条件及び安全衛生の確保に係る基本的な考え方
 派遣労働者にも当然に労基法、安衛法等の労働基準関係法令は適用され、原則として派遣労働者と労働契約関係にある派遣元事業主がその責任を負うものであるが、派遣労働者の危険又は健康障害を防止するための措置など労働者派遣の実態から派遣元事業主に責任を問いえない事項、派遣労働者の保護の実効を期する上から派遣先事業主に責任を負わせることが適切な事項については、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)第3章第4節に定める労基法等の適用に関する特例等(以下「特例」という。)によって派遣先事業主に責任を負わせることとし、派遣元事業主と派遣先事業主との間で適切に責任を区分して派遣労働者の保護を図っているところである。
 しかしながら、この特例についていまだ十分に理解がなされていないことや派遣元事業主と派遣先事業主との連携が十分に図られていないことなどから、労働時間管理が適正になされず割増賃金が支払われない、機械等の安全措置が講じられていない等の問題がみられるほか、特例が適用されない事項についても、賃金の不適正な控除、就業規則の未作成、安全衛生管理体制の未整備等の問題が認められる。
 派遣労働者の労働条件及び安全衛生の確保に当たっては、派遣元事業主及び派遣先事業主が、自らの責任を十分に理解しそれぞれの義務を果たすとともに、労働者派遣契約の相手方の責任についても互いに理解し、その上で適切な連携を図ることが重要となるものである。特に、派遣労働者の安全衛生を確保するためには、派遣先事業主が派遣労働者の危険又は健康障害を防止するための措置を現場の状況に即し適切に講ずることが重要である。
 このため、派遣労働の実態等を踏まえ、派遣労働者の労働条件及び安全衛生の確保に当たり派遣元事業主及び派遣先事業主が各自、又は両者が連携して実施すべき重点事項等について取りまとめたものであり、労働基準行政としては、派遣元事業主又は派遣先事業主に対し、これらの事項を中心にその責任に応じて適切に派遣労働者の労働条件及び安全衛生の確保を図るべきことを指導することとするものであること。
 
第2 派遣労働者の労働条件の確保に係る重点事項
1 派遣元の使用者が実施すべき重点事項
 派遣元の使用者は、自らが労働契約を締結しており、労基法等の適用についても原則として派遣元の使用者が責任を負うことを踏まえ、労働条件の枠組みを確立し、派遣労働者の労働条件の確保を図る必要があること。
(1) 契約期間(労基法第14条、労働契約法第17条第2項)
 遣元の使用者は、労基法第14条に基づく「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15年厚生労働省告示第357号。以下「雇止めに関する基準」という。)に基づき、有期労働契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している派遣労働者との有期労働契約を更新しようとする場合には、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならないこと。
 また、有期労働契約により派遣労働者を使用する場合には、労働契約法第17条第2項により、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならないこと。
(2) 労働条件の明示(労基法第15条)
 派遣元の使用者は、派遣労働者と労働契約を締結するに際し、賃金、労働時間、労働契約の期間に関する事項(労働契約の期間の定めの有無及び定めがある場合にはその期間)を始めとした労働条件の明示を確実に行うこと。
 なお、この労働条件の明示は、労働者派遣法第34条第1項に定める就業条件の明示と併せ行って差し支えないが、それぞれの明示すべき内容は異なる部分もあることから、就業条件の明示のみをもって労働条件の明示に代えることはできないこと。
 また、派遣労働者と有期労働契約を締結する場合には、雇止めに関する基準に基づく更新の有無等の明示も行うこと。
(3) 賃金の支払
 ア 賃金の控除(労基法第24条)
 法令に別段の定めがある場合を除き、賃金の一部を控除して支払うためには、労使協定を締結する必要があること。
 ただし、この労使協定を締結していたとしても、そもそも使途が不明であるもの、一部の使途は明らかであるが控除額の合計が実際に必要な費用に比して均衡を欠くもの等、事理明白でないものについては、これを控除した場合には労基法第24条違反となること。
 イ 最低賃金(最低賃金法第13条、第18条)
遣労働者の最低賃金については、派遣先の事業の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金が適用されること。
 また、派遣先の事業又は派遣先の事業の同種労働者の職業について特定最低賃金が適用されている場合には、派遣労働者についても当該特定最低賃金が適用されるものであること。
(4) 休業手当(労基法第26条)
 派遣元の使用者が、使用者の責に帰すべき事由により派遣労働者を休業させる場合には、休業手当を支払わなければならないこと。ここで、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するか否かの判断は、派遣元の使用者について行うものであること。
 労働者派遣契約の中途解除(労働者派遣契約の契約期間が満了する前に行われる労働者派遣契約の解除をいう。以下同じ。)により派遣労働者を休業させた場合には、一般に使用者の責に帰すべき事由による休業に該当し、派遣労働者に対し、休業手当を支払わなければならないこと。
 また、派遣元指針において、
 ① 派遣元事業主は、派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由により行われた労働者派遣契約の中途解除に当たって、新たな就業機会の確保ができない場合は、まず休業等を行い、当該派遣労働者の雇用の維持を図るようにするとともに、休業手当の支払等の労基法等に基づく責任を果たすこと
 ② 派遣元事業主は、派遣先との労働者派遣契約の締結に当たって、派遣先の責に帰すべき事由による労働者派遣契約の中途解除に伴い、少なくとも、派遣元事業主が派遣労働者を休業させること等を余儀なくされることにより生ずる損害である休業手当等に相当する額以上の額について、損害の賠償を派遣先が行うよう定めることを、派遣先に対して求めること
 とされていることに留意すること。
 なお、派遣先指針において、労働者派遣契約の解除に伴い派遣元事業主が派遣労働者を休業させること等を余儀なくされたことにより生じた派遣元事業主の損害の賠償を派遣先が行わなければならない旨定められていることにも、派遣元の使用者は留意すること。
(5) 労働時間(労基法第32条、第36条等)
 派遣中の労働者については、派遣先の事業のみを当該労働者を使用する事業とみなして、労基法上の労働時間、休日及び休憩に係る規定を適用するとされているが、派遣元の使用者においても、次に掲げる事項に留意すること。
 ア 複数の派遣先事業場で働く派遣労働者に係る法定労働時間の遵守
 派遣元の使用者は、複数の派遣先の事業場において就労する派遣労働者について、派遣先の使用者が労働者派遣契約に従って派遣労働者を労働させたときに労働時間に関する法令に抵触することがないよう、累計労働時間を把握、管理すること。
 イ 派遣就業時間以外の労働時間
 派遣中の労働者が派遣就業をした時間(以下「派遣就業時間」という。)以外の点呼等の時間、移動時間、研修時間等の時間については、派遣労働者が派遣元の使用者の指揮監督下にあるものと認められる場合には、派遣元の使用者が、これを労働時間として適正に把握、管理すること。
 ウ 時間外労働・休日労働協定の締結、届出
 派遣先の使用者が派遣労働者に時間外労働又は休日労働(以下「時間外労働等」という。)を行わせる場合には、派遣元の事業場において時間外労働・休日労働協定(以下「36協定」という。)を締結し、届け出なければならないこと。
 また、派遣元の使用者は、派遣先の使用者が36協定の範囲を超えて時間外労働等を行わせることがないよう、情報提供等の必要な措置を講ずること。
 さらに、協定当事者としての労働者の過半数を代表する者の選出は、労働基準法施行規則第6条の2の規定を踏まえ、適正に行われる必要があること。
(6) 割増賃金(労基法第37条、3(2)参照)
 派遣元の使用者は、派遣就業時間を派遣先の使用者や派遣労働者から確認する体制を整え、当該労働時間数に自らの指揮監督下にあった労働時間数を加えた時間数に応じ、適正に割増賃金等を支払うこと。
(7) 年次有給休暇(労基法第39条、3(3)参照)
 派遣元の使用者は、派遣労働者に対して法定の年次有給休暇を与えなければならないこと。
 また、時季変更権は、派遣元の使用者が自らの事業の正常な運営を妨げる場合に行使できるものであることから、派遣先の事業の運営に係る事情は直ちにはその行使の理由とはならないものであること。
 さらに、派遣元の使用者は、代替労働者を派遣する、派遣先の使用者と業務量の調整を行う等により、派遣先の事情によって派遣労働者の年次有給休暇の取得が抑制されることのないようにすること。
(8) 就業規則等の作成及び周知(労基法第89条、第106条)
 派遣労働者とそれ以外の労働者を合わせて常時10人以上の労働者を使用する派遣元の使用者は、派遣労働者にも適用される就業規則を作成しなければならないこと。
 また、派遣元の使用者は、就業規則のほか賃金控除協定等の労使協定の内容等について、労働基準法施行規則第52条の2に定める方法により労働者に周知する必要があるが、同規則に定める掲示若しくは備付け又は磁気ディスク等への記録及びその内容を確認できる機器の設置の方法については、派遣中の労働者に関しては原則としてこれを派遣先の各作業場において行うものであり、これが行えない場合には、書面の交付の方法によって周知すること。
 なお、新たに雇い入れる者については、労働契約締結時の労働条件の書面による明示と併せて周知することが適当であること。
(9) 解雇及び雇止め
 ア 解雇(労働契約法第17条第1項、労基法第20条等)
 有期労働契約により派遣労働者を使用する場合には、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間中に解雇することができないこと。派遣元の使用者は、派遣先との間の労働者派遣契約が中途解除された場合でも、そのことが直ちに「やむを得ない事由」に該当するものではないことに留意すること。その際、派遣先指針において、上記(4)なお書きのとおり、休業手当の支払等、労働者派遣契約の解除に伴い生じた派遣元事業主の損害の賠償を派遣先が行わなければならない旨定められていることをも踏まえ、派遣元の使用者は契約期間中の解雇について「やむを得ない事由」があるかを検討すべきであること。
 また、派遣元の使用者は、派遣労働者をやむを得ず解雇する場合には、30日前の解雇予告又は解雇予告手当の支払等の手続を適正に行わなければならないこと。
 なお、派遣元指針において、
 ① 派遣元事業主は、派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約の中途解除が行われた場合には、当該労働者派遣契約に係る派遣先と連携して、当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の確保を図り、これができない場合は、まず休業等を行い、派遣労働者の雇用の維持を図るようにすること
 ② やむを得ない事由によりこれができない場合において、当該派遣労働者を解雇しようとするときであっても、労働契約法の規定を遵守することはもとより、解雇予告、解雇予告手当の支払等労基法等に基づく責任を果たすこと
 とされていることに留意すること。
 イ 雇止め
 派遣元の使用者は、雇止めに関する基準に基づき、派遣労働者との間の有期労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続して勤務している労働者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。)を更新しないこととしようとする場合においては、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに雇止めの予告を行うこと。
 また、裁判例によれば、反復更新の実態等の状況に照らし、解雇に関する法理の類推適用等により雇止めが認められない場合があることに留意すること。
 
2 派遣先の使用者が実施すべき重点事項
 派遣先の使用者は、自らが派遣労働者に指揮命令を行うという派遣労働の実態から、労基法上の労働時間、休日、休憩等に係る責任を派遣先の使用者が負うことを踏まえ、派遣労働者の労働条件の確保を図る必要があること。
(1) 労働時間の把握(労基法第32条等)
 派遣中の労働者については、派遣先の事業のみを当該労働者を使用する事業とみなして労働時間に係る規定を適用していることから、派遣先の使用者は、派遣中の労働者に係る労働時間を適正に把握すること。
 なお、労働時間の把握に当たっては、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平成13年4月6日付け基発第339号)に留意すること。
(2) 時間外労働・休日労働(労基法第32条、第36条等、3(2)参照)
 派遣先の使用者が派遣労働者に時間外労働等を行わせる場合には、派遣元の事業場において締結され、届け出られた36協定の範囲内でなければならず、これを超えて時間外労働等を行わせた場合には、派遣先の使用者が労基法第32条違反となること。
 このため、派遣先の使用者は、派遣元の事業場において締結された36協定の内容等を把握し、時間外労働等についてはこれを踏まえて行わせなければならないこと。
 
3 派遣元の使用者と派遣先の使用者との連携
 派遣元の使用者及び派遣先の使用者は、それぞれの責任区分に応じた労働条件の確保を図る必要があり、これを円滑に実施するためには、両者の適切な連絡調整等が重要であること。
(1) 適正な労働者派遣契約の締結
 派遣元事業主及び派遣先事業主は、労働者派遣契約を締結するに当たり、当該労働者派遣契約に従って派遣労働者を労働させた場合に労働基準関係法令に抵触することがないよう、労働者派遣契約の内容について相互に十分に確認すること。
 また、派遣元指針及び派遣先指針において、労働者派遣契約の締結に当たって、休業手当の支払等、労働者派遣契約の中途解除に伴い生じた派遣元事業主の損害の賠償を派遣先が行うよう定めることとされていることにも留意すること。
 なお、労働者派遣法第44条第3項等において、労働者派遣契約に従って派遣労働者を労働させたときに派遣先が労基法第32条等に抵触することになる場合には、派遣元事業主に対して労働者派遣を禁止しており、これに違反する場合には罰則の特例措置も定められていること。
(2) 労働時間に係る連絡体制の確立
 派遣先の使用者が派遣元の事業場で締結される36協定の内容等派遣労働者の労働時間の枠組みを適切に把握し、また、派遣元の使用者が派遣労働者の実際の労働時間を適切に把握できるよう、派遣元の使用者及び派遣先の使用者は、労働時間に係る連絡体制を確立すること。
 具体的には、
 ① 労働時間の枠組みについて、派遣先の使用者は、派遣元の事業場において締結された36協定の内容等について派遣元の使用者に情報提供を求め、派遣元の使用者は当該情報提供を行う
 ② 実際の労働時間について、派遣元の使用者は、割増賃金等の計算に当たり、派遣先における実際の労働時間について派遣先の使用者に情報提供を求め、派遣先の使用者は適正に把握した労働時間を正確に通知する
 等の体制を整えること。
 その際、派遣先指針において、派遣先事業主は派遣元事業主との労働時間に係る連絡体制を確立することとされていること、さらに、②について、労働者派遣法第42条第1項及び第3項において、派遣先事業主は派遣先管理台帳に派遣就業をした日ごとの始業・終業時刻及び休憩時間を記載し、これを派遣元事業主に通知しなければならないとされていることにも留意すること。
(3) 年次有給休暇の取得に係る協力体制の整備等
 派遣元の使用者及び派遣先の使用者は、派遣労働者が年次有給休暇の取得を請求した場合の手続等をあらかじめ定めるとともに、派遣元の使用者が派遣労働者に年次有給休暇を与えるため、代替労働者の派遣、派遣先における業務量の調整等の対応を取ることができる体制を確立することが望ましいこと。
 なお、派遣先の使用者は当該調整等に協力し、派遣元の使用者が派遣中の労働者に対して適切に年次有給休暇を与えることができるよう配慮することが望ましいこと。
 
第3 派遣労働者の安全衛生の確保に係る重点事項
1 派遣元事業者が実施すべき重点事項
 派遣元事業者は、雇入れ時の安全衛生教育、一般健康診断の実施など安衛法上の措置を講ずる必要があること。
(1) 派遣労働者を含めた安全衛生管理体制の確立(安衛法第10条、第12条、第13条、第18条等)
 派遣労働者を含めて常時使用する労働者数を算出し、それにより算定した事業場の規模等に応じて、①総括安全衛生管理者、衛生管理者、産業医等の選任等、②衛生委員会の設置等を行うこと。
(2) 安全衛生教育の実施等(安衛法第59条、3(1)参照)
 ア 雇入れ時の安全衛生教育の適切な実施
 派遣労働者を雇い入れたときは、当該派遣労働者に対し、遅滞なく雇入れ時の安全衛生教育を適切に行うこと。
 イ 作業内容変更時の安全衛生教育の適切な実施
 派遣労働者の派遣先事業場を変更するなどその作業内容を変更したときは、当該派遣労働者に対し、遅滞なく作業内容変更時の安全衛生教育を適切に行うこと。
 ウ 安全衛生教育の内容等
 雇入れ時及び作業内容変更時の安全衛生教育は、当該業務に関して、作業内容や取り扱う機械等、原材料等の取扱い方法、それらの危険性又は有害性等に応じて、派遣労働者の安全又は衛生を確保するために必要な内容及び時間をもって行うこと。
 そのため、これらの情報について派遣先事業者から入手するとともに、教育カリキュラムの作成支援、講師の紹介や派遣、教育用テキストの提供、教育用の施設や機材の貸与など派遣先事業者から必要な協力を得ること。
 エ 派遣先事業者に安全衛生教育の実施を委託した場合の対応
 派遣先事業者に対し、雇入れ時等の安全衛生教育の実施を委託した場合は、その実施状況について確認すること。
(3) 就業制限(安衛法第61条、3(2)参照)
 派遣労働者が就業制限業務に就くことが予定されているときには、当該業務に係る有資格者を派遣すること。
(4) 一般健康診断(安衛法第66条第1項に基づく健康診断をいう。以下同じ。)の実施及びその結果に基づく事後措置(3(3)参照)
 常時使用する派遣労働者に対し、一般健康診断を実施し、その結果に基づく事後措置を講ずること。
(5) 医師による面接指導等(安衛法第66条の8、第66条の9)
 派遣労働者の時間外・休日労働時間に応じて、時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える派遣労働者であって申出を行ったものに係る医師による面接指導等を適切に実施すること。
(6) 労働者死傷病報告の提出等(派遣労働者が労働災害に被災した場合)(安衛法第100条)
 派遣労働者が労働災害に被災した場合、派遣先事業者に対し、所轄労働基準監督署に提出した労働者死傷病報告の写しの送付を求め、その内容を踏まえて労働者死傷病報告を作成し、派遣元の事業場を所轄する労働基準監督署に提出すること。
 
2 派遣先事業者が実施すべき重点事項
 派遣労働者の安全衛生を確保するためには、派遣先事業者が、派遣労働者は一般的に経験年数が短いことに配慮し、派遣労働者の危険又は健康障害を防止するための措置等を現場の状況に即し適切に講ずることが重要であること。
(1) 派遣労働者を含めた安全衛生管理体制の確立(安衛法第10条、第11条、第12条、第13条、第17条、第18条等)
派遣労働者を含めて常時使用する労働者数を算出し、それにより算定した事業場の規模等に応じて、
 ① 総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医等を選任し、派遣労働者の安全衛生に関する事項も含め、必要な職務を行わせること
 ② 安全衛生委員会等を設置し、派遣労働者の安全又は衛生に関する事項も含め、必要な調査審議を行うこと。
(2) 危険又は健康障害を防止するための措置の適切な実施(安衛法第20条、第22条等)
 機械等の安全措置など派遣労働者の危険又は健康障害を防止するための措置を現場の状況に即し適切に実施すること。
(3) 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づく措置の実施(安衛法第28条の2)
 派遣労働者が従事する作業について、危険性又は有害性等の調査を実施し、その結果に基づき、機械の本質安全化などリスク低減措置を講ずること。
(4) 安全衛生教育の実施等(安衛法第59条)
 ア 雇入れ時等の安全衛生教育の実施状況の確認
 派遣労働者を受け入れたときは、派遣元事業者による雇入れ時等の安全衛生教育について、当該派遣労働者が従事する業務に関する安全又は衛生を確保するために必要な内容の教育が実施されているかなど、その実施状況を派遣元事業者に確認すること。
 イ 作業内容変更時の安全衛生教育の適切な実施
 派遣労働者の作業内容を変更したときは、当該派遣労働者に対し、作業内容変更時の安全衛生教育を行うこと。また、当該教育は、派遣労働者が従事する業務に関する安全又は衛生を確保するために必要な内容及び時間をもって行うこと。
 ウ 特別教育の適切な実施
 特別教育が必要な一定の危険又は有害な業務に派遣労働者を従事させるときは、当該派遣労働者が、当該業務に関し、①他の事業場において既に特別教育を受けた者か、②十分な知識及び技能を有している者かを確認し、①又は②に該当しない場合は、当該派遣労働者に対し、特別教育を適切に行うこと。
 エ 派遣先事業場における禁止事項の周知
 立入禁止場所等の派遣先事業場において禁止されている事項について、派遣労働者に対し、周知を行うこと。
(5) 安全な作業の確保
 ア 就業制限業務に係る資格の確認(安衛法第61条、3(2)参照)
 就業制限業務に派遣労働者を従事させるときは、当該派遣労働者が資格を有していることを確認すること。
 イ 安全な作業マニュアル等の作成
 派遣労働者が従事する作業について安全な作業マニュアルや手順書(以下「マニュアル等」という。)を作成することが望ましいこと。
 ウ 派遣労働者の作業状況の確認
 派遣労働者がマニュアル等により適切な作業を行えるよう、適時作業状況を確認する者を定め、その者に必要な指揮を行わせることが望ましいこと。
 エ 標識、警告表示の掲示等
 立入禁止場所、危害を生ずるおそれのある箇所等には、わかりやすい標識や警告表示の掲示を行うこと。
(6) 特殊健康診断(安衛法第66条第2項及び第3項に基づく健康診断をいう。以下同じ。)の実施及びその結果に基づく事後措置
 一定の有害業務に常時従事する派遣労働者に対しては、当該業務に係る特殊健康診断を実施し、その結果に基づく事後措置を講ずること。
(7) 派遣労働者が労働災害に被災した場合の対応
 ア 労働災害の発生原因の調査及び再発防止対策
 派遣労働者が労働災害に被災した場合は、その発生原因を調査し、再発防止対策を講ずること。
 イ 労働者死傷病報告の提出等(安衛法第100条)
 派遣労働者が労働災害に被災した場合は、労働者死傷病報告を作成し、派遣先の事業場を所轄する労働基準監督署に提出すること。また、当該労働者死傷病報告の写しを派遣元事業者に送付すること。
 
3 派遣元事業者と派遣先事業者との連携
 派遣元事業者及び派遣先事業者は、それぞれの責任区分に応じた安衛法上の措置を講ずる必要があり、これを円滑に実施するためには、両者の適切な連絡調整等が重要であること。
(1) 安全衛生教育に関する協力や配慮
 ア 派遣元事業者に対する情報提供等
 派遣元事業者が派遣労働者に対する雇入れ時等の安全衛生教育を適切に行えるよう、①派遣元事業者は派遣先事業場から当該派遣労働者が従事する業務に係る情報について事前に提供を受けること、②派遣先事業者は当該情報を派遣元事業者に対し積極的に提供すること。
 また、派遣元事業者から教育カリキュラムの作成支援、講師の紹介や派遣、教育用テキストの提供、教育用の施設や機材の貸与等の依頼があった場合には、派遣先事業者は可能な限りこれに応じるよう努めること。
 イ 雇入れ時等の安全衛生教育の委託の申入れへの対応
 派遣元事業者から雇入れ時等の安全衛生教育の委託の申入れがあった場合には、派遣先事業者は可能な限りこれに応じるよう努めること。また、派遣先事業者は、当該教育の実施を受託した場合には、その実施結果を派遣元事業者に報告すること。
(2) 危険有害業務に係る適正な労働者派遣
 派遣元事業者及び派遣先事業者は、派遣労働者が就くことが予定されている危険有害業務及び派遣労働者の資格等の有無を確認し、必要な資格等がない者がこれらに就くことがないよう、十分連絡調整を図ること。
 なお、労働者派遣法第45条第6項等において、労働者派遣契約に従って派遣労働者を労働させたときに派遣先事業者が安衛法第61条等に抵触することになる場合には、派遣元事業者に対して労働者派遣を禁止しており、これに違反する場合には罰則の特例措置も定められていること。
(3) 一般健康診断の実施に関する派遣先事業者の配慮
 派遣労働者の就業の場所は派遣先事業場であることから、派遣元事業者の依頼があった場合には、派遣先事業者は、当該事業場の労働者に対する一般健康診断を実施する際に併せて派遣労働者が受診できるよう配慮することが望ましいこと。ただし、派遣元事業者は、①派遣労働者に係る一般健康診断の実施義務を負うこと、②健康診断結果等の労働者個人の健康情報について責任を持って取り扱う必要があること、③当該健康診断の結果に基づく事後措置を講ずることに留意すること。
(4) 派遣元事業場における再発防止対策に関する協力
 派遣労働者が労働災害に被災した場合、派遣元事業者は、派遣先事業場から当該労働災害の原因や対策について情報提供を受け、雇入れ時等の安全衛生教育に活用するとともに、同種の作業に従事する派遣労働者に当該情報を提供することが望ましいこと。
(5) 派遣元事業者と派遣先事業者との連絡調整
 派遣元事業者及び派遣先事業者は、定期的に会合を開催するなどし、健康診断、安全衛生教育、労働者派遣契約で定めた安全衛生に関する事項の実施状況、派遣労働者が被災した労働災害の内容・対応などについて連絡調整を行うこと。
 
第4 外国人の派遣労働者に係る事項
 労働関係法令は、労働者の国籍にかかわらず当然に適用されるものであり、また、国籍を理由とする差別的取扱いについては、派遣元事業主だけでなく、派遣先事業主についても禁止されていること。
 また、労働条件の明示や安全衛生教育の実施、労働災害防止に関する標識、掲示等については、外国人労働者がその内容を理解できる方法により行う等、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(平成19年厚生労働省告示第276号)に基づく必要な措置を講ずること。
 
第5 関係通達の改廃 (省略)
  

  短時間労働者
 平成20年2月15日基発第0215004号
 
 標記については、労働基準関係法令の履行確保及び短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号)第8条に基づく「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針」(平成5年労働省告示第118号)の周知等によりその推進に努めてきたところであるが、今般、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律(平成19年法律第72号)による改正後の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「パートタイム労働法」という。)及び短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成19年厚生労働省令第121号)による改正後の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則(以下「パートタイム労働法施行規則」という。)において、短時間労働者の適正な労働条件の確保に関する措置として、労働条件に関する文書の交付等の規定が整備され、それに伴い、上記指針が再整理されたところである。
 ついては、今後の労働基準行政における短時間労働者に係る労働条件の確保・改善については、下記によることとするので、引き続き、その的確な推進に遺憾なきを期されたい。
 なお、平成5年12月1日付け基発第664号「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行に伴う短時間労働者対策の推進について」は、本通達をもって廃止する。
 
 記
 
1 基本的な考え方
 短時間労働者については、依然として、労働条件の明示、年次有給休暇の付与、就業規則の作成、最低賃金の支払等の法定労働条件の確保に問題がみられるところである。
 また、短時間労働者の多くは有期労働契約により雇用されていることから、有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準を定める告示(平成15年厚生労働省告示第357号。以下「雇止めに関する基準」という。)に基づく措置についても確実に履行されることが必要である。
 さらに、平成20年2月1日付け地発第0201003号・基発第0201001号・職発第0201002号・雇児発第0201002号「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行を踏まえた都道府県労働局における業務の推進について」(以下「業務推進通達」という。)において指示したとおり、パートタイム労働法第6条第1項において文書の交付等による労働条件の明示が義務化されたこと等への的確な対応を図る必要がある。
 これらを踏まえ、労働基準行政においては、短時間労働者に係る法定労働条件の履行確保に加え、パートタイム労働法に定める労働条件の明示等の措置の普及を図ることにより、短時間労働者に係る労働条件の確保・改善を積極的に推進するものである。
 
2 短時間労働者に係る労働条件の確保・改善のために実施すべき重点事項
 労働基準関係法令、雇止めに関する基準、パートタイム労働法等に基づく使用者が講ずべき事項のうち、次に掲げる事項を重点として、短時間労働者に係る労働条件の確保・改善を図ることとする。
(1) 労働条件の明示
 ア 労働基準法に基づく労働条件の明示の義務
 労働基準法(昭和22年法律第49号)第15条第1項の規定に基づき、短時間労働者に係る労働契約の締結に際し、労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号。以下「施行規則」という。)第5条第1項で定める労働条件に関する事項を明示しなければならないこと。
 また、施行規則第5条第2項で定める賃金及び労働時間に関する事項等については、書面の交付により明示しなければならないこと。
 イ パートタイム労働法に基づく文書交付等による明示の義務
 アにおいて書面の交付により明示しなければならない事項に加え、パートタイム労働法第6条第1項の規定に基づき、パートタイム労働法施行規則第2条第1項に定める次の事項については、文書の交付等により明示しなればならないこと。
 (ア) 昇給の有無
 (イ) 退職手当の有無
 (ウ) 賞与の有無
 ウ パートタイム労働法に基づく文書交付等による明示の努力義務
 施行規則第5条第1項で定める労働条件に関する事項のうち、アにおいて書面の交付により明示しなければならない事項及びイの事項以外の事項についても、パートタイム労働法第6条第2項の規定に基づき、文書の交付等により明示するよう努めること。
(2) 就業規則の作成
 ア 労働基準法に基づく就業規則の作成及び意見聴取の義務
 短時間労働者を含め常時10人以上の労働者を使用する場合は、労働基準法第89条の規定に基づき、短時間労働者にも適用される就業規則を作成しなければならないこと。
 この作成又は変更に当たっては、同法第90条の規定に基づき、労働者の過半数で組織される労働組合がある場合はその労働組合、労働者の過半数で組織される労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならないこと。この場合、労働者の過半数の算定根拠には、短時間労働者が含まれていることが必要であること。
 イ パートタイム労働法に基づく意見聴取の努力義務
 短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、パートタイム労働法第7条の規定に基づき、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては短時間労働者の過半数を代表する者の意見を聴くように努めること。
 ウ ア及びイにおける過半数を代表する者(以下「過半数代表者」という。)の選出に当たっては、次のいずれの要件をも満たすものとすること。
 (ア) 労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
 (イ) 就業規則の作成又は変更の際に意見を聴取される者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であり、使用者の意向によって選出された者ではないこと。
 なお、過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として、不利益な取扱いをしないようにしなければならないこと。
(3) 賃金の支払
 短時間労働者に対して、最低賃金法(昭和34年法律第137号)に基づく最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないこと。
 また、短時間労働者に対して、所定労働時間を超えて労働させた場合には、その超えた時間に対する所定の賃金を支払わなければならず、法定労働時間を超えて労働させた場合や法定休日及び深夜に労働させた場合には、労働基準法第37条で定める割増賃金を支払わなければならないこと。
(4) 年次有給休暇の付与
 短時間労働者に対して、労働基準法第39条の規定に基づき、年次有給休暇を付与しなければならないこと。
(5) 有期労働契約の締結等
 短時間労働者のうち有期労働契約を締結するものについては、雇止めに関する基準に定めるところにより、次に掲げる措置を講ずること。
 ア 契約締結時の明示事項等
 (ア) 有期労働契約の締結に際し、当該契約の期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を明示しなければならないこと。
 (イ) (ア)の場合において、当該契約を更新する場合がある旨明示したときは、当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければならないこと。
 (ウ) 有期労働契約の締結後に(ア)又は(イ)に規定する事項に関して変更する場合には、速やかにその内容を明示しなければならないこと。
 イ 雇止めの予告
 有期労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものであって、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。ウの(イ)において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならないこと。
 ウ 雇止めの理由の明示
 (ア) イの場合において、短時間労働者が契約を更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならないこと。
 (イ) 有期労働契約が更新されなかった場合において、短時間労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならないこと。
 エ 契約期間についての配慮
 有期労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している短時間労働者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該短時間労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めること。
(6) 解雇の予告
 短時間労働者を解雇しようとする場合においては、労働基準法第20条の規定に基づき、少なくとも30日前にその予告を行わなければならないこと。30日前に予告をしない場合、30日分以上の平均賃金を支払わなければならないこと。
(7) 退職時の証明
 短時間労働者が退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合は、労働基準法第22条の規定に基づき、遅滞なくこれを交付しなければならないこと。
(8) 健康診断の実施
 短時間労働者に対し、次に掲げる労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第66条の規定に基づく健康診断その他必要な健康診断を実施しなければならないこと。
 ア 常時使用する短時間労働者に対し、雇入れの際に行う健康診断及び1年以内ごとに1回、定期に行う健康診断
 イ 深夜業を含む業務等(労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第45条において引用する同規則第13条第1項第2号に掲げる業務をいう。以下同じ。)に常時従事する短時間労働者に対し、当該業務への配置替えの際に行う健康診断及び6月以内ごとに1回、定期に行う健康診断
 ウ 一定の有害な業務に常時従事する短時間労働者に対し、雇入れ又は当該業務に配置替えの際及びその後定期に行う特別の項目についての健康診断
 この場合において、「常時使用する短時間労働者」とは、次の①及び②のいずれの要件をも満たす者であること。
 ① 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年(深夜業を含む業務等に従事する短時間労働者にあっては6月。以下この項において同じ。)以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。
 ② その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
 なお、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3未満である短時間労働者であっても上記の①の要件に該当し、1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である者に対しても実施することが望ましいこと。
(9) 母性保護措置等
 短時間労働者である妊娠中の女性及び出産後1年を経過しない女性並びにその他の女性労働者に対し、労働基準法の規定に基づく母性保護措置等を講じなければならないこと。
 
3 具体的な対応
(1) 窓口相談時の対応
 短時間労働者から労働条件に係る相談がなされた場合には、パンフレット等を活用し、上記2の重点事項等について十分な説明を行うとともに、労働基準関係法令違反が疑われる場合には所要の対応を行うこと。
 また、パートタイム労働法第6条及び第7条に係る相談への対応については、業務推進通達記の6の(3)によること。
 なお、短時間労働者から、労働契約法(平成19年法律第128号)第4条第2項及び第17条等をはじめとして、同法に係る相談がなされた場合には、平成20年2月4日付け地発第0204017号・基発第0204004号「労働契約法の周知等について」記の3の(1)のイの(エ)に基づき的確な対応を図ること。
(2) 監督指導時の対応
 監督指導時において短時間労働者の就労が認められた場合には、上記2の重点事項はもとより労働基準関係法令に係る履行状況を確認し、法令違反が認められた場合には、所要の措置を講ずること。
 また、パートタイム労働法第6条及び第7条に係る違反が認められた場合の対応については、業務推進通達記の6の(3)によること。
 なお、必要に応じ、パンフレット等により上記2の重点事項の周知啓発に努めること。
(3) 集団指導等における対応
 短時間労働者を使用する事業場については、パンフレット等を活用し、集団指導等あらゆる機会を通じて、上記2の重点事項の周知啓発に努めること。
(4) 都道府県労働局雇用均等室(以下「雇用均等室」という。)との連携
 パートタイム労働法の周知や同法に関わる相談、同法第6条及び第7条に係る対応については、業務推進通達の記の2、3及び6で示したとおり、雇用均等室との連携を図ること。


  介護労働者
 平成16年8月27日基発第0827001号

 訪問介護事業においては、介護保険法(平成9年法律第123号)の施行以来事業場数が増加する中で、同事業に使用される労働者の多くが通常単独で利用者宅を訪問し介護に従事するため、使用者が労働者を直接に指揮しその勤務状況を把握する機会が限られるなどの勤務実態があること、また、事業開始後間もないため、労働基準法等関係法令に関する理解が必ずしも十分ではない事業場が少なくないことなどから、賃金、労働時間等に係る法定労働条件が適正に確保されていない状況がみられるところである。
 このような状況を踏まえ、今般、訪問介護労働者に係る労働基準法等関係法令の適用について、下記のとおり取りまとめたところである。
 ついては、監督指導時はもとより、関係行政機関と連携・協力の上、別途送付する周知用資料を活用して、関係事業者団体への周知、集団指導の実施等により、この内容を徹底し、訪問介護労働者の法定労働条件の確保に遺憾なきを期されたい。
 
 記
 
1 定義等
(1) 本通達における訪問介護労働者の定義
 本通達における訪問介護労働者とは、訪問介護事業に使用される者であって、介護保険法に定める訪問介護に従事する訪問介護員若しくは介護福祉士(以下「訪問介護員等」という。)又は、老人、障害者等の居宅において、入浴、食事等の介護やその他の日常生活上の世話を行う業務(「日本標準産業分類(平成14年3月改訂)」中の7592「訪問介護事業」参照。)に従事するものをいう。したがって、介護保険法の適用の有無にかかわらないものであること(訪問介護労働者が従事するこれらの業務を以下「訪問介護の業務」という。)。
 この訪問介護の業務に従事する者の中には、委託、委任等の呼称が用いられている場合もあるが、労働者に該当するかどうかについては、使用者の指揮監督等の実態に即し総合的に判断すること。
 なお、介護保険法に基づく訪問介護の業務に従事する訪問介護員等については、一般的には使用者の指揮監督の下にあること等から、労働基準法(以下「法」という。)第9条の労働者に該当するものと考えられること。
(2) 訪問介護労働者の勤務形態
 訪問介護労働者については、①正社員、嘱託社員等の名称にかかわらず、当該事業場で定める所定労働時間を勤務する労働者、②短時間労働者であって、労働日及び労働日における労働時間が定型的・固定的に定まっている労働者のほか、③短時間労働者であって、月、週又は日の所定労働時間が、一定期間ごとに作成される勤務表により、非定型的に特定される労働者(以下「非定型的パートタイムヘルパー」という。)、④短時間労働者であって、急な需要が生じた場合にのみ臨時に雇入れられる労働者など、種々の勤務形態のものがみられる。
 これらの中で、非定型的パートタイムヘルパーは、訪問介護労働者の多数を占めており、利用者からの訪問介護サービスの利用申込みに連動して、月、週又は日の所定労働時間が非定型的に特定されるため、労働条件の明示、労働時間の把握、休業手当の支払、賃金の算定等に関して、労働基準法等関係法令上の問題点が多くみられること。
 
2 訪問介護労働者の法定労働条件の確保上の問題点及びこれに関連する法令の適用
(1) 労働条件の明示
 訪問介護事業においては、訪問介護労働者の雇入れ時に、労働条件の明示がなされないことやその明示内容が不十分であることなどにより、労働条件の内容を巡る問題が生じている場合も認められるところであるが、労働条件の明示に当たっては、以下の事項に特に留意する必要があること。
 ア 労働契約の期間
 非定型的パートタイムヘルパー等については、労働日と次の労働日との間に相当の期間が生じることがあるが、当該期間も労働契約が継続しているのかどうかを明確にするため、労働条件の明示に当たっては、労働契約の期間の定めの有無及び期間の定めのある労働契約の場合はその期間を明確に定めて書面を交付することにより明示する必要があること(法第15条第1項、労働基準法施行規則(以下「規則」という。)第5条第1項第1号、同条第3項)。
 また、期間の定めのある労働契約を締結する場合の、労働契約に係る更新の有無等の明示については、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15年厚生労働省告示第357号)の定めるところによること。
 なお、労働契約を更新する場合においては、その都度改めて労働条件を明示する必要があること。
 イ 就業の場所及び従事すべき業務等
 明示しなければならない労働条件のうち、就業の場所及び従事すべき業務(規則第5条第1項第1の2号)、労働日並びにその始業及び終業の時刻、休憩時間(同項第2号。以下「労働日及びその勤務時間帯」という。)については、これが月ごと等の勤務表により特定される場合には、勤務の種類ごとのこれらに関する考え方を示した上で、当該労働者に適用される就業規則上の関係条項名を網羅的に示し、契約締結時点での勤務表を示すことで足りること。
(2) 労働時間及びその把握
 訪問介護事業においては、非定型的パートタイムヘルパー等が訪問介護の業務に直接従事する時間以外の時間を労働時間としていないものが認められるところであるが、訪問介護労働者の移動時間や業務報告書等の作成時間などについて、以下のアからエにより労働時間に該当する場合には、適正にこれを把握する必要があること(法第32条)。
 ア 移動時間
 移動時間とは、事業場、集合場所、利用者宅の相互間を移動する時間をいい、この移動時間については、使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当するものであること。
 具体的には、使用者の指揮監督の実態により判断するものであり、例えば、訪問介護の業務に従事するため、事業場から利用者宅への移動に要した時間や一の利用者宅から次の利用者宅への移動時間であって、その時間が通常の移動に要する時間程度である場合には労働時間に該当するものと考えられること。
 イ 業務報告書等の作成時間
 業務報告書等を作成する時間については、その作成が介護保険制度や業務規定等により業務上義務付けられているものであって、使用者の指揮監督に基づき、事業場や利用者宅等において作成している場合には、労働時間に該当するものであること。
 ウ 待機時間
 待機時間については、使用者が急な需要等に対応するため事業場等において待機を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当するものであること。
 エ 研修時間
 研修時間については、使用者の明示的な指示に基づいて行われる場合は、労働時間であること。また、研修を受講しないことに対する就業規則上の制裁等の不利益な取扱いがある場合や研修内容と業務との関連性が強く、それに参加しないことにより、本人の業務に具体的に支障が生ずるなど実質的に使用者から出席の強制があると認められる場合などは、たとえ使用者の明示的な指示がなくとも労働時間に該当するものであること。
 (3) 休業手当
 訪問介護事業においては、利用者からの利用申込みの撤回を理由として労働者を休業させた場合に、休業手当を支払っていないものが認められるところであるが、労働日及びその勤務時間帯が、月ごと等の勤務表により訪問介護労働者に示され、特定された後、労働者が労働契約に従って労働の用意をなし、労働の意思を持っているにもかかわらず、使用者が労働日の全部又は一部を休業させ、これが使用者の責めに帰すべき事由によるものである場合には、使用者は休業手当としてその平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならないこと(法第26条)。
 したがって、利用者からの利用申込みの撤回、利用時間帯の変更を理由として労働者を休業させる場合には、例えば、他の利用者宅での勤務の可能性について然るべき検討を十分に行ったかどうか等当該労働者に代替業務を行わせる可能性等を含めて判断し、使用者として行うべき最善の努力を尽くしたと認められない場合には、使用者の責に帰すべき事由があるものとして休業手当の支払が必要となること。
 ただし、利用者からの利用申込みの撤回、利用時間帯の変更の要請に対し、使用者が当該労働者に対し他の利用者宅で勤務させる等代替業務の提供を行った場合、あるいは、就業規則の規定に基づく始業・終業時刻の繰上げ、繰下げによる勤務時間帯の変更や休日の振替による労働日の変更を行い他の利用者宅で勤務させる等必要な業務の提供を行った場合には、休業手当の支払は必要ないこと。
 なお、1日の労働日の一部のみ、使用者の責めに帰すべき事由により休業させた場合についても、現実に就労した時間に対して支払われる賃金が1日分の平均賃金の100分の60に満たないときは、その差額を支払わなければならないこと。
(4) 賃金の算定
 ア 訪問介護事業においては、訪問介護の業務に直接従事する時間以外の労働時間である移動時間等について、賃金支払の対象としているのかどうかが判然としないものが認められるところであるが、賃金はいかなる労働時間についても支払われなければならないものであるので、労働時間に応じた賃金の算定を行う場合は、訪問介護の業務に直接従事する時間のみならず、上記(2)の労働時間を通算した時間数に応じた賃金の算定を行うこと。
 イ 訪問介護の業務に直接従事する時間と、それ以外の業務に従事する時間の賃金水準については、最低賃金額を下回らない範囲で、労使の話合いにより決定されるべきものであること。
 賃金が最低賃金額以上となっているかどうかは、
 ① 時間によって定められた賃金(以下「時間給」という。)の場合は、当該時間給を時間によって定められた最低賃金額(時間額)と、
 ② 日、週、月によって定められた賃金の場合は、その金額を当該期間における所定労働時間数で除した当該時間当たりの金額を時間によって定められた最低賃金額(時間額)と、
 比較することにより判断するものであること(最低賃金法第4条、最低賃金法施行規則第2条)。
 なお、労働者の受ける賃金について、基本給が時間給により、その他職務手当等が月によって定められた賃金により定められているなど、上記①及び②の賃金で構成される場合には、当該基本給と職務手当等についてそれぞれ①及び②の方法により時間当たりの金額を算出し、その合計額を、時間によって定められた最低賃金額(時間額)と比較すること。
 ウ 訪問介護労働者は、利用者宅に移動することを前提に訪問介護の業務に従事するものであり、通常その移動に要する費用については、事業の必要経費との性格を有し、事業場が実費弁償として支給している旅費、交通費等は、一般的には労働の対償ではないことから賃金とは認められないので、最低賃金額との比較に当たっては、比較対象の賃金額には算入しないこと。
(5) 年次有給休暇の付与
 訪問介護事業においては、年次有給休暇について、短期間の契約期間が更新され6箇月以上に及んでいる場合であっても、例えば、労働契約が1箇月ごとの更新であることを理由に付与しない例が認められるところであるが、雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤している場合には、法に定めるところにより年次有給休暇を付与する必要があること(法第39条)。なお、年次有給休暇の付与要件である「継続勤務」とは、在籍期間を意味し、継続勤務かどうかについては、単に形式的にのみ判断すべきものでなく、勤務の実態に即し実質的に判断すべきものであること。
 また、非定型的パートタイムヘルパー等について、年次有給休暇が比例付与される日数は、原則として基準日において予定されている今後1年間の所定労働日数に応じた日数であるが、予定されている所定労働日数を算出し難い場合には、基準日直前の実績を考慮して所定労働日数を算出することとして差し支えないこと。したがって、例えば、雇入れの日から起算して6箇月経過後に付与される年次有給休暇の日数については、過去6箇月の労働日数の実績を2倍したものを「1年間の所定労働日数」とみなして判断することで差し支えないこと。
(6) 就業規則の作成及び周知
 使用者の中には、短時間労働者である訪問介護労働者については、就業規則の作成要件である「常時10人以上の労働者」には含まれないと誤解をしているものが認められるが、短時間労働者であっても「常時10人以上の労働者」に含まれるものであること(法第89条)。
 また、就業規則については、常時事業場内の各作業場ごとに掲示し、又は備え付ける等の方法により労働者に周知する必要があること(法第106条第1項)。なお、事業場等に赴く機会の少ない非定型的パートタイムヘルパー等への周知については、書面を交付することによる方法を講ずることが望ましいこと(規則第52条の2第2号参照)。
(7) 労働者名簿及び賃金台帳の調製及び保存
 訪問介護事業においては、訪問介護労働者の労務管理を適切に行うため、各事業場ごとに労働者名簿を調製し、労働者の氏名、雇入の年月日、退職の年月日及びその事由等を記入するとともに(法第107条、規則第53条)、賃金台帳を調製し、労働者の氏名、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外労働時間数、基本給、手当その他賃金の種類毎にその額等を賃金の支払の都度遅滞なく記入する必要があること(法第108条、規則第54条)。
 なお、訪問介護労働者に係る労働時間数等について、当該労働者が作成する業務報告書等により把握している場合は、使用者は、労働時間の実態を正しく記録し、適正に報告を行うことについて、当該労働者に対し十分な説明を行うこと。
 また、労働者名簿及び賃金台帳については、労働関係に関する重要な書類であるので、労働者名簿については労働者の退職等の日から、賃金台帳については最後の記入をした日から、それぞれ3年間保存する必要があること(法第109条、規則第56条)。
 
 
 平成21年4月1日基発第0401005号

 介護労働者の労働条件については、介護労働者の数が大きく増加している中、これまでもその確保・改善に努めてきたところであるが、依然として、労働時間、割増賃金等を始めとした労働基準関係法令上の問題が認められるところである。
 ついては、今後の介護労働者の労働条件の確保・改善対策を下記により推進することとしたので、その実施に遺漏なきを期されたい。
 
 記
 
1 基本的な考え方
(1) 基本的な考え方
 介護保険法の施行以来、介護労働者及び介護労働者を使用する事業場の数はいずれも大きく増加しており、中には、事業開始後間もないため、労働基準関係法令や労務管理に関する理解が十分でない事業場も少なくない。
 介護労働者の労働条件に関しては、これまでも平成16年8月27日付け基発第0827001号「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」(以下「訪問介護通達」という。)等により、その確保・改善に努めてきたところであるが、労働局における監督指導結果等をみると、依然として、労働時間、割増賃金、就業規則等に係る法違反が多く認められるほか、衛生管理体制が未整備であるなど、労働条件の基本的な枠組みが確立していない事業場が多い状況にある。
 一方で、介護労働者についてはその離職率が高く、人材確保が困難であるといった実態がみられることから、介護労働者の処遇を改善し人材確保に資するものとなるよう、平成21年度介護報酬改定がなされたところである。
 このような状況を踏まえ、労働基準行政においては、職業安定行政はもとより都道府県等と連携しつつ、あらゆる行政手法を通じて、介護労働者の労働条件の確保・改善対策の一層の効果的な推進を図るものとする。
(2) 対象
 本対策は、老人福祉・介護事業を中心として、障害者福祉事業、児童福祉事業等も含め、介護労働者を使用する事業場を対象として推進すること。
 
2 対策の重点事項
 介護労働者の労働条件の確保・改善については、介護労働の実態を踏まえ、特に問題が多く認められる事項等を次のとおり重点事項として取りまとめたので、事業の態様及び労働者の就業形態に応じてその徹底を図ること。
 なお、対象とした事業場に使用される介護労働者以外の労働者についても、同様にその労働条件の確保・改善を図ること。
(1) 介護労働者全体に係る事項
 ア 労働条件の明示
 ① 労働契約締結時の労働条件の書面交付による明示
 ② 有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準を定める告示(平成15年厚生労働省告示第357号(以下「雇止めに関する基準」という。))に定める更新の有無等の明示
 イ 就業規則
 ① 全労働者に適用される就業規則の作成、届出
 特に、短時間労働者を始めとするいわゆる非正規労働者(以下「非正規労働者」という。)にも適用される就業規則を作成すること。
 ② 記載内容の適正化
 特に、就業規則の内容が就労実態からみて適正でない場合には、就業実態に合致した内容とすること。
 ③ 労働者に対する周知
 ウ 労働時間
 ① 労働時間の適正な取扱い
 特に、交替制勤務における引継ぎ時間、業務報告書等の作成時間、会議・打ち合わせ等の時間、使用者の指示に基づく施設行事等の時間及びその準備時間、事業場から利用者宅や利用者宅間の移動時間等の労働時間を適正に把握、管理すること。
 ② 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平成13年4月6日付け基発第339号)に基づく労働時間の適正な把握
 ③ 変形労働時間制等の適正な運用
 ④ 時間外労働・休日労働協定の締結・届出
 ⑤ 時間外労働・休日労働協定の範囲内での時間外労働・休日労働の実施
 エ 休憩及び休日
 ① 休憩時間の確保
 特に、夜間や昼食時間帯における所定の休憩時間を確実に取得させるとともに、休憩時間の自由利用を保障すること。
 ② 法定休日の確保
 特に、夜間勤務者について、暦日(午前0時から午後12時まで)の休業を確保すること(夜勤を終了した日(夜勤明けの日)を法定休日として取り扱うことは、原則としてできないこと。)。
 オ 賃金等
 ① 賃金の適正な支払
 特に、労働時間に応じた賃金の算定を行う場合には、上記ウ①に留意し、引継ぎ時間等の労働時間を通算した時間数に応じた賃金の算定を行うこと。
 ② 時間外労働・休日労働及び深夜業に係る割増賃金の適正な支払
 ③ 最低賃金額以上の賃金の支払
 ④ 休業手当の適正な支払
 ⑤ 賃金台帳及び労働者名簿の調製及び保存
 カ 年次有給休暇
 ① 年次有給休暇制度及びその運用の適正化
 特に、非正規労働者についても法定の年次有給休暇を付与すること。
 ② 不利益取扱いの禁止
 キ 解雇及び雇止め
 ① 解雇手続及び雇止めに関する基準に定める雇止め手続の適正化
 ② 労働契約法の遵守
 ク 安全衛生
 ① 衛生管理者の選任等、衛生管理体制の整備
 ② 法定の健康診断及びその結果に基づく措置の確実な実施
 特に、深夜業従事者に係る6か月に1度の定期健康診断、常時使用する短時間労働者等に係る定期健康診断及びこれらの結果に基づく措置を確実に実施すること。
 ③ 「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置」(平成18年3月17日付け基発第0317008号)に基づく過重労働による健康障害の防止
 ④ 労働災害の防止
 特に、「職場における腰痛予防対策指針(平成6年9月6日付け基発第547号)」、「交通労働災害防止のためのガイドライン(平成20年4月3日付け基発第0403001号)」等を踏まえた労働災害防止対策を実施すること。
(2) 訪問介護労働者に係る留意事項
 訪問介護労働者については、上記(1)に掲げる事項のうち、特に、
 ア 移動時間等の労働時間を適正に把握すること
 イ 休業手当を適正に支払うこと
 等、訪問介護通達記の2に掲げる事項が適正に取り扱われるよう留意すること。
 
3 具体的な手法
(1) 集団指導等
 介護労働者を使用する事業場に対しては、各種のパンフレットや本省実施の「訪問介護労働者の労働条件改善事業」により作成する各種モデル様式等を活用し、上記2の重点事項を中心とした労働基準関係法令等について、関係機関との連携を図りつつ、効果的な集団指導及び自主点検を実施するとともに、あらゆる機会をとらえて周知すること。
(2) 監督指導
 労働基準関係法令に係る問題があると考えられる事業場に対しては、監督指導を実施すること。
 
4 関係機関との連携
(1) 都道府県等との連携
 介護保険事業の許可権限等を有している都道府県、政令指定都市及び中核市や、介護保険の保険者である市町村において実施される、事業者に対する説明会の機会をとらえて労働基準関係法令に係る説明を行う等、都道府県等と適切な連携に努めること。
 また、本対策を効果的に推進するため、介護労働者の労働条件の確保・改善上の問題点等について、都道府県等に対して、情報提供を行うこと。
(2) 職業安定行政との連携
 職業安定行政においては、介護労働者の雇用管理の改善に取り組む事業主を支援するための助成金制度、(財)介護労働安定センターにおける雇用管理責任者講習等、事業主がこれを活用することで労働条件の確保・改善に資することとなる各種の取組を実施していることから、必要に応じてこれとの連携を図ること。
 

  過重労働
 平成14年2月12日基発第0212001号

 過重労働による健康障害防止のための総合対策
1 目的
 平成13年12月12日付け基発第1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(以下「新認定基準」という。)により、脳・心臓疾患の労災認定基準を改正し、業務災害の認定に当たって、疲労の蓄積をもたらす長期間の過重業務も、業務による明らかな過重負荷として新たに考慮することとしたところである。
 この新認定基準においては、長期間の過重性の有無の判断に当たって疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間と脳・心臓疾患の発症との関連性について示したところである。
 本総合対策は、新認定基準の考え方の基礎となった医学的知見を踏まえ、過重労働による脳・心臓疾患の発症の防止に関して、別添のとおり「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等」を定め、その周知徹底を図ることにより、過重労働による健康障害を防止することを目的とする。
 
2 過重労働による健康障害防止のための周知啓発
 都道府県労働局及び労働基準監督署は、集団指導等のあらゆる機会を通じて、リーフレット等を活用しつつ別添の内容を広く周知を図ることとする。
 この周知に当たっては、関係事業者団体等並びに産業保健推進センター及び地域産業保健センター等も活用することとし、事業者に対して広く周知する。
 また、平成14年度中に作成し、インターネット上で公開することとしている労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストを広く周知することとする。
 
3 過重労働による健康障害防止のための窓口指導等
(1) 36協定における時間外労働の限度時間に係る指導の徹底
 ア 労働基準法第36条に基づく協定(以下「36協定」という。)の届出に際しては、労働基準監督署の窓口において、「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10年労働省告示第154号)(以下「限度基準」という。)を超える36協定を事業者が届け出た場合については、限度基準を遵守するよう指導する。
 また、36協定において、限度基準第3条ただし書に定める「特別の事情」が生じた場合に限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができる旨を定めたものについては、過重労働による健康障害を防止する観点から、当該時間をできる限り最小限のものとするよう指導する。
 イ 36協定において、月45時間を超える時間外労働(1週間当たり40時間を超えて行わせる労働をいう。以下同じ。)を行わせることが可能である場合であっても、実際の時間外労働については月45時間以下とするよう指導する。
(2) 労働者の健康管理に係る周知指導
 (1)の月45時間を超える時間外労働を行わせることが可能である36協定を受け付ける場合及び裁量労働制に係る届出を受け付ける場合については、リーフレット等を活用して別添の内容を周知指導する。
 
4 過重労働による健康障害防止のための監督指導等
(1) 月45時間を超える時間外労働が行われているおそれがあると考えられる事業場に対しては監督指導、集団指導等を実施する。
(2) 監督指導においては、次のとおり指導する。
 ア 月45時間を超える時間外労働が認められた場合については、別添の4の(2)のアの措置を講ずるよう指導する。併せて、過重労働による健康障害防止の観点から、時間外労働の削減等について指導を行う。
 イ 月100時間を超える時間外労働が認められた場合又は2か月間ないし6か月間の1か月平均の時間外労働が80時間を超えると認められた場合については、上記アの指導に加え、別添の4の(2)のイの措置を速やかに講ずるよう指導する。
 ウ 限度基準に適合していない36協定がある場合であって、労働者代表からも事情を聴取した結果、限度基準等に適合していないことに関する労使当事者間の検討が十分尽くされていないと認められたとき等については、協定締結当事者に対しても必要な指導を行う。
(3) 事業者が上記(2)のイによる別添の4の(2)のイの措置に係る指導に従わない場合については、当該措置の対象となる労働者に関する作業環境、労働時間、深夜業の回数及び時間数、過去の健康診断の結果等を提出させ、これらに基づき労働衛生指導医の意見を聴くこととし、その意見に基づき、労働安全衛生法第66条第4項に基づく臨時の健康診断の実施を指示することを含め、厳正な指導を行う。
 
5 過重労働による業務上の疾病が発生した場合の再発防止対策等
(1) 過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場に対する再発防止の徹底の指導
 過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場については、別添の4の(2)のウの措置を行うよう指導する。
(2) 司法処分を含めた厳正な対処
 過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場であって労働基準関係法令違反が認められるものについては、司法処分を含めて厳正に対処する。
 
(別添)
 
 過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等
1 趣旨
 近年の医学研究等を踏まえ、平成13年12月12日付け基発第1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(以下「新認定基準」という。)により、脳・心臓疾患の労災認定基準を改正し、脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす業務による明らかな過重負荷として、これまで発症前1週間以内を中心とする発症に近接した時期における負荷を重視してきたところを、長期間にわたる疲労の蓄積についても業務による明らかな過重負荷として考慮することとした。この新認定基準の考え方の基礎となった医学的検討結果によると、長期間にわたる長時間労働やそれによる睡眠不足に由来する疲労の蓄積が血圧の上昇などを生じさせ、その結果、血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させるとの観点から、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間の評価の目安が次のとおり示された。
(1) 発症前1か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いと判断されるが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まるものと判断されること。
(2) 発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと判断されること。
 この考え方に基づき、過重労働による労働者の健康障害を防止することを目的として、以下のとおり事業者が講ずべき措置等を定めたものである。
 
2 時間外労働の削減
(1) 時間外労働は本来臨時的な場合に行われるものであること、また、時間外労働(1週間当たり40時間を超えて行わせる労働をいう。以下同じ。)が月45時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強まると判断されることを踏まえ、事業者は、労働基準法第36条に基づく協定(以下「36協定」という。)の締結に当たっては、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者とともにその内容が「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10年労働省告示第154号)(以下「限度基準」という。)に適合したものとなるようにする。
 また、36協定において、限度基準第3条ただし書に定める「特別な事情」が生じた場合に限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができる旨を定めているなど月45時間を超えて時間外労働を行わせることが可能である場合についても、事業者は、実際の時間外労働を月45時間以下とするよう努めるものとする。
(2) 事業者は、上記1の(1)の趣旨を踏まえ、時間外労働を月45時間以下とするよう適切な労働時間管理に努めるものとする。
 その際、時間外労働が月45時間以下の場合においても、健康に悪影響を及ぼすことのないように時間外労働のさらなる短縮について配意するものとする。
 また、事業者は、裁量労働制対象労働者及び管理・監督者についても、健康確保のための責務があることなどにも十分留意し、過重労働とならないよう努めるものとする。
(3) 事業者は、平成13年4月6日付け基発第339号「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」に基づき、労働時間の適正な把握を行うものとする。
 
3 年次有給休暇の取得促進
 事業者は、各種助成制度の活用などにより、年次有給休暇の取得しやすい職場環境づくり及び具体的な年次有給休暇の取得促進を図るものとする。
 
4 労働者の健康管理に係る措置の徹底
(1) 健康診断の実施等の徹底
 事業者は、労働安全衛生法第66条第1項の健康診断、同法第66条の4の健康診断結果についての医師からの意見聴取、同法第66条の5の健康診断実施後の措置、同法第66条の7の保健指導等を確実に実施する。
 特に、深夜業を含む業務に常時従事する労働者に対しては、労働安全衛生規則第45条に基づき、6月以内ごとに1回、定期に、特定業務従事者の健康診断を実施しなければならないことに留意するものとする。
 また、深夜業に従事する労働者の健康管理に資するための自発的健康診断受診支援助成金制度や一定の健康診断項目について異常の所見がある労働者に対する二次健康診断等給付制度の活用につき、事業者は労働者に周知するとともに、労働者からこれらの健康診断の結果の提出があったときには、事業者は、これらの健康診断についてもその結果に基づく事後措置を講ずる必要があることについて留意するものとする。
 さらに、事業者は、労働安全衛生法第69条による労働者の健康保持増進を図るための措置の継続的かつ計画的な実施に努めるものとする。
(2) 産業医等による助言指導等
 ア 月45時間を超える時間外労働をさせた場合については、事業者は、当該労働をした労働者に関する作業環境、労働時間、深夜業の回数及び時間数、過去の健康診断の結果等に関する情報を、産業医(産業医を選任する義務のない事業場にあっては、地域産業保健センター事業により登録されている医師等の産業医として選任される要件を備えた医師。)(以下「産業医等」という。)に提供し、事業場における健康管理について産業医等による助言指導を受けるものとする。
 イ 月100時間を超える時間外労働を行わせた場合又は2か月間ないし6月間の1か月平均の時間外労働を80時間を超えて行わせた場合については、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いと判断されることから、事業者は、上記アの措置に加えて、作業環境、労働時間、深夜業の回数及び時間数、過去の健康診断の結果等の当該労働をした労働者に関する情報を産業医等に提供し、当該労働を行った労働者に産業医等の面接による保健指導を受けさせるものとする。また、産業医等が必要と認める場合にあっては産業医等が必要と認める項目について健康診断を受診させ、その結果に基づき、当該産業医等の意見を聴き、必要な事後措置を行うものとする。
 ウ 過重労働による業務上の疾病を発生させた場合には、事業者は、産業医等の助言を受け、又は必要に応じて労働衛生コンサルタントの活用を図りながら、次のとおり原因の究明及び再発防止の徹底を図るものとする。
 (ア) 原因の究明
 労働時間及び勤務の不規則性、拘束時間の状況、出張業務の状況、交替制勤務・深夜勤務の状況、作業環境の状況、精神的緊張を伴う勤務の状況等について、多角的に原因の究明を行うこと。
 (イ) 再発防止
 上記(ア)の結果に基づき、再発防止対策を樹立すること。

 
 平成20年3月7日基発第0307006号

 「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」の一部改正について」


  賃金不払い
 平成15年5月23日基発第0523003号

 賃金不払残業総合対策要綱
 
1 趣旨
 賃金不払残業(所定労働時間外に労働時間の一部又は全部に対して所定の賃金又は割増賃金を支払うことなく労働を行わせること。以下同じ。)は、労働基準法に違反する、あってはならないものであり、その解消を図るために、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」(平成13年4月6日付け基発第339号。以下「労働時間適正把握基準」という。)を発出し、使用者に適正に労働時間を管理する責務があることを改めて明らかにするとともに、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置等を具体的に示したところであり、厚生労働省としても、その遵守徹底に努めてきたところである。
 しかしながら、現状をみると、未だ労働時間の把握に係る自己申告制(労働者が自己の労働時間を自主的に申告することにより労働時間を把握するもの。以下同じ。)の不適正な運用など使用者が適正に労働時間を管理していないことを原因とする割増賃金の不払いなどの状況もみられるところである。
 このため、事業場における賃金不払残業の実態を最もよく知る立場にある労使に対して主体的な取組を促すとともに、これまでの厚生労働省による対応をさらに強化することにより、適正な労働時間の管理を一層徹底するとともに、賃金不払残業の解消を図ることとする。
 
2 「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」の策定
 適正に労働時間を管理するために労使関係者が講ずべき事項を盛り込んだ「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」を策定し、企業の本社と労働組合等の主体的取組を促すとともに、労働相談、集団指導、監督指導等あらゆる機会を通じて、使用者、労働者等に幅広く周知を図る。

3 「賃金不払残業解消キャンペーン月間」の実施
 「賃金不払残業解消キャンペーン月間」を設定し、賃金不払残業の解消と適正な労働時間の管理に向けたキャンペーン活動を実施し、労使の主体的取組を促す。
 
4 都道府県レベルでの労使当事者の意識改革の推進
 地域産業労働懇談会など都道府県単位で労使の参集を得る場を活用し、労働時間の管理の適正化の周知徹底と気運の醸成を図る。
 
5 的確な監督指導等の実施と「賃金不払残業重点監督月間」の設定
(1) 的確な監督指導等の実施
 本省、都道府県労働局、労働基準監督署が一体となって労働時間適正把握基準の周知徹底を行うとともに、的確な監督指導を実施し、特に法違反が認められかつ重大悪質な事案については、司法処分を含め厳正に対処する。
 本社等において各部署に対して適正な労働時間の管理について一定の指示等を行っているにもかかわらず、各部署において賃金不払残業の疑いがある場合には、監督指導時に、必要に応じ、労働組合等からも事情を聴き、その実態を十分に把握した上で、改善指導を行う。
(2) 「賃金不払残業重点監督月間」の設定
 「賃金不払残業重点監督月間」を設定し、賃金不払残業に係る重点監督を実施する。
 また、上記3に掲げる「賃金不払残業解消キャンペーン月間」においても、その実施に合わせて、重点監督を実施する。
 
6 賃金不払残業に係る事例の取りまとめ
 賃金不払残業に係る今後の監督指導の状況を踏まえつつ、必要に応じて、賃金不払残業についての送検事例、是正事例等を収集・整理の上、取りまとめて公表する。

 
 平成15年5月23日基発第0523004号

 賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針
 
1 趣旨
 賃金不払残業(所定労働時間外に労働時間の一部又は全部に対して所定の賃金又は割増賃金を支払うことなく労働を行わせること。以下同じ。)は、労働基準法に違反する、あってはならないものである。
 このような賃金不払残業の解消を図るためには、事業場において適正に労働時間が把握される必要があり、こうした観点から、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき基準」(平成13年4月6日付け基発第339号。以下「労働時間適正把握基準」という。)を策定し、使用者に労働時間を管理する責務があることを改めて明らかにするとともに、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置等を具体的に明らかにしたところである。
 しかしながら、賃金不払残業が行われることのない企業にしていくためには、単に使用者が労働時間の適正な把握に努めるに止まらず、職場風土の改革、適正な労働時間の管理を行うためのシステムの整備、責任体制の明確化とチェック体制の整備等を通じて、労働時間の管理の適正化を図る必要があり、このような点に関する労使の主体的な取組を通じて、初めて賃金不払残業の解消が図られるものと考えられる。
 このため、本指針においては、労働時間適正把握基準において示された労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置等に加え、各企業において労使が各事業場における労働時間の管理の適正化と賃金不払残業の解消のために講ずべき事項を示し、企業の本社と労働組合等が一体となっての企業全体としての主体的取組に資することとするものである。
 
2 労使に求められる役割
(1) 労使の主体的取組
 労使は、事業場内において賃金不払残業の実態を最もよく知るべき立場にあり、各々が果たすべき役割を十分に認識するとともに、労働時間の管理の適正化と賃金不払残業の解消のために主体的に取り組むことが求められるものである。
 また、グループ企業などにおいても、このような取組を行うことにより、賃金不払残業の解消の効果が期待できる。
(2) 使用者に求められる役割
 労働基準法は、労働時間、休日、深夜業等について使用者の遵守すべき基準を規定しており、これを遵守するためには、使用者は、労働時間を適正に把握する必要があることなどから、労働時間を適正に管理する責務を有していることは明らかである。したがって、使用者にあっては、賃金不払残業を起こすことのないよう適正に労働時間を管理しなければならない。
(3) 労働組合に求められる役割
 一方、労働組合は、時間外・休日労働協定(36協定)の締結当事者の立場に立つものである。したがって、賃金不払残業が行われることのないよう、本社レベル、事業場レベルを問わず企業全体としてチェック機能を発揮して主体的に賃金不払残業を解消するために努力するとともに、使用者が講ずる措置に積極的に協力することが求められる。
(4) 労使の協力
 賃金不払残業の解消を図るための検討については、労使双方がよく話し合い、十分な理解と協力の下に、行われることが重要であり、こうした観点から、労使からなる委員会(企業内労使協議組織)を設置して、賃金不払残業の実態の把握、具体策の検討及び実施、具体策の改善へのフィードバックを行うなど、労使が協力して取り組む体制を整備することが望まれる。
 
3 労使が取り組むべき事項
(1) 労働時間適正把握基準の遵守
 労働時間適正把握基準は、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき具体的措置等を明らかにしたものであり、使用者は賃金不払残業を起こすことのないようにするために、労働時間適正把握基準を遵守する必要がある。
 また、労働組合にあっても、使用者が適正に労働時間を把握するために労働者に対して労働時間適正把握基準の周知を行うことが重要である。
(2) 職場風土の改革
 賃金不払残業の責任が使用者にあることは論を待たないが、賃金不払残業の背景には、職場の中に賃金不払残業が存在することはやむを得ないとの労使双方の意識(職場風土)が反映されている場合が多いという点に問題があると考えられることから、こうした土壌をなくしていくため、労使は、例えば、次に掲げるような取組を行うことが望ましい。
 ① 経営トップ自らによる決意表明や社内巡視等による実態の把握
 ② 労使合意による賃金不払残業撲滅の宣言
 ③ 企業内又は労働組合内での教育
(3) 適正に労働時間の管理を行うためのシステムの整備
 ① 適正に労働時間の管理を行うためのシステムの確立
 賃金不払残業が行われることのない職場を創るためには、職場において適正に労働時間を管理するシステムを確立し、定着させる必要がある。
 このため、まず、例えば、出退勤時刻や入退室時刻の記録、事業場内のコンピュータシステムへの入力記録等、あるいは賃金不払残業の有無も含めた労働者の勤務状況に係る社内アンケートの実施等により賃金不払残業の実態を把握した上で、関係者が行うべき事項や手順等を具体的に示したマニュアルの作成等により、「労働時間適正把握基準」に従って労働時間を適正に把握するシステムを確立することが重要である。
 その際に、特に、始業及び終業時刻の確認及び記録は使用者自らの現認又はタイムカード、ICカード等の客観的な記録によることが原則であって、自己申告制によるのはやむを得ない場合に限られるものであることに留意する必要がある。
 ② 労働時間の管理のための制度等の見直しの検討
 必要に応じて、現行の労働時間の管理のための制度やその運用、さらには仕事の進め方も含めて見直すことについても検討することが望まれる。特に、賃金不払残業の存在を前提とする業務遂行が行われているような場合には、賃金不払残業の温床となっている業務体制や業務指示の在り方にまで踏み込んだ見直しを行うことも重要である。
 その際には、例えば、労使委員会において、労働者及び管理者からヒアリングを行うなどにより、業務指示と所定外労働のための予算額との関係を含めた勤務実態や問題点を具体的に把握することが有効と考えられる。
 ③ 賃金不払残業の是正という観点を考慮した人事考課の実施
 賃金不払残業の是正という観点を考慮した人事考課の実施(賃金不払残業を行った労働者も、これを許した現場責任者も評価しない。)等により、適正な労働時間の管理を意識した人事労務管理を行うとともに、こうした人事労務管理を現場レベルでも徹底することも重要である。
(4) 労働時間を適正に把握するための責任体制の明確化とチェック体制の整備
 ① 労働時間を適正に把握し、賃金不払残業の解消を図るためには、各事業場ごとに労働時間の管理の責任者を明確にしておくことが必要である。特に、賃金不払残業が現に行われ、又は過去に行われていた事業場については、例えば、同じ指揮命令系統にない複数の者を労働時間の管理の責任者とすることにより牽制体制を確立して労働時間のダブルチェックを行うなど厳正に労働時間を把握できるような体制を確立することが望ましい。
 また、企業全体として、適正な労働時間の管理を遵守徹底させる責任者を選任することも重要である。
 ② 労働時間の管理とは別に、相談窓口を設置する等により賃金不払残業の実態を積極的に把握する体制を確立することが重要である。その際には、上司や人事労務管理担当者以外の者を相談窓口とする、あるいは企業トップが直接情報を把握できるような投書箱(目安箱)や専用電子メールアドレスを設けることなどが考えられる。
 ③ 労働組合においても、相談窓口の設置等を行うとともに、賃金不払残業の実態を把握した場合には、労働組合としての必要な対応を行うことが望まれる。


  在宅勤務
 平成16年3月5日基発第0305003号

 情報通信機器を活用して、働く者が時間と場所を自由に選択して働くことができる働き方であるテレワークは、通勤負担の軽減に加え、多様な生活環境にある個々人のニーズに対応することができる働き方であり、そのような働き方は広がりをみせてきている。
 その中で、事業主と雇用関係にある労働者が情報通信機器を活用して、労働時間の全部又は一部について、自宅で業務に従事する勤務形態である在宅勤務についても、労働者が仕事と生活の調和を図りながら、その能力を発揮して生産性を向上させることができ、また、個々の生きがいや働きがいの充実を実現することができる次世代のワークスタイルとして期待されている。
 しかしながら、この在宅勤務については、職場での勤務などとは異なり、業務に従事する場所が、労働者の私生活にむやみに介入すべきでない自宅であるという点や、労働者の勤務時間帯と日常生活時間帯とが混在せざるを得ない働き方である点等を考慮すると、これまで一般的であった事業主の支配や管理が及ぶ事務所等での勤務に係る労務管理を前提とした労働基準関係法令の適用関係等を整理し直し、適切な労務管理が行われることが必要となっているところである。
 そこで、今般、在宅勤務が適切に導入及び実施されるための労務管理の在り方を明確にし、もって適切な就業環境の下での在宅勤務の実現が図られることを目的とする「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を別添のとおり策定したところである。
 今後は、本ガイドラインに基づき、関係事業主等において在宅勤務の利点を労働者が十分に享受できるようにするという視点に立ちつつ、適切な労務管理に努めるよう、周知を図られたい。

 
別添
 
 情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン
 
1 在宅勤務の現状と課題
(1) 在宅勤務を巡る現状
 近年、インターネットや情報処理を中心とした技術革新により、IT(Information Technology:高度通信情報ネットワーク)化が急速に進んでおり、パソコンや端末等のVDT(Visual Display Terminal)が家庭や職場を問わず広く社会に導入され、職場環境や就業形態等についても大きく変化している状況にある。
 このような中で、情報通信機器を活用して、働く者が時間と場所を自由に選択して働くことができる働き方であるテレワークは、通勤負担の軽減に加え、多様な生活環境にある個々人のニーズに対応することができる働き方であり、そのような働き方は広がりをみせてきている。
 その中で、事業主と雇用関係にある労働者が情報通信機器を活用して、労働時間の全部又は一部について、自宅で業務に従事する勤務形態である在宅勤務についても、労働者が仕事と生活の調和を図りながら、その能力を発揮して生産性を向上させることができ、また、個々の生きがいや働きがいの充実を実現することができる次世代のワークスタイルとして期待されている。国土交通省「テレワーク・SOHOの推進による地域活性化のための総合的支援方策検討調査」(平成15年3月)によると、平成14年時点で、テレワークのうち在宅勤務を実施することがある者(週8時間以上テレワークを実施している者のうち自宅で実施することがある者)は、約214万人であり、労働者全体の約3.9%を占めるとされている。
 なお、テレワークには、事業主と雇用関係にある働き方として、在宅勤務以外に、労働者が属する部署があるメインのオフィスではなく郊外の住宅地に近接した地域にある小規模なオフィス等で業務に従事する、いわゆる「サテライトオフィス勤務」、ノートパソコン、携帯電話等を活用して臨機応変に選択した場所で業務に従事する、いわゆる「モバイルワーク」がある。また、在宅勤務と似かよっているが、事業主と雇用関係にない請負契約等に基づく働き方として、いわゆる非雇用の就業形態である「在宅就業」がある。
(2) 在宅勤務の評価
 在宅勤務に関しては、総務省「テレワーク人口等に関する調査」(平成14年3月)や前出した国土交通省調査等によれば、事業主は、「仕事の生産性・効率性の向上」、「オフィスコストの削減」、「優秀な人材の確保」等の効果の面を評価しており、在宅勤務を行う労働者の側からも、「仕事の生産性・効率性の向上」、「通勤に関する肉体的、精神的負担が少ない」、「家族との団欒が増える」等の効果の面を評価している。
 例えば、「仕事の生産性・効率性の向上」に関しては、事業主から、在宅勤務の方が職場における場合よりも業務成果がかなり高いという評価があり、同様に、在宅勤務を行う労働者からも、労働者の私生活が確保されている自宅において一人で業務に携わる方が、職場において行うよりも、精神的負担が少なく、かつ集中できる時間が長く続くという評価もある。
 また、「通勤に関する肉体的、精神的負担が少ない」に関しては、事業主から、育児・介護等の事情により有能な人材が離転職することを防ぐことが可能であり、かつ職場復帰も比較的早期に実現できるとの評価があり、同様に、育児期の児童を抱える労働者からも、通勤に係る時間を家庭に対する時間に充てることができ、仕事と家庭の両立を図ることができるとの評価もある。
(3) 在宅勤務の課題
 (2)に記したように、在宅勤務は一般に、労働者が仕事と生活の調和を図りながら、その能力を発揮して生産性を向上させることを可能とするものとして一定の評価を受けている勤務形態であるが、その一方で、労働者の勤務時間帯と日常生活時間帯が混在せざるを得ない働き方であること等、これまでの労務管理では対応が難しい面もあることから導入をためらう事業主もあると考えられる。前出した総務省調査や国土交通省調査等においても、在宅勤務を実施していない理由として、労働者の労働時間や健康等「労働者の管理が難しい」を挙げる事業主が多くなっている。また、「労働者の評価がしにくい」等を挙げる事業主も多くなっており、在宅勤務を行う労働者からも同様の課題が挙げられているところである。
 なお、これらの課題は、いわゆる非雇用の就業形態である「在宅就業」も含め、勤務時間帯と日常生活時間帯が混在せざるを得ない働き方に共通の点もあり、今後はこれらの働き方が、その長所を生かして次世代のワークスタイルとして普及定着していくための課題を明らかにし対策を講じていくことが求められることになろう。
 
2 在宅勤務についての考え方
 在宅勤務を制度として導入するか否かは、基本的には事業主が労働者等の意向を踏まえ、業務の内容や事業場における業務の実態等を勘案して判断するものであろうが、1の(1)(2)に照らし、仕事と生活の調和等の観点から在宅勤務を希望する労働者の存在等を随時把握し、在宅勤務の可能な業務の検討などを進めておくことが望まれる。また、導入に当たっては、3及び4に留意するとともに、1(3)の課題の解決方策について、労働者の合意を得て、適切な在宅勤務の導入及び実施に努めることが求められる。
 
3 労働基準関係法令の適用及びその注意点
(1) 労働基準関係法令の適用
 労働者が在宅勤務(労働者が、労働時間の全部又は一部について、自宅で情報通信機器を用いて行う勤務形態をいう。)を行う場合においても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用されることとなる。
(2) 労働基準法上の注意点
 ア 労働条件の明示
 使用者は、労働契約を締結する者に対し在宅勤務を行わせることとする場合においては、労働契約の締結に際し、就業の場所として、労働者の自宅を明示しなければならない(労働基準法施行規則第5条第2項)。
 イ 労働時間
 在宅勤務については、事業主が労働者の私生活にむやみに介入すべきではない自宅で勤務が行われ、労働者の勤務時間帯と日常生活時間帯が混在せざるを得ない働き方であることから、一定の場合には、労働時間を算定し難い働き方として、労働基準法第38条の2で規定する事業場外労働のみなし労働時間制(以下「みなし労働時間制」という。)を適用することができる(平成16年3月5日付け基発第0305001号「情報通信機器を活用した在宅勤務に関する労働基準法第38条の2の適用について」)。
 在宅勤務についてみなし労働時間制が適用される場合は、在宅勤務を行う労働者は就業規則等で定められた所定労働時間により勤務したものとみなされることとなる。業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、当該必要とされる時間労働したものとみなされ、労使の書面による協定があるときには、協定で定める時間を通常必要とされる時間とし、当該協定を労働基準監督署長へ届け出ることが必要となる(労働基準法第38条の2)。
 在宅勤務についてみなし労働時間制を適用する場合であっても、労働したものとみなされる時間が法定労働時間を超える場合には、時間外労働に係る三六協定の締結、届出及び時間外労働に係る割増賃金の支払いが必要となり、また、現実に深夜に労働した場合には、深夜労働に係る割増賃金の支払いが必要となる(労働基準法第36条及び第37条)。
 このようなことから、労働者は、業務に従事した時間を日報等において記録し、事業主はそれをもって在宅勤務を行う労働者に係る労働時間の状況の適切な把握に努め、必要に応じて所定労働時間や業務内容等について改善を行うことが望ましい。
(3) 労働安全衛生法上の注意点
 事業者は、通常の労働者と同様に、在宅勤務を行う労働者についても、その健康保持を確保する必要があり、必要な健康診断を行うとともに(労働安全衛生法第66条第1項)、在宅勤務を行う労働者を雇い入れたときは、必要な安全衛生教育を行う必要がある(労働安全衛生法第59条第1項)。
 また、事業者は在宅勤務を行う労働者の健康保持に努めるに当たって、労働者自身の健康を確保する観点から、「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(平成14年4月5日基発第0405001号)等に留意する必要があり、労働者に対しその内容を周知し、必要な助言を行うことが望ましい。
(4) 労働者災害補償保険法上の注意点
 労働者災害補償保険においては、業務が原因である災害については、業務上の災害として保険給付の対象となる。
 したがって、自宅における私的行為が原因であるものは、業務上の災害とはならない。
 
4 その他在宅勤務を適切に導入及び実施するに当たっての注意点
(1) 労使双方の共通の認識
 在宅勤務の制度を適切に導入するに当たっては、労使で認識に齟齬のないように、あらかじめ導入の目的、対象となる業務、労働者の範囲、在宅勤務の方法等について、労使委員会等の場で十分に納得のいくまで協議し、文書にし保存する等の手続きを踏むことが望ましい。
 新たに在宅勤務の制度を導入する際、個々の労働者が在宅勤務の対象となり得る場合であっても、実際に在宅勤務をするかどうかは本人の意思によることとすべきである。
(2) 業務の円滑な遂行
 在宅勤務を行う労働者が業務を円滑かつ効率的に遂行するためには、業務内容や業務遂行方法等を文書にして交付するなど明確にして行わせることが望ましい。また、あらかじめ通常又は緊急時の連絡方法について、労使間で取り決めておくことが望ましい。
(3) 業績評価等の取扱い
 在宅勤務は労働者が職場に出勤しないことなどから、業績評価等について懸念を抱くことのないように、評価制度、賃金制度を構築することが望ましい。
 また、業績評価や人事管理に関して、在宅勤務を行う労働者について通常の労働者と異なる取扱いを行う場合には、あらかじめ在宅勤務を選択しようとする労働者に対して当該取扱いの内容を説明することが望ましい。
 なお、在宅勤務を行う労働者について、通常の労働者と異なる賃金制度等を定める場合には、当該事項について就業規則を作成・変更し、届け出なければならないこととされている(労働基準法第89条第2号)。
(4) 通信費及び情報通信機器等の費用負担の取扱い
 在宅勤務に係る通信費や情報通信機器等の費用負担については、通常の勤務と異なり、在宅勤務を行う労働者がその負担を負うことがあり得ることから、労使のどちらが行うか、また、事業主が負担する場合における限度額、さらに労働者が請求する場合の請求方法等については、あらかじめ労使で十分に話し合い、就業規則等において定めておくことが望ましい。
 特に、労働者に情報通信機器等、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければならないこととされている(労働基準法第89条第5号)。
(5) 社内教育等の取扱い
 在宅勤務を行う労働者については、OJTによる教育の機会が得がたい面もあることから、労働者が能力開発等において不安に感じることのないよう、社内教育等の充実を図ることが望ましい。
 なお、在宅勤務を行う労働者について、社内教育や研修制度に関する定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければならないこととされている(労働基準法第89条第7号)。
 
5 在宅勤務を行う労働者の自律
 在宅勤務を行う労働者においても、勤務する時間帯や自らの健康に十分に注意を払いつつ、作業能率を勘案して自律的に業務を遂行することが求められる。

(参考)
 
○情報通信機器を活用した在宅勤務に関する労働基準法第38条の2の適用について
(平成16年3月5日)
(基発第0305001号)
(京都労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
 平成16年2月5日付け京労発第35号(別紙甲)をもってりん伺のあった標記について、下記のとおり回答する。
  
 記
 
 貴見のとおり。
 ただし、例えば、労働契約において、午前中の9時から12時までを勤務時間とした上で、労働者が起居寝食等私生活を営む自宅内で仕事を専用とする個室を確保する等、勤務時間帯と日常生活時間帯が混在することのないような措置を講ずる旨の在宅勤務に関する取決めがなされ、当該措置の下で随時使用者の具体的な指示に基づいて業務が行われる場合については、労働時間を算定し難いとは言えず、事業場外労働に関するみなし労働時間制は適用されないものである。
 
別紙甲
 
○情報通信機器を活用した在宅勤務に関する労働基準法第38条の2の適用について
(平成16年2月5日)
(京労発基第35号)
(厚生労働省労働基準局長あて京都労働局長通知)
 今般、在宅勤務に関し、下記のとおり労働基準法第38条の2の適用に係る疑義が生じましたので、御教示願います。
 
 記
 
 次に掲げるいずれの要件をも満たす形態で行われる在宅勤務(労働者が自宅で情報通信機器を用いて行う勤務形態をいう。)については、原則として、労働基準法第38条の2に規定する事業場外労働に関するみなし労働時間制が適用されるものと解してよろしいか。
 ① 当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること。
 ② 当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと。
 ③ 当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと。


  技能実習生
 平成22年2月8日基発0208第2号

 出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号。以下「入管法」という。)については、研修生及び技能実習生の法的保護の強化を図る等の観点から改正され、本年7月1日から施行されることとなったところである。
 
このため、改正後の技能実習制度における技能実習生の労働条件の確保については、下記に留意の上、適切な対応に遺憾なきを期されたい。
 
なお、平成5年10月6日付け基発第592号「「技能実習制度」の導入に伴う労働基準行政の運営について」は、本年6月30日をもって廃止する。
 
 記
 
第1 改正後の技能実習制度の概要等
 
1 改正前の研修・技能実習制度からの主な変更点
 
入管法の改正により、新たな在留資格「技能実習」が設けられ、技能実習生は、入国1年目から当該在留資格「技能実習」により在留することとなること。
 
改正前の研修・技能実習制度においては、入国1年目は研修生として入管法上報酬を受ける活動が禁止され、労働基準法上の労働者に該当しないものであったが、改正後の技能実習制度においては、第2の1記載のとおり、入国1年目から労働者として労働基準関係法令の適用を受けるものとなること(別紙1参照)。
 
なお、その他の主な改正点は、別紙2のとおりである。
 
2 改正後の技能実習制度の枠組み
 
入管法上、在留資格「技能実習」で行うことができる活動は、①入国1年目に実施する「技能実習1号」の活動(入管法別表第1の2の表の「技能実習」の項(別紙3参照)の下欄の第1号の活動)と、②入国2、3年目に実施する「技能実習2号」の活動(同欄の第2号の活動)に分かれること。
 
また、さらにそれぞれが、①団体監理型(同欄の第1号ロ及び第2号ロに定める形態であって、監理団体(受入れ団体)の責任と監理の下で、実習実施機関(受入れ企業)において技能実習を行うもの)と、②企業単独型(同欄の第1号イ及び第2号イに定める形態であって、実習実施機関が外国にある子会社等の職員を直接、技能実習生として受け入れるもの)に分かれること。
 
3 「技能実習1号」の活動内容
 
技能実習1号の活動は、①知識の修得をする活動(以下「講習」という。)と、②雇用契約に基づいて講習以外の技能等の修得をする活動(以下「技能等修得活動」という。)に区別されること。
 
(1) 講習
 
講習は、団体監理型にあっては監理団体が、企業単独型にあっては実習実施機関が実施することとされていること。
 
講習は、座学(見学を含む。以下同じ。)によって行うこととされており、試作品の製造や商品生産施設での安全衛生教育、機械操作教育等の活動は含まれない。
 
講習の総時間数は、技能実習1号の活動全体の6分の1以上とされており、技能実習1号の活動を1年間予定する場合には、そのうち2か月以上を講習に充てることとなる。ただし、入国前に一定の講習を受講している場合には、我が国で行う講習の総時間数を短縮することができるものとされていること。
 
(2) 技能等修得活動
 
技能等修得活動は、実習実施機関において実際の製品生産業務等に従事しながら実施されるものであること。
 
4 「技能実習2号」の活動内容
 
技能実習2号の活動は、技能実習1号の活動により技能等を修得した者が、当該技能等に習熟するため、実習実施機関において当該技能等を要する業務に従事するものであること。
 
なお、すべての技能実習生が技能実習2号へ移行するものではなく、対象職種等によっては入国当初から技能実習1号のみで帰国することが予定されていること。
 
5 技能実習の期間
 
技能実習の期間は、関係する法務省令(別紙2に掲げる法務省令をいう。以下同じ。)において、技能実習1号と技能実習2号の期間を合わせて3年以内、技能実習2号に移行する場合の技能実習1号の期間は1年以内とされていること。
 
6 技能実習生の受入れの停止等
 
賃金の不払等、不適正な技能実習生の受入れであって法務省令に定める行為(以下「不正行為」という。)を行った監理団体、実習実施機関、その経営者等に対しては、出入国管理機関において不正行為認定がなされ、その類型に応じて5年間、3年間又は1年間、技能実習生の受入れが停止されること(別紙4参照)。
 
また、法務省令により、労働基準法第5条、第6条、第23条から第27条まで、第37条、最低賃金法第4条に違反(技能実習生に係る違反に限らない。)して刑に処せられた実習実施機関等については、刑の執行を終えた日又は刑の執行を受けることがなくなった日から5年間、技能実習生の受入れが認められないこと。
 
第2 技能実習生に係る労働基準関係法令の適用
 
1 技能実習1号について
 
(1) 講習の期間中
 
ア 団体監理型
 
団体監理型にあっては、法務省令において、雇用契約に基づかない講習を入国当初に実施し、講習をすべて終了した後に、実習実施機関との雇用契約に基づき技能等修得活動を開始することとされている。また、実習実施機関と技能実習生は、講習の終了後の特定の日を就労の始期とする雇用契約を技能実習生の入国前に締結することとされている。
 
したがって、講習の期間中に技能実習生を製品生産業務等に従事させること、講習の期間中の技能実習生を実習実施機関が指揮監督下に置くことは認められていない。
 
このため、団体監理型における講習の期間中の技能実習生については、その時点では雇用契約の効力が未だ発生しておらず、また、実習実施機関からの指揮監督を受けず、労務の対償としての報酬を受けないこと等から、その限りにおいて、労働基準法上の「労働者」には該当しないこと。
 
イ 企業単独型
 
企業単独型にあっては、入管法上、実習実施機関との雇用契約に基づき講習を実施する場合と、雇用契約に基づかずに講習を実施する場合とがある。
 
雇用契約に基づく講習の実施時期は入国当初に限られないが、雇用契約に基づかない講習は入国当初に実施され、当該講習を終了した後に実習実施機関との雇用契約に基づき技能等の修得活動を開始することとなる。
 
実習実施機関と技能実習生は、講習のすべてを雇用契約に基づき実施する場合には入国時を就労の始期とする雇用契約を、講習の一部又は全部を雇用契約に基づかずに実施する場合には当該雇用契約に基づかない講習の終了後の特定の日を就労の始期とする雇用契約を、技能実習生の入国前に締結することとされている。
 
(ア) 実習実施機関との雇用契約に基づく講習の期間中
 
雇用契約に基づく講習の期間中の技能実習生は、実習実施機関との雇用契約に基づき当該活動を実施するものであって、労働基準法上の「労働者」に該当するものであり、労働基準関係法令が適用されること。
 
(イ) 雇用契約に基づかない講習の期間中
 
雇用契約に基づかない講習の期間中の技能実習生は、外国にあるその所属機関からの出張の状態にあるとされ、当該講習の期間中に技能実習生を製品生産業務等に従事させることは認められていない。
 
このため、当該講習の期間中の技能実習生は、外国にある事業場に所属する労働者であるものの、その時点では我が国の実習実施機関との雇用契約の効力が未だ発生しておらず、また、実習実施機関からの指揮監督を受けず、労務の対償としての報酬を受けないこと等から、その限りにおいて、我が国の労働基準法上の「労働者」には該当しないものであること。
 
(2) 技能等修得活動の期間中
 
ア 団体監理型
 
団体監理型において、監理団体の実施する講習の終了後、技能等修得活動中の技能実習生については、実習実施機関との雇用契約に基づき当該活動を実施するものであって、労働基準法上の「労働者」に該当するものであり、労働基準関係法令が適用されること。
 
イ 企業単独型
 
企業単独型において、技能等修得活動中の技能実習生については、実習実施機関との雇用契約に基づき当該活動を実施するものであって、労働基準法上の「労働者」に該当するものであり、労働基準関係法令が適用されること。
 
(3) 雇用契約に基づかない講習の期間中に業務が行われた場合
 
労働基準法上の「労働者」であるかどうかは、事業に「使用される」者であるか否か、その対償として「賃金」が支払われるか否かによって判断されるものであるが、実習実施機関又は監理団体が、雇用契約に基づかない講習の期間中に、技能実習生を座学ではなく実際の業務に従事させた場合には、一般に、実態として当該技能実習生は実習実施機関又は監理団体の指揮監督下にあるものと認められ、上記(1)のア及びイ(イ)にかかわらず、労働基準法上の「労働者」に該当すると考えられること。
 
2 技能実習2号について
 
技能実習2号の技能実習生については、実習実施機関との雇用契約に基づき当該活動を実施するものであって、労働基準法上の「労働者」に該当するものであり、労働基準関係法令が適用されること。
 
第3 技能実習生の労働条件等の確保
 
技能実習生の適正な労働条件及び安全衛生の確保に当たっては、特に以下の点に留意すること。
 
1 中間搾取
 
監理団体の代表者、その役員等が、実習実施機関に対し、監理団体名義の銀行口座や監理団体が管理する技能実習生名義の銀行口座に賃金を振り込ませ、これを引き出す等して当該賃金を不当に利得するようなことは、業として他人の就業に介入して利益を得るものであって、労働基準法第6条が禁止する中間搾取に該当すること。
 
2 労働条件の明示
 
技能実習生に対しては、労働基準法第15条に基づき、本人が理解できるよう労働条件の内容を明らかにした書面を交付しなければならないこと。
 
また、雇用契約が更新される場合には、更新に際し、改めて労働条件を明示しなければならないこと。
 
なお、上記第2の1(1)のとおり、実習実施機関と技能実習生との間には入国前に雇用契約が締結されており、出入国管理機関における入国審査の際に、雇用契約書や労働条件を技能実習生が理解したことを証する文書等を提出することとされていること。
 
3 強制貯金の禁止
 
使用者は、技能実習生に対し、労働契約に付随して貯蓄金を管理する契約をしてはならないこと。ここでいう貯蓄金の管理には、使用者が受け入れた技能実習生の預金を技能実習生個人ごとの名義で金融機関に預け入れ、その通帳、印鑑を使用者が保管することが含まれること。
 
なお、法務省が策定した「技能実習生の入国・在留管理に関する指針(平成21年12月)」(以下「法務省指針」という。)においては、技能実習生からの要望があったとしても通帳等を預かるべきではないとされていること。
 
4 賃金
 
(1) 賃金の控除等
 
賃金は、通貨で、実習実施機関から直接技能実習生に、その全額を、毎月一回以上、一定期日に支払わなければならないこと。
 
特に、賃金の控除については、法令に別段の定めがある場合及び事理明白なものについて法定の労使協定を締結した場合にのみ認められるものであること。
 
すなわち、実習実施機関が宿泊施設や食事を提供する場合に、その費用を労使協定に基づき控除することは認められるが、労使協定を締結していたとしても、「管理費」の名目でその具体的な使途が明らかにされない等、使途が不明であるものや、一部の使途は明らかであるが控除額の合計が実際に必要な費用に比して均衡を欠くもの等は事理明白といえず、これを控除した場合には労働基準法第24条違反となること。
 
なお、法務省令及び法務省指針において、技能実習終了時の帰国旅費や、監理団体が講習の実施に要する会場費や監査の実施に要する交通費等の監理に要する費用は、実習実施機関又は監理団体が負担することとされており、これらを技能実習生に直接又は間接に負担させてはならないものとされていること。
 
(2) 最低賃金
 
使用者は、技能実習生に対し、最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないこと。
 
技能実習制度は、現在の技術又は技能のレベルを向上させることを目的として創設された制度であり、技能実習生は当該業務に一定の経験を有しているものであるため、技能実習生は、特定(産業別)最低賃金の適用が除外されている「雇入れ後一定期間未満の者であって、技能習得中のもの」に該当しないものであること。
 
5 労働時間
 
(1) 労働時間の取扱い
 
技能実習生は、技能実習計画に沿って、雇用契約に基づき業務に従事しながら技能等を修得するものであるので、当該技能等の修得活動時間は、当然に労働時間に該当すること。
 
さらに、講習を雇用契約に基づき実施することとしている場合には、当該講習時間は労働時間に該当すること。また、入国当初の講習を雇用契約に基づかずに実施する場合であっても、当該講習の終了後に中間講習、修了講習等を別途義務付けるときには、当該義務付けられた講習時間は労働時間に該当すること。
 
(2) 時間外・休日労働
 
時間外・休日労働は時間外・休日労働協定届の範囲を超えて行わせてはならず、また、これらに対しては法定の率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないこと。時間外労働を「内職」と称して行わせ、これに対する報酬を非常に低額なものとし労働基準法第37条に定める計算による金額を下回る場合には、同法違反となること。
 
なお、入管法上、「内職」を技能実習生に行わせることは認められていないこと。
 
(3) 適用除外
 
労働基準法第4章に定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、農業又は畜産、養蚕、水産の事業に従事する労働者については適用されないが、これらの事業においても、深夜業及び年次有給休暇に関する規定は適用されること。
 
なお、労働時間等に関する規定が適用されない労働者についても、雇用契約において時間外・休日割増賃金を支払う旨を定めた場合には、当該契約に基づきこれらの賃金が支払われなければならないこと。
 
6 解雇
 
技能実習生は、技能実習期間に限りがあるため有期労働契約により雇用されている場合が一般的であるが、有期労働契約により雇用されている技能実習生については、労働契約法第17条第1項に基づき、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間中に解雇することはできないこと。
 
さらに、技能実習制度は、一定期間の技能実習の実施により開発途上国等への技能移転を図ることを目的としていることからも、実習実施機関は、予定された技能実習期間中の技能実習生の雇用の確保及び技能実習の継続に最大限努める必要があること。
 
なお、法務省令及び法務省指針において、実習実施機関の倒産や不正行為認定等により技能実習の継続が不可能となった場合にあっては、実習実施機関又はその監理団体は、その旨を出入国管理機関に申し出るとともに、財団法人国際研修協力機構(以下「JITCO」という。)等関係機関の協力・指導を受けるなどして新たな実習実施機関を探す必要があるとされていること。
 
7 寄宿舎
 
法務省令において、監理団体又は実習実施機関は、技能実習生に対して適切な宿泊施設を確保するものとされており、当該宿泊施設が事業の附属寄宿舎に該当する場合には、労働基準法第10章に定める措置を講ずる必要があること。
 
特に、事業附属寄宿舎規程第4条又は建設業附属寄宿舎規程第5条に基づき、外出又は外泊について使用者の承認を受けさせることや、共同の利益を害する場所及び時間を除き面会の自由を制限すること等の行為は、してはならないこと。
 
8 安全衛生教育
 
技能実習生についても、労働安全衛生法第59条に基づく雇入時等の教育を実施するとともに、危険有害業務に従事させる場合には、特別教育を実施する必要があること。
 
また、当該教育を実施するに当たっては、技能実習生がその教育内容を理解できる方法により行う必要があること。特に、技能実習生に使用させる機械設備、安全装置又は保護具の使用方法等が確実に理解されるよう留意すること。
 
9 就業制限
 
技能実習生を、フォークリフトの運転等の労働安全衛生法第61条に定める就業制限業務に従事させる場合には、同条の規定に基づき、免許の取得、技能講習の修了等の資格が必要であること。
 
10 健康診断の実施等
 
技能実習生についても、労働安全衛生法第66条等に基づき、雇入時の健康診断、定期健康診断、特殊健康診断を行うとともに、その結果必要と認められるときは事後措置を実施する必要があること。
 
11 労働者災害補償保険等
 
実習実施機関が暫定任意適用事業に該当する場合を除き、技能実習生に対しては、労働者災害補償保険が強制適用されることはいうまでもないが、法務省令において、労働者災害補償保険の暫定任意適用事業であっても、技能実習生を受け入れる場合には、労働者災害補償保険に係る保険関係の成立又はこれに類する措置を講じる必要があるとされていること。
 
雇用保険についても、技能実習生に対しては、通常の労働者と同様に適用されること。
 
第4 実習実施機関に対する指導等
 
実習実施機関に対しては、労働基準関係法令、本通達及び「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(平成19年厚生労働省告示第276号)の内容について、周知啓発に努めるとともに、労働基準関係法令上問題があると考えられる事業場については、重点的に監督指導を実施するなどにより、労働基準関係法令の遵守徹底を図ること。重大又は悪質な事案については、司法処分を含め厳正に対処すること。
 
また、監理団体は、自らが労働基準関係法令を遵守しなければならないとともに、関係法令にのっとった適正な技能実習が実施されるよう実習実施機関を監理するものとされていることを踏まえ、監理団体に対しても、労働基準関係法令の内容等について、機会をとらえて周知啓発を図るほか、必要に応じ、技能実習生の法定労働条件の確保について、監理団体においても実習実施機関に対して適切に指導するよう要請等を行うこと。
 
第5 関係機関との連携
 
1 出入国管理機関との連携
 
労働基準監督機関においては、技能実習生の法定労働条件の履行確保を図るため、出入国管理機関との相互通報制度に基づく通報を徹底する等、同機関との適切な連携に努めること。
 
2 JITCOとの連携
 
JITCOにおいては、技能実習制度の円滑かつ適正な実施を図るため、実習実施機関及び監理団体に対する指導や、母国語による技能実習生からの相談対応等を行っているところである。
 
労働基準監督機関においては、必要に応じJITCOと連携して各種の情報を収集し、これを上記第4の指導等に当たって活用すること。


 看護師等労働者
 平成23年6月17日基発0617第2号


 平成22年6月に閣議決定された「新成長戦略」において、医療・介護・健康関連産業は、「日本の成長牽引産業」として位置づけられるとともに、質の高い医療・介護サービスを安定的に提供できる体制を整備することとされている。

 
 しかしながら、保健師、助産師、看護師及び准看護師(以下「看護師等」という。)については、夜勤を含む交代制勤務等により、厳しい勤務環境に置かれている者も多く、「新成長戦略」に掲げた戦略を実現するためには、必要な人材の確保を図りながら、看護師等が健康で安心して働ける環境を整備し、「雇用の質」を高めていくことが喫緊の課題である。
 
 このため、本省では、「看護師等の『雇用の質』の向上に関する省内プロジェクトチーム」を設置して、必要な施策の検討を行い、このほど、今後の対応を含め、検討結果を取りまとめた。
 
 下記の第2の1の基本的な考え方に示したとおり、看護師等の勤務環境の改善を図り、看護業務が「就業先として選ばれ、健康で生きがいを持って能力を発揮し続けられる職業」となることを進めるためには、医療行政と労働行政が共通認識を持ち、関係者がそれぞれの立場で、勤務環境の改善等に向けて可能なものから取り組んでいく必要がある。厚生労働省としては、関係団体との密接な連携の下、医療関係者の間で既に進められている主体的な取組の幅広い展開に向けた支援を行うとともに、従来から取り組んできた政策について、より効果的な促進等に取り組む必要がある。
 
 貴職におかれても、地域の実情を考慮の上、下記の第2の2の平成23年度の取組に示した事項を中心に、看護師等の「雇用の質」の向上に向けた取組について、効果的かつ着実な実施を図られたい。
 
 なお、当該取組を進めていくに当たっては、医療行政と労働行政が協働し、看護師等の「雇用の質」の向上に向けた取組の推進体制を地域において構築することが必要かつ有効であることから、各局においては、労働基準部、職業安定部及び雇用均等室が相互に連携を図るとともに、都道府県や地域の関係団体等と協力し、地域における推進体制を構築するよう併せてお願いする。
 
 なお、本件については、別紙のとおり都道府県知事及び関係団体に対し協力を依頼していることを申し添える。
 
 記
 
第1 看護師等の勤務環境等の現状・課題等(要点)
 
1 就業状況
 
平成21年において、看護師等の就業者数は、実人員ベースで約143万4千人となっており、このうち病院(病床数20床以上の施設)で約89万2千人、診療所(19床以下の施設)で約30万4千人となっている。新規資格取得者は約4万6千人となっており、離職者数は約12万5千人と推計される。
 
看護師等が挙げる退職理由(退職希望の理由を含む。)の上位には、結婚・出産・育児等など生活上の理由や、超過勤務が多い・休暇がとれない・とりづらいなど業務の過重性に関する理由が含まれている。
 
また、看護師等の資格を有しながら就業していない者(潜在看護師等)が多数に上るが、看護師等については、一旦就業を中断すると、医療技術の進歩に対する不安等から、再就業が円滑に進まない傾向があるとの指摘もなされていることから、潜在看護師等の再就業の促進はもとより、現に就業している看護師等の定着の促進及び離職の防止に一層重点を置いた対策を進めることが課題であると言える。
 
特に、その多くが夜勤を含む交代制を伴う勤務を行っている病院(病棟)勤務の看護師等については、30代以降でその割合が著しく低下している現状があることにかんがみ、病院での重点的な取組が求められる。
 
2 労働時間等
 
看護師等の労働時間、休日、休暇等(以下「労働時間等」という。)については、看護業務の特性により、時間帯によって必要な人員が異なることに加え、多くの場合に夜勤を含むローテーションによる交代制勤務が避けられないこと等の事情がある。
 
交代制勤務においては、所定時間外労働の発生と相まって、十分な勤務間隔(インターバル)の確保が難しいことが指摘されており、また、二交代制勤務においては、夜勤の勤務時間が長時間となっているとの調査結果もある。
 
看護師等の勤務環境は、診療科、地域等により一様ではないが、医療従事者は日々患者の生命に関わる仕事に携わっていることから、交代制勤務等に伴う負担をできる限り軽減することにより心身の健康を確保することが求められる。これは、医療安全の確保の観点からも重要である。
 
看護師等の労働時間等の管理については、各病院等の事情を踏まえつつ、診療報酬の算定を含めた多岐にわたる事項を考慮する必要があり、一般的な労働者の労働時間等の管理に比べ、高度な労務管理が要請される。
 
しかしながら、従来、シフト表の作成を始めとする日常の労働時間等の管理の在り方が十分に組織化・体系化されておらず、各看護師長等の経験に依存している場合もあるとの指摘がある。
 
こうした場合、まずは、病院等の内部において、労務管理の視点の重要性について十分に認識を共有し、労働時間等の管理体制を確立することにより、個々の看護師等の労働時間等に関する適正な把握及び管理を進める必要がある。その上で、労使双方が協力し、労働時間等の設定の改善及びこれを通じた交代制勤務の負担軽減に向けて、それぞれの現場の実態に即した取組を主体的に進めることが必要である。
 
これに加え、健康に不安を感じている看護師等が多いこと等にかんがみ、病院等において、メンタルヘルス対策を含めた看護師等の健康保持に向けた取組を推進することも重要である。
 
3 業務の効率性等
 
近年、医療の高度化や患者・家族の医療への主体的な参画が進展する中で、病院内の各種委員会活動が頻繁となるとともに、医療関係記録の作成も増加し続けている。
 
このため、病院等において、看護師等の業務を一層効率化する観点から、業務の見直し等の取組等を支援し、働きやすい職場環境を整備していく必要がある。
 
4 多様な働き方
 
健康問題とともに育児等との両立の困難さが離職等の大きな要因の一つとなっていること等を踏まえ、看護師等の離職を防止するとともに、再就業を促進するため、ワーク・ライフ・バランスに配慮した多様な働き方(短時間正規雇用、出退勤時間の柔軟化、夜勤を伴わない就業区分の導入等)を可能とする環境を整備することも重要である。
 
病院等において多様な働き方を導入しようとする場合に、障害となる要因として、労務管理を担当する者(看護師長等)に多元的な労務管理を行う上で前提となる知識が不足していること等が指摘されている。また、一部の病院等で取り組まれている好事例が他の病院等において必ずしも知られていないことなども、導入が進まない要因と考えられる。
 
このため、労務管理を担当する者に対し、各制度を導入する際の課題とその解決策について、先行事例の普及啓発等により、多様な働き方の導入を推進するための環境整備を図っていく必要がある。
 
また、病院内保育所の運営や施設整備に対する補助、短時間正規雇用等の多様な勤務形態導入の支援等、医療現場のニーズに応じた支援施策の強化を図っていく必要がある。
 
5 キャリア形成
 
病院等において、看護師等の資質・専門性の向上を図るための研修の実施等、継続的なキャリア形成支援を行うことは、看護業務を専門職として、より働きがいのある魅力的な職業とすることはもとより、医療機関等にとっても、量のみならず質も含めた人材の確保に資するものと考えられる。
 
第2 当面の対応
 
1 基本的な考え方
 
高齢化の進展による医療需要の増大に対応し、持続可能で質の高い医療提供体制を確保するため、看護師等の勤務環境の改善等を図ることにより、看護業務が「就業先として選ばれ、健康で生きがいを持って能力を発揮し続けられる職業」となることが求められ、それなくして、持続可能な医療提供体制や医療安全の確保は望めない。
 
この点について、医療現場とともに、医療行政と労働行政が共通認識を持ち、それを国民全体に広げていくことがまず重要である。その上で、関係者がそれぞれの立場で、整合的に看護師等の勤務環境の改善等に向けて可能なものから取り組んでいく必要がある。
 
特に、その多くが夜勤を含む交代制を伴う勤務を行っている病院勤務の看護師等については、重点的な取組が求められる。
 
医療機関等においては、看護師等の確保に向けた勤務環境の改善等について、既に様々な主体的な取組が進められてきている。厚生労働行政としては、関係団体との密接な連携の下、こうした医療界の取組の幅広い展開や効果的な促進等に取り組む。
 
具体的な取組としては、“魅力ある職業”のための「職場づくり」、「人づくり」、「ネットワークづくり」を推進することとする。
 
まず、「職場づくり」として、勤務環境の改善を図るため、①労働時間等の改善、②看護業務の効率化、③多様な働き方が可能な環境の整備、の3つの視点が重要である。
 
すなわち、夜勤や交代制勤務は、看護師等の職業の特性から生ずる避けがたい要素であるが、医療現場の実情に即した段階的・漸進的なアプローチを基本とし、業務の効率化等を進めつつ、負担を少なくする工夫を行うなどの改善を図り(下記2(1)①・②)、少子化により労働力の供給制約が強まる中、看護師等が、子育て期や高齢期を含めできる限り就業を中断することなく活躍できるようにする(下記2(1)③)必要がある。
 
次に、「人づくり」として、質と量の両面で人材確保を図る観点から、看護師等が医療の高度化に対応するとともに、将来のキャリアの展望を持ち、希望を持って働き続けられるようにするため、体系的な教育体制や、能力に応じた処遇システムの整備等を図る(下記2(2)①)必要がある。また、人材の採用に苦慮している医療機関等も多く見られ、それが勤務環境の改善が進まない大きな原因ともなっていることから、人材採用の円滑化等、就業の促進(下記2(2)②)が必要である。
 
最後に、「ネットワークづくり」として、取組の推進体制を整備するため、医療行政、労働行政及び関係者の協働を地域レベルも含めて深化させることが求められている。
 
以上の基本的な考え方に従い、以下のとおり、共同の取組を、平成23年度から速やかに開始し、フォローアップを行いながら、24年度以降も継続実施する。
 
なお、特に平成23年度については、被災地支援への優先的かつ緊急的な取組の必要性を十分念頭に置き、可能なところから着実な推進を図っていくものとする。
 
2 平成23年度の取組
 
(1) 勤務環境の改善(職場づくり)
 
① 労働時間等の改善
 
イ 医療機関等における取組
 
医療機関等で労務管理を行う責任者の立場にある者(医療機関等の実情に応じ、院長、事務長、看護部長、看護師長等)を「労働時間管理者」として明確化した上で、労働時間の適正な管理はもとより、現場の実情に応じた労働時間等の設定改善策の検討、推進等を図る。
 
※ 労働時間等の設定改善とは、労働時間、休日数、年次有給休暇を与える時季その他の労働時間等に関する事項について、労働者の健康と生活に配慮するとともに、多様な働き方に対応したものへ改善することをいう。看護師等に関する具体的な改善策としては、交代制の運用面の工夫、所定時間外労働の削減等が考えられる。
 
このような取組を行うことにより、「複数を主として月八回以内の夜勤体制」を基本としつつ、十分な勤務間隔(インターバル)の確保を含め、より負担の少ない交代制に向けた取組を着実に進めることが望まれる。
 
このため、例えば、管理的立場にある医師や看護師等に対する教育研修等の機会において、労務管理や労働関係法令等に関する内容の充実を図ることなどにより、労働時間等の設定改善への積極的な取組を促すことが適当である。
 
さらに、医療機関等においては、労働時間等の設定改善に加え、メンタルヘルス不調の予防等の観点を含む健康確保も重要であり、病院で健康管理を担う産業医に対する研修会等の取組の充実も望まれる。
 
ロ 行政における取組
 
行政としては、医療現場の労使の主体的な取組を促進する観点から、労働基準法令の遵守等に関する研修会の開催及び労働時間設定改善コンサルタントによる支援等を実施する。
 
なお、これらの取組は、労働時間等労働条件の確保に関する従来の主な手法である法違反に対する監督指導とは異なり、労働者の健康と生活への配慮や、多様な働き方への対応に資する改善を側面から援助する手法であるが、医療機関等の業務の特性を踏まえ、現場の実情に即した労務管理について支援を行う必要があることから、関係職員等は、業務を適切に遂行するための研鑽に努めることとし、厚生労働本省は、都道府県労働局に対し必要な援助を行うものとする。
 
(イ) 労働基準法令の遵守等に関する研修会の開催
 
都道府県労働局労働基準部は、職業安定部及び雇用均等室並びに都道府県(保健福祉担当部局等)と連携し、関係団体等の協力も得ながら、以下により研修会を開催する。
 
(i) 実施時期・地域
 
平成23年度後半に各都道府県において実施する。(被災地への緊急的対応の必要性に照らし、実施が困難な県を除く。)
 
(ii) 対象者
 
医療機関等において労務管理を担う責任者(院長、事務長、看護部長、看護師長等)
 
(iii) 研修の内容
 
研修は、以下を参考にしつつ、各地域の実情を踏まえた内容とする。
 
・「労働時間管理者」の明確化と現場の実情に応じた取組の奨励
 
・より負担の少ない交代制勤務についての好事例
 
・仕事と家庭の両立支援に関する制度、短時間正規雇用の導入に係る支援、多様な働き方の導入についての好事例等
 
・労働基準関係法令等の内容
 
・メンタルヘルス対策の推進
 
・ハローワークの活用、看護師等を確保するための効果的な求人の方法等
 
(ロ) 労働時間設定改善コンサルタントによる支援
 
都道府県労働局に配置されている労働時間設定改善コンサルタントを活用し、以下により個別の医療機関等への訪問等を実施する。
 
(i) 実施時期・地域
 
平成23年度においては、東京・大阪・愛知の各労働局において、先行的に実施する。
 
(ii) 訪問等の実施
 
労働時間設定改善コンサルタントが、医療機関等を訪問し、看護師等の労働時間等の設定改善に向けた課題や好事例等についてヒアリングによる現状把握を行う。
 
これを踏まえつつ、医療現場の実情に即した労働時間面の改善に係る知見の収集・分析を行った上で、各医療機関等の状況に応じた対応策を助言するなどの支援を行う。
 
(ハ) 健康の確保
 
上記のほか、メンタルヘルス対策を含む職場における心身の健康の確保に関し、医療機関等において、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」や「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づき、衛生管理者、産業医、衛生委員会等の活動を通じ、職場の実態に即した形で取組が進められるよう、必要に応じ支援を行う。
 
② 看護業務の効率化
 
イ 医療機関等における取組
 
看護業務の効率化については、これまでも申送りの改善や電子カルテの導入など各医療機関等において取り組まれてきたところである。提供される医療サービスの内容も多様なこともあって、その進展状況も様々であり、今後とも各医療機関等の状況に応じた看護業務の効率化を図ることが望まれる。
 
また、「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供する」というチーム医療を推進していく中で、従来看護師等が行っていた業務に関しても、他職種との連携・補完を進めていく必要がある。特に、医療関係事務に関する処理能力の高い事務職員(医療クラーク)の導入や、看護業務等を補助する看護補助者の活用について検討すべきである。
 
ロ 行政における取組
 
厚生労働省においては、都道府県の地域の実情に応じた効果的・効率的な看護師等確保対策に関する特別事業について助成してきたところであるが、今後も、こうした事業を通して、看護業務の効率化の観点での各医療機関等の取組やそうした取組に関する情報の共有を推進していくこととする。
 
また、各施設における就業環境改善の取組については、病院管理者及び看護管理者等のマネジメント能力の向上や労務管理に関する教育が不可欠であり、既存の事業を活用した管理者研修等の取組について積極的に支援していくことが求められている。
 
チーム医療における他職種との連携や、医療クラークの導入や看護補助者の効果的な活用については、実践的事例集の普及等を図るべきである。
 
③ 多様な働き方が可能な環境の整備
 
イ 医療機関等における取組
 
看護師等の離職を防止し、子育て期の看護師等も含めた様々な人材の活用を図るためには、医療機関等において、短時間正規雇用の導入、出退勤時間の柔軟化、夜勤を伴わない就業区分の導入、院内保育所の設置等、個人の置かれた状況に応じた多様な働き方を支える制度整備と利用しやすい職場風土作りが求められる。
 
また、多様な働き方を支える制度整備等に際しては、夜勤等の負担について不公平感が生じないよう工夫すること、また、各人の置かれた状況に配慮しながら、夜勤等の負担を職場内で適切に分かち合いサポートし合う風土を培うこと等が重要である。
 
なお、短時間勤務等の導入が、これらの制度を利用しない者の負担増にならないよう、多様な働き方の導入に当たっては、必要な人員の確保にも留意する必要がある。
 
ロ 行政における取組
 
行政としては、多様な働き方が可能な環境整備に向けて、医療機関の取組に対する支援を行う。
 
具体的には、労働時間設定改善コンサルタントによる助言等のほか、研修会等の機会を通じて、医療機関等に対し、両立支援に関する制度の周知啓発を図るとともに、短時間正規雇用の導入を促進する。また、これらの制度を含む多様な働き方の導入について、参考となる取組例を収集し、好事例等の普及に努める。
 
これまでも、国は、子どもを持つ看護師等、女性医師を始めとする医療従事者の離職防止及び再就業を促進するため、医療機関に勤務する職員の乳幼児や児童の保育を行う事業に対する支援を実施してきたところである。
 
多様な働き方が実現できるよう、今後もこうした取組の強化を図っていく必要があるものと考えており、平成23年度予算においては、病院内保育所の運営等に対する支援として、新たに休日保育加算を行っている。
 
(2) 人材の育成・確保(人づくり)
 
① 継続的なキャリア形成と資質の向上
 
イ 医療機関等における取組
 
看護師等は、勤務する医療機関等において、それぞれの就労経験に応じたキャリア形成を積み重ねていくことが期待される。
 
免許取得後初めて就労する看護師等(新人看護職員)については、各医療機関等において、後述の新人看護職員研修ガイドラインに基づいた研修を実施する等、研修体制、研修内容の充実に努めることによって、その職場定着を促すよう努めることが期待される。
 
さらに、医療機関等に専門性の高い看護師を積極的に配置し、活用することは、高度化する医療サービスの安全な提供に重要であるとともに、看護師等のキャリア形成にも資するものである。
 
ロ 行政における取組
 
看護師等に対しては、その資質の向上を図るための様々な施策が実施されており、それらは結果的に看護師等のキャリア形成の促進につながるものと考えられる。
 
(イ) 新人看護職員研修の支援拡充
 
厚生労働省においては、平成22年度から新人看護職員研修事業を創設し、①医療機関等が実施する新人看護職員研修ガイドラインに沿った新人看護職員研修、②都道府県が実施する医療機関等の研修責任者に対する研修、③新人看護職員研修の実施が困難な施設に対して都道府県が実施するアドバイザー派遣等に対する支援を実施している。
 
平成23年度予算においては、新たに、新人保健師や新人助産師の研修や教育担当者、実地指導者を対象とした研修に対する支援を行い、新人看護職員研修の充実を図ることとしている。
 
(ロ) 専門性の高い看護師等の養成支援
 
(2)①イのとおり、厚生労働省においては、平成15年から、がん性疼痛や救急看護などの看護分野において専門性の高い看護師を育成するための研修の実施に対する補助等、看護師等の資質向上に向けた様々な施策を実施しており、平成23年度においても一層の強化を図っていくこととしている。
 
② 就業の促進
 
イ 医療機関等における取組
 
医療機関等にとって、医療サービスの提供に必要な人材を確保し続けることは、極めて重要な課題である。このため、各医療機関等においては、看護師等の募集に当たって、どのような医療現場へ就労を求めるのか求職者に十分理解されるよう、効果的な情報提供(医療機関等の理念、地域での役割、人材育成方針など)や職場見学の機会の設定などの取組に努めることが望まれる。
 
また、医療機関等においては、後述の潜在看護職員復職研修事業による講習会の技術実習等の運営に積極的に協力をすることにより、潜在看護師等の再就業支援を促進するとともに、潜在看護師等に対し、現場での看護を通して看護の魅力を再発見する機会を提供することも期待される。
 
ロ 行政における取組
 
第七次看護職員需給見通しに沿った看護師等の養成を促進するため、厚生労働省においては、引き続き看護師等学校養成所の運営費補助を行うほか、再就業を支援するため、以下の取組を行う。
 
(イ) 潜在看護職員等復職研修事業の実施
 
潜在看護師等の再就業支援については、各都道府県ナースセンター等において、復職に向けた講習会が実施されているところである。
 
厚生労働省においては、再就業の一層の促進を図るため、平成22年度から「潜在看護職員復職研修事業」を創設し、再就業を希望する看護師等に対し、最新の看護に関する知識及び技術に関する研修の実施について支援している。
 
(ロ) ハローワークの利用促進等
 
ハローワークでは、離職後の看護師等や潜在看護師等に対して、求職申込み等来所時を活用し、「福祉人材コーナー」での支援内容等の積極的な周知及び更なる利用促進を図ることにより、それら求職者の就業を促進していく。
 
また、「福祉人材コーナー」を中心に、きめ細かな職業相談・職業紹介、看護分野の求人情報の提供、ナースセンター等関係団体との連携により収集した研修情報の提供等を、積極的に行うことにより、支援の充実を図っていく。
 
一方、求人者に対しては、分かりやすい求人票の作成等求人充足に向けたコンサルティングや、求職者に対する求人情報の提供等を積極的に行い、求人充足支援の充実を図っていく。
 
さらに、労働基準法令の遵守等に関する研修会の開催時に、出席者(労働局(監督課・安定課)、都道府県(保健福祉担当部局等))が「福祉人材コーナー」を含むハローワークの取組内容に関する情報を共有し、あらゆる機会を捉えてその周知を図っていく。
 
(ハ) ナースセンターの役割等
 
ナースセンターについては、ハローワークにおける実績と比較すると職業紹介にまで至った件数は少ないものの、看護の有資格者によるきめ細かい相談を実施できることから、ハローワークを始め雇用関係部局とも連携した取組を進めることにより再就業支援の効果を一層増大させていくことが期待される。
 
(3) 地域における推進体制の整備(ネットワークづくり)
 
本プロジェクトチームでは、厚生労働本省の中で、医療行政と労働行政が垣根を越えて協働する体制を構築したが、こうした協働の枠組みは地域においても必要かつ有効なものと考えられる。
 
このため、都道府県労働局労働基準部は、職業安定部及び雇用均等室と連携しつつ、都道府県に加え、地域の実情に応じ、関係団体など地域の医療関係者の参加を求めて企画委員会を開催し、(1)①ロ(イ)の研修会の開催に向けた調整を行うとともに、関係者が協働して、地域の医療従事者の勤務環境の改善等に取り組む恒常的な連絡協議の場として活用する。
 
さらに、中長期的には、医療関係者のみならず、地域住民等の参画も図ることにより、医療についての国民の理解を深めるための仕組みとしても活用されることが考えられる。
 
なお、地域において、関係機関間の連絡協議のための既存の枠組みがある場合には、これによることとして差し支えないものとする。
 
また、東日本大震災の被災地域においては、被災者等に対する緊急的かつ優先的な対応の必要性にかんがみ、平成23年度は可能な範囲での取組を進める。
 
(4) その他
 
医療機関等においては、経営・管理層と現場スタッフとの間のコミュニケーションを密にする等を通じ、職場の人間関係の改善に努めるという視点をもって、上記の取組を進めることが重要である。
 
また、国民は誰もが病を得ることがあることから、医療機関等の受診に当たり、国民一人ひとりが、医療の公共的性格、医療従事者の勤務環境等への理解を深めることが望まれる。
 
第3 今後の課題と継続的な取組
 
1 今後の課題
 
本プロジェクトチームでは、医療機関職種の中で最大の人数を占めている看護師等を対象として検討を行った。一方、医師の勤務環境の厳しさについては、医療提供体制の根幹に関わる大きな問題として指摘されてきたところであり、チーム医療の観点からも、医療従事者全体の勤務環境の改善を図っていくことが求められている。これは、医師の不足・偏在の問題とも密接に関わるものであるが、今後、関係部局においては、可能なものについては医師等他職種への活用も図りつつ、第2の2に掲げる取組を推進しながら、医療現場での勤務環境の改善に向けた課題と対応に関する幅広い知見の収集及び分析に努めていくこととする。
 
また、中央社会保険医療協議会において、看護師等を含めた病院医療従事者の負担軽減策に関して、平成22年度診療報酬改定の結果を検証しつつ、医療従事者の勤務状況、病院内の役割分担、病院の長時間勤務に対する取組などを踏まえながら、次期診療報酬改定に向けて検討を行う。
 
2 平成24年度以降における取組の強化・継続
 
平成24年度以降においては、第2の2に掲げる平成23年度の取組の実施状況について、プロジェクトチームの構成部局等によるフォローアップを行うとともに、看護師等の業務負荷の状況についての継続的な把握、分析を行い、これを踏まえ、平成24年度以降も、関係部局が有機的に連携しつつ、有効な取組を強化・継続することとする(取組状況等については、厚生労働省ホームページ等による情報発信を行う。)。
 

(別紙1)
 
○看護師等の「雇用の質」の向上のための取組について
 
(平成23年6月17日)
 
(/医政発0617第1号/基発0617第1号/職発0617第1号/雇児発0617第3号/保発0617第1号/)
 
(各都道府県知事あて厚生労働省医政局長・労働基準局長・職業安定局長・雇用均等・児童家庭局長・保険局長通知)
 
平成22年6月に閣議決定された「新成長戦略」において、医療・介護・健康関連産業は、「日本の成長牽引産業」として位置づけられるとともに、質の高い医療・介護サービスを安定的に提供できる体制を整備することとされています。
 
しかしながら、保健師、助産師、看護師及び准看護師(以下「看護師等」という。)については、夜勤を含む交代制勤務等により、厳しい勤務環境に置かれている者も多く、「新成長戦略」に掲げた戦略を実現するためには、必要な人材の確保を図りながら、看護師等が健康で安心して働ける環境を整備し、「雇用の質」を高めていくことが喫緊の課題です。
 
このため、厚生労働省では、平成22年11月に「看護師等の『雇用の質』の向上に関する省内プロジェクトチーム」を設置し、看護師等の勤務環境や雇用管理の改善に関する検討を行ってきたところですが、このほど、今後の対応を含め、検討結果を取りまとめました。
 
下記の第2の1の基本的な考え方に示したとおり、看護師等の勤務環境の改善を図り、看護業務が「就業先として選ばれ、健康で生きがいを持って能力を発揮し続けられる職業」となることを進めるためには、医療行政と労働行政が共通認識を持ち、関係者がそれぞれの立場で、勤務環境の改善等に向けて可能なものから取り組んでいく必要があります。厚生労働省としては、平成23年度において、下記の第2の2に示した事項を中心に、関係団体との密接な連携の下、医療関係者の間で既に進められている主体的な取組の幅広い展開に向けた支援を行うとともに、従来から取り組んできた政策について、より効果的な促進等に取り組むこととしております。
 
貴職におかれましても、看護師等の「雇用の質」の向上に向けた取組について、御協力をお願いいたします。
 
なお、当該取組を進めていくに当たっては、医療行政と労働行政が協働し、看護師等の「雇用の質」の向上に向けた取組の推進体制を地域において構築することが必要かつ有効であることから、貴都道府県における医療関係部局と労働関係部局の十分な連携に御留意いただくとともに、都道府県労働局及び地域の関係団体等との連携にも御配意いただき、地域における推進体制の構築に積極的に参画していただくようお願い申し上げます。
 
また、本件については、別紙1のとおり都道府県労働局に指示するとともに、別紙2のとおり関係団体に協力を依頼しておりますので申し添えます。
 

 
第1 看護師等の勤務環境等の現状・課題等(要点)
 
1 就業状況
 
平成21年において、看護師等の就業者数は、実人員ベースで約143万4千人となっており、このうち病院(病床数20床以上の施設)で約89万2千人、診療所(19床以下の施設)で約30万4千人となっている。新規資格取得者は約4万6千人となっており、離職者数は約12万5千人と推計される。
 
看護師等が挙げる退職理由(退職希望の理由を含む。)の上位には、結婚・出産・育児など生活上の理由や、超過勤務が多い・休暇がとれない・とりづらいなど業務の過重性に関する理由が含まれている。
 
また、看護師等の資格を有しながら就業していない者(潜在看護師等)が多数に上るが、看護師等については、一旦就業を中断すると、医療技術の進歩に対する不安等から、再就業が円滑に進まない傾向があるとの指摘もなされていることから、潜在看護師等の再就業の促進はもとより、現に就業している看護師等の定着の促進及び離職の防止に一層重点を置いた対策を進めることが課題であると言える。
 
特に、その多くが夜勤を含む交代制を伴う勤務を行っている病院(病棟)勤務の看護師等については、30代以降でその割合が著しく低下している現状があることにかんがみ、病院での重点的な取組が求められる。
 
2 労働時間等
 
看護師等の労働時間、休日、休暇等(以下「労働時間等」という。)については、看護業務の特性により、時間帯によって必要な人員が異なることに加え、多くの場合に夜勤を含むローテーションによる交代制勤務が避けられないこと等の事情がある。
 
交代制勤務においては、所定時間外労働の発生と相まって、十分な勤務間隔(インターバル)の確保が難しいことが指摘されており、また、二交代制勤務においては、夜勤の勤務時間が長時間となっているとの調査結果もある。
 
看護師等の勤務環境は、診療科、地域等により一様ではないが、医療従事者は日々患者の生命に関わる仕事に携わっていることから、交代制勤務等に伴う負担をできる限り軽減することにより心身の健康を確保することが求められる。これは、医療安全の確保の観点からも重要である。
 
看護師等の労働時間等の管理については、各病院等の事情を踏まえつつ、診療報酬の算定を含めた多岐にわたる事項を考慮する必要があり、一般的な労働者の労働時間等の管理に比べ、高度な労務管理が要請される。
 
しかしながら、従来、シフト表の作成を始めとする日常の労働時間等の管理の在り方が十分に組織化・体系化されておらず、各看護師長等の経験に依存している場合もあるとの指摘がある。
 
こうした場合、まずは、病院等の内部において、労務管理の視点の重要性について十分に認識を共有し、労働時間等の管理体制を確立することにより、個々の看護師等の労働時間等に関する適正な把握及び管理を進める必要がある。その上で、労使双方が協力し、労働時間等の設定の改善及びこれを通じた交代制勤務の負担軽減に向けて、それぞれの現場の実態に即した取組を主体的に進めることが必要である。
 
これに加え、健康に不安を感じている看護師等が多いこと等にかんがみ、病院等において、メンタルヘルス対策を含めた看護師等の健康保持に向けた取組を推進することも重要である。
 
3 業務の効率性等
 
近年、医療の高度化や患者・家族の医療への主体的な参画が進展する中で、病院内の各種委員会活動が頻繁となるとともに、医療関係記録の作成も増加し続けている。
 
このため、病院等において、看護師等の業務を一層効率化する観点から、業務の見直し等の取組等を支援し、働きやすい職場環境を整備していく必要がある。
 
4 多様な働き方
 
健康問題とともに育児等との両立の困難さが離職等の大きな要因の一つとなっていること等を踏まえ、看護師等の離職を防止するとともに、再就業を促進するため、ワーク・ライフ・バランスに配慮した多様な働き方(短時間正規雇用、出退勤時間の柔軟化、夜勤を伴わない就業区分の導入等)を可能とする環境を整備することも重要である。
 
病院等において多様な働き方を導入しようとする場合に、障害となる要因として、労務管理を担当する者(看護師長等)に多元的な労務管理を行う上で前提となる知識が不足していること等が指摘されている。また、一部の病院等で取り組まれている好事例が他の病院等において必ずしも知られていないことなども、導入が進まない要因と考えられる。
 
このため、労務管理を担当する者に対し、各制度を導入する際の課題とその解決策について、先行事例の普及啓発等により、多様な働き方の導入を推進するための環境整備を図っていく必要がある。
 
また、病院内保育所の運営や施設整備に対する補助、短時間正規雇用等の多様な勤務形態導入の支援等、医療現場のニーズに応じた支援施策の強化を図っていく必要がある。
 
5 キャリア形成
 
病院等において、看護師等の資質・専門性の向上を図るための研修の実施等、継続的なキャリア形成支援を行うことは、看護業務を専門職として、より働きがいのある魅力的な職業とすることはもとより、医療機関等にとっても、量のみならず質も含めた人材の確保に資するものと考えられる。
 
第2 当面の対応
 
1 基本的な考え方
 
高齢化の進展による医療需要の増大に対応し、持続可能で質の高い医療提供体制を確保するため、看護師等の勤務環境の改善等を図ることにより、看護業務が「就業先として選ばれ、健康で生きがいを持って能力を発揮し続けられる職業」となることが求められ、それなくして、持続可能な医療提供体制や医療安全の確保は望めない。
 
この点について、医療現場とともに、医療行政と労働行政が共通認識を持ち、それを国民全体に広げていくことがまず重要である。その上で、関係者がそれぞれの立場で、整合的に看護師等の勤務環境の改善等に向けて可能なものから取り組んでいく必要がある。
 
特に、その多くが夜勤を含む交代制を伴う勤務を行っている病院勤務の看護師等については、重点的な取組が求められる。
 
医療機関等においては、看護師等の確保に向けた勤務環境の改善等について、既に様々な主体的な取組が進められてきている。厚生労働行政としては、関係団体との密接な連携の下、こうした医療界の取組の幅広い展開や効果的な促進等に取り組む。
 
具体的な取組としては、“魅力ある職業”のための「職場づくり」、「人づくり」、「ネットワークづくり」を推進することとする。
 
まず、「職場づくり」として、勤務環境の改善を図るため、①労働時間等の改善、②看護業務の効率化、③多様な働き方が可能な環境の整備、の3つの視点が重要である。
 
すなわち、夜勤や交代制勤務は、看護師等の職業の特性から生ずる避けがたい要素であるが、医療現場の実情に即した段階的・漸進的なアプローチを基本とし、業務の効率化等を進めつつ、負担を少なくする工夫を行うなどの改善を図り(下記2(1)①・②)、少子化により労働力の供給制約が強まる中、看護師等が、子育て期や高齢期を含めできる限り就業を中断することなく活躍できるようにする(下記2(1)③)必要がある。
 
次に、「人づくり」として、質と量の両面で人材確保を図る観点から、看護師等が医療の高度化に対応するとともに、将来のキャリアの展望を持ち、希望を持って働き続けられるようにするため、体系的な教育体制や、能力に応じた処遇システムの整備等を図る(下記2(2)①)必要がある。また、人材の採用に苦慮している医療機関等も多く見られ、それが勤務環境の改善が進まない大きな原因ともなっていることから、人材採用の円滑化等、就業の促進(下記2(2)②)が必要である。
 
最後に、「ネットワークづくり」として、取組の推進体制を整備するため、医療行政、労働行政及び関係者の協働を地域レベルも含めて深化させることが求められている。
 
以上の基本的な考え方に従い、以下のとおり、共同の取組を、平成23年度から速やかに開始し、フォローアップを行いながら、24年度以降も継続実施する。
 
なお、特に平成23年度については、被災地支援への優先的かつ緊急的な取組の必要性を十分念頭に置き、可能なところから着実な推進を図っていくものとする。
 
2 平成23年度の取組
 
(1) 勤務環境の改善(職場づくり)
 
① 労働時間等の改善
 
イ 医療機関等における取組
 
医療機関等で労務管理を行う責任者の立場にある者(医療機関等の実情に応じ、院長、事務長、看護部長、看護師長等)を「労働時間管理者」として明確化した上で、労働時間の適正な管理はもとより、現場の実情に応じた労働時間等の設定改善策の検討、推進等を図る。
 
※ 労働時間等の設定改善とは、労働時間、休日数、年次有給休暇を与える時季その他の労働時間等に関する事項について、労働者の健康と生活に配慮するとともに、多様な働き方に対応したものへ改善することをいう。看護師等に関する具体的な改善策としては、交代制の運用面の工夫、所定時間外労働の削減等が考えられる。
 
このような取組を行うことにより、「複数を主として月八回以内の夜勤体制」を基本としつつ、十分な勤務間隔(インターバル)の確保を含め、より負担の少ない交代制に向けた取組を着実に進めることが望まれる。
 
このため、例えば、管理的立場にある医師や看護師等に対する教育研修等の機会において、労務管理や労働関係法令等に関する内容の充実を図ることなどにより、労働時間等の設定改善への積極的な取組を促すことが適当である。
 
さらに、医療機関等においては、労働時間等の設定改善に加え、メンタルヘルス不調の予防等の観点を含む健康確保も重要であり、病院で健康管理を担う産業医に対する研修会等の取組の充実も望まれる。
 
ロ 行政における取組
 
行政としては、医療現場の労使の主体的な取組を促進する観点から、労働基準法令の遵守等に関する研修会の開催及び労働時間設定改善コンサルタントによる支援等を実施する。
 
なお、これらの取組は、労働時間等労働条件の確保に関する従来の主な手法である法違反に対する監督指導とは異なり、労働者の健康と生活への配慮や、多様な働き方への対応に資する改善を側面から援助する手法であるが、医療機関等の業務の特性を踏まえ、現場の実情に即した労務管理について支援を行う必要があることから、関係職員等は、業務を適切に遂行するための研鑽に努めることとし、厚生労働本省は、都道府県労働局に対し必要な援助を行うものとする。
 
(イ) 労働基準法令の遵守等に関する研修会の開催
 
都道府県労働局労働基準部は、職業安定部及び雇用均等室並びに都道府県(保健福祉担当部局等)と連携し、関係団体等の協力も得ながら、以下により研修会を開催する。
 
(i) 実施時期・地域
 
平成23年度後半に各都道府県において実施する。(被災地への緊急的対応の必要性に照らし、実施が困難な県を除く。)
 
(ii) 対象者
 
医療機関等において労務管理を担う責任者(院長、事務長、看護部長、看護師長等)
 
(iii) 研修の内容
 
研修は、以下を参考にしつつ、各地域の実情を踏まえた内容とする。
 
・「労働時間管理者」の明確化と現場の実情に応じた取組の奨励
 
・より負担の少ない交代制勤務についての好事例
 
・仕事と家庭の両立支援に関する制度、短時間正規雇用の導入に係る支援、多様な働き方の導入についての好事例等
 
・労働基準関係法令等の内容
 
・メンタルヘルス対策の推進
 
・ハローワークの活用、看護師等を確保するための効果的な求人の方法等
 
(ロ) 労働時間設定改善コンサルタントによる支援
 
都道府県労働局に配置されている労働時間設定改善コンサルタントを活用し、以下により個別の医療機関等への訪問等を実施する。
 
(i) 実施時期・地域
 
平成23年度においては、東京・大阪・愛知の各労働局において、先行的に実施する。
 
(ii) 訪問等の実施
 
労働時間設定改善コンサルタントが、医療機関等を訪問し、看護師等の労働時間等の設定改善に向けた課題や好事例等についてヒアリングによる現状把握を行う。
 
これを踏まえつつ、医療現場の実情に即した労働時間面の改善に係る知見の収集・分析を行った上で、各医療機関等の状況に応じた対応策を助言するなどの支援を行う。
 
(ハ) 健康の確保
 
上記のほか、メンタルヘルス対策を含む職場における心身の健康の確保に関し、医療機関等において、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」や「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づき、衛生管理者、産業医、衛生委員会等の活動を通じ、職場の実態に即した形で取組が進められるよう、必要に応じ支援を行う。
 
② 看護業務の効率化
 
イ 医療機関等における取組
 
看護業務の効率化については、これまでも申送りの改善や電子カルテの導入など各医療機関等において取り組まれてきたところである。提供される医療サービスの内容も多様なこともあって、その進展状況も様々であり、今後とも各医療機関等の状況に応じた看護業務の効率化を図ることが望まれる。
 
また、「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供する」というチーム医療を推進していく中で、従来看護師等が行っていた業務に関しても、他職種との連携・補完を進めていく必要がある。特に、医療関係事務に関する処理能力の高い事務職員(医療クラーク)の導入や、看護業務等を補助する看護補助者の活用について検討すべきである。
 
ロ 行政における取組
 
厚生労働省においては、都道府県の地域の実情に応じた効果的・効率的な看護師等確保対策に関する特別事業について助成してきたところであるが、今後も、こうした事業を通して、看護業務の効率化の観点での各医療機関等の取組やそうした取組に関する情報の共有を推進していくこととする。
 
また、各施設における就業環境改善の取組については、病院管理者及び看護管理者等のマネジメント能力の向上や労務管理に関する教育が不可欠であり、既存の事業を活用した管理者研修等の取組について積極的に支援していくことが求められている。
 
チーム医療における他職種との連携や、医療クラークの導入や看護補助者の効果的な活用については、実践的事例集の普及等を図るべきである。
 
③ 多様な働き方が可能な環境の整備
 
イ 医療機関等における取組
 
看護師等の離職を防止し、子育て期の看護師等も含めた様々な人材の活用を図るためには、医療機関等において、短時間正規雇用の導入、出退勤時間の柔軟化、夜勤を伴わない就業区分の導入、院内保育所の設置等、個人の置かれた状況に応じた多様な働き方を支える制度整備と利用しやすい職場風土作りが求められる。
 
また、多様な働き方を支える制度整備等に際しては、夜勤等の負担について不公平感が生じないよう工夫すること、また、各人の置かれた状況に配慮しながら、夜勤等の負担を職場内で適切に分かち合いサポートし合う風土を培うこと等が重要である。
 
なお、短時間勤務等の導入が、これらの制度を利用しない者の負担増にならないよう、多様な働き方の導入に当たっては、必要な人員の確保にも留意する必要がある。
 
ロ 行政における取組
 
行政としては、多様な働き方が可能な環境整備に向けて、医療機関の取組に対する支援を行う。
 
具体的には、労働時間設定改善コンサルタントによる助言等のほか、研修会等の機会を通じて、医療機関等に対し、両立支援に関する制度の周知啓発を図るとともに、短時間正規雇用の導入を促進する。また、これらの制度を含む多様な働き方の導入について、参考となる取組例を収集し、好事例等の普及に努める。
 
これまでも、国は、子どもを持つ看護師等、女性医師を始めとする医療従事者の離職防止及び再就業を促進するため、医療機関に勤務する職員の乳幼児や児童の保育を行う事業に対する支援を実施してきたところである。
 
多様な働き方が実現できるよう、今後もこうした取組の強化を図っていく必要があるものと考えており、平成23年度予算においては、病院内保育所の運営等に対する支援として、新たに休日保育加算を行っている。
 
(2) 人材の育成・確保(人づくり)
 
① 継続的なキャリア形成と資質の向上
 
イ 医療機関等における取組
 
看護師等は、勤務する医療機関等において、それぞれの就労経験に応じたキャリア形成を積み重ねていくことが期待される。
 
免許取得後初めて就労する看護師等(新人看護職員)については、各医療機関等において、後述の新人看護職員研修ガイドラインに基づいた研修を実施する等、研修体制、研修内容の充実に努めることによって、その職場定着を促すよう努めることが期待される。
 
さらに、医療機関等に専門性の高い看護師を積極的に配置し、活用することは、高度化する医療サービスの安全な提供に重要であるとともに、看護師等のキャリア形成にも資するものである。
 
ロ 行政における取組
 
看護師等に対しては、その資質の向上を図るための様々な施策が実施されており、それらは結果的に看護師等のキャリア形成の促進につながるものと考えられる。
 
(イ) 新人看護職員研修の支援拡充
 
厚生労働省においては、平成22年度から新人看護職員研修事業を創設し、①医療機関等が実施する新人看護職員研修ガイドラインに沿った新人看護職員研修、②都道府県が実施する医療機関等の研修責任者に対する研修、③新人看護職員研修の実施が困難な施設に対して都道府県が実施するアドバイザー派遣等に対する支援を実施している。
 
平成23年度予算においては、新たに、新人保健師や新人助産師の研修や教育担当者、実地指導者を対象とした研修に対する支援を行い、新人看護職員研修の充実を図ることとしている。
 
(ロ) 専門性の高い看護師等の養成支援
 
(2)①イのとおり、厚生労働省においては、平成15年から、がん性疼痛や救急看護などの看護分野において専門性の高い看護師を育成するための研修の実施に対する補助等、看護師等の資質向上に向けた様々な施策を実施しており、平成23年度においても一層の強化を図っていくこととしている。
 
② 就業の促進
 
イ 医療機関等における取組
 
医療機関等にとって、医療サービスの提供に必要な人材を確保し続けることは、極めて重要な課題である。このため、各医療機関等においては、看護師等の募集に当たって、どのような医療現場へ就労を求めるのか求職者に十分理解されるよう、効果的な情報提供(医療機関等の理念、地域での役割、人材育成方針など)や職場見学の機会の設定などの取組に努めることが望まれる。
 
また、医療機関等においては、後述の潜在看護職員復職研修事業による講習会の技術実習等の運営に積極的に協力をすることにより、潜在看護師等の再就業支援を促進するとともに、潜在看護師等に対し、現場での看護を通して看護の魅力を再発見する機会を提供することも期待される。
 
ロ 行政における取組
 
第七次看護職員需給見通しに沿った看護師等の養成を促進するため、厚生労働省においては、引き続き看護師等学校養成所の運営費補助を行うほか、再就業を支援するため、以下の取組を行う。
 
(イ) 潜在看護職員等復職研修事業の実施
 
潜在看護師等の再就業支援については、各都道府県ナースセンター等において、復職に向けた講習会が実施されているところである。
 
厚生労働省においては、再就業の一層の促進を図るため、平成22年度から「潜在看護職員復職研修事業」を創設し、再就業を希望する看護師等に対し、最新の看護に関する知識及び技術に関する研修の実施について支援している。
 
(ロ) ハローワークの利用促進等
 
ハローワークでは、離職後の看護師等や潜在看護師等に対して、求職申込み等来所時を活用し、「福祉人材コーナー」での支援内容等の積極的な周知及び更なる利用促進を図ることにより、それら求職者の就業を促進していく。
 
また、「福祉人材コーナー」を中心に、きめ細かな職業相談・職業紹介、看護分野の求人情報の提供、ナースセンター等関係団体との連携により収集した研修情報の提供等を、積極的に行うことにより、支援の充実を図っていく。
 
一方、求人者に対しては、分かりやすい求人票の作成等求人充足に向けたコンサルティングや、求職者に対する求人情報の提供等を積極的に行い、求人充足支援の充実を図っていく。
 
さらに、労働基準法令の遵守等に関する研修会の開催時に、出席者(労働局(監督課・安定課)、都道府県(保健福祉担当部局等))が「福祉人材コーナー」を含むハローワークの取組内容に関する情報を共有し、あらゆる機会を捉えてその周知を図っていく。
 
(ハ) ナースセンターの役割等
 
ナースセンターについては、ハローワークにおける実績と比較すると職業紹介にまで至った件数は少ないものの、看護の有資格者によるきめ細かい相談を実施できることから、ハローワークを始め雇用関係部局とも連携した取組を進めることにより再就業支援の効果を一層増大させていくことが期待される。
 
(3) 地域における推進体制の整備(ネットワークづくり)
 
本プロジェクトチームでは、厚生労働本省の中で、医療行政と労働行政が垣根を越えて協働する体制を構築したが、こうした協働の枠組みは地域においても必要かつ有効なものと考えられる。
 
このため、都道府県労働局労働基準部は、職業安定部及び雇用均等室と連携しつつ、都道府県に加え、地域の実情に応じ、関係団体など地域の医療関係者の参加を求めて企画委員会を開催し、(1)①ロ(イ)の研修会の開催に向けた調整を行うとともに、関係者が協働して、地域の医療従事者の勤務環境の改善等に取り組む恒常的な連絡協議の場として活用する。
 
さらに、中長期的には、医療関係者のみならず、地域住民等の参画も図ることにより、医療についての国民の理解を深めるための仕組みとしても活用されることが考えられる。
 
なお、地域において、関係機関間の連絡協議のための既存の枠組みがある場合には、これによることとして差し支えないものとする。
 
また、東日本大震災の被災地域においては、被災者等に対する緊急的かつ優先的な対応の必要性にかんがみ、平成23年度は可能な範囲での取組を進める。
 
(4) その他
 
医療機関等においては、経営・管理層と現場スタッフとの間のコミュニケーションを密にする等を通じ、職場の人間関係の改善に努めるという視点をもって、上記の取組を進めることが重要である。
 
また、国民は誰もが病を得ることがあることから、医療機関等の受診に当たり、国民一人ひとりが、医療の公共的性格、医療従事者の勤務環境等への理解を深めることが望まれる。
 
第3 今後の課題と継続的な取組
 
1 今後の課題
 
本プロジェクトチームでは、医療機関職種の中で最大の人数を占めている看護師等を対象として検討を行った。一方、医師の勤務環境の厳しさについては、医療提供体制の根幹に関わる大きな問題として指摘されてきたところであり、チーム医療の観点からも、医療従事者全体の勤務環境の改善を図っていくことが求められている。これは、医師の不足・偏在の問題とも密接に関わるものであるが、今後、関係部局においては、可能なものについては医師等他職種への活用も図りつつ、第2の2に掲げる取組を推進しながら、医療現場での勤務環境の改善に向けた課題と対応に関する幅広い知見の収集及び分析に努めていくこととする。
 
また、中央社会保険医療協議会において、看護師等を含めた病院医療従事者の負担軽減策に関して、平成22年度診療報酬改定の結果を検証しつつ、医療従事者の勤務状況、病院内の役割分担、病院の長時間勤務に対する取組などを踏まえながら、次期診療報酬改定に向けて検討を行う。
 
2 平成24年度以降における取組の強化・継続
 
平成24年度以降においては、第2の2に掲げる平成23年度の取組の実施状況について、プロジェクトチームの構成部局等によるフォローアップを行うとともに、看護師等の業務負荷の状況についての継続的な把握、分析を行い、これを踏まえ、平成24年度以降も、関係部局が有機的に連携しつつ、有効な取組を強化・継続することとする(取組状況等については、厚生労働省ホームページ等による情報発信を行う。)。
 

(別紙2)
 
○看護師等の「雇用の質」の向上のための取組について
 
(平成23年6月17日)
 
(/医政発0617第2号/基発0617第3号/職発0617第3号/雇児発0617第5号/保発0617第2号/)
 
(別記団体の長あて厚生労働省医政局長・労働基準局長・職業安定局長・雇用均等・児童家庭局長・保険局長通知)
 
平成22年6月に閣議決定された「新成長戦略」において、医療・介護・健康関連産業は、「日本の成長牽引産業」として位置づけられるとともに、質の高い医療・介護サービスを安定的に提供できる体制を整備することとされています。
 
しかしながら、保健師、助産師、看護師及び准看護師(以下「看護師等」という。)については、夜勤を含む交代制勤務等により、厳しい勤務環境に置かれている者も多く、「新成長戦略」に掲げた戦略を実現するためには、必要な人材の確保を図りながら、看護師等が健康で安心して働ける環境を整備し、「雇用の質」を高めていくことが喫緊の課題です。
 
このため、厚生労働省では、平成22年11月に「看護師等の『雇用の質』の向上に関する省内プロジェクトチーム」を設置し、看護師等の勤務環境や雇用管理の改善に関する検討を行ってきたところですが、このほど、今後の対応を含め、検討結果を取りまとめました。
 
下記の第2の1の基本的な考え方に示したとおり、看護師等の勤務環境の改善を図り、看護業務が「就業先として選ばれ、健康で生きがいを持って能力を発揮し続けられる職業」となることを進めるためには、医療行政と労働行政が共通認識を持ち、関係者がそれぞれの立場で、勤務環境の改善等に向けて可能なものから取り組んでいく必要があります。厚生労働省としては、平成23年度において、下記の第2の2に示した事項を中心に、関係団体との密接な連携の下、医療関係者の間で既に進められている主体的な取組の幅広い展開に向けた支援を行うとともに、従来から取り組んできた政策について、より効果的な促進等に取り組むこととしております。
 
貴職におかれましては、看護師等の「雇用の質」の向上に向け、医療機関等における取組の推進に御配意をいただくとともに、行政が行う取組への特段の御協力、御支援を賜りますようお願いいたします。
 
また、当該取組を進めていくに当たっては、関係者が協働し、看護師等の「雇用の質」の向上に向けた取組の推進体制を地域において構築することが必要かつ有効であることから、貴職におかれましても、都道府県労働局及び都道府県関係部局との十分な連携に御配意いただき、地域における推進体制の構築に積極的に参画していただくようお願い申し上げます。
 
なお、本件については、別紙1のとおり都道府県労働局に指示するとともに、別紙2のとおり都道府県知事に協力を依頼しておりますので申し添えます。
 

 
第1 看護師等の勤務環境等の現状・課題等(要点)
 
1 就業状況
 
平成21年において、看護師等の就業者数は、実人員ベースで約143万4千人となっており、このうち病院(病床数20床以上の施設)で約89万2千人、診療所(19床以下の施設)で約30万4千人となっている。新規資格取得者は約4万6千人となっており、離職者数は約12万5千人と推計される。
 
看護師等が挙げる退職理由(退職希望の理由を含む。)の上位には、結婚・出産・育児など生活上の理由や、超過勤務が多い・休暇がとれない・とりづらいなど業務の過重性に関する理由が含まれている。
 
また、看護師等の資格を有しながら就業していない者(潜在看護師等)が多数に上るが、看護師等については、一旦就業を中断すると、医療技術の進歩に対する不安等から、再就業が円滑に進まない傾向があるとの指摘もなされていることから、潜在看護師等の再就業の促進はもとより、現に就業している看護師等の定着の促進及び離職の防止に一層重点を置いた対策を進めることが課題であると言える。
 
特に、その多くが夜勤を含む交代制を伴う勤務を行っている病院(病棟)勤務の看護師等については、30代以降でその割合が著しく低下している現状があることにかんがみ、病院での重点的な取組が求められる。
 
2 労働時間等
 
看護師等の労働時間、休日、休暇等(以下「労働時間等」という。)については、看護業務の特性により、時間帯によって必要な人員が異なることに加え、多くの場合に夜勤を含むローテーションによる交代制勤務が避けられないこと等の事情がある。
 
交代制勤務においては、所定時間外労働の発生と相まって、十分な勤務間隔(インターバル)の確保が難しいことが指摘されており、また、二交代制勤務においては、夜勤の勤務時間が長時間となっているとの調査結果もある。
 
看護師等の勤務環境は、診療科、地域等により一様ではないが、医療従事者は日々患者の生命に関わる仕事に携わっていることから、交代制勤務等に伴う負担をできる限り軽減することにより心身の健康を確保することが求められる。これは、医療安全の確保の観点からも重要である。
 
看護師等の労働時間等の管理については、各病院等の事情を踏まえつつ、診療報酬の算定を含めた多岐にわたる事項を考慮する必要があり、一般的な労働者の労働時間等の管理に比べ、高度な労務管理が要請される。
 
しかしながら、従来、シフト表の作成を始めとする日常の労働時間等の管理の在り方が十分に組織化・体系化されておらず、各看護師長等の経験に依存している場合もあるとの指摘がある。
 
こうした場合、まずは、病院等の内部において、労務管理の視点の重要性について十分に認識を共有し、労働時間等の管理体制を確立することにより、個々の看護師等の労働時間等に関する適正な把握及び管理を進める必要がある。その上で、労使双方が協力し、労働時間等の設定の改善及びこれを通じた交代制勤務の負担軽減に向けて、それぞれの現場の実態に即した取組を主体的に進めることが必要である。
 
これに加え、健康に不安を感じている看護師等が多いこと等にかんがみ、病院等において、メンタルヘルス対策を含めた看護師等の健康保持に向けた取組を推進することも重要である。
 
3 業務の効率性等
 
近年、医療の高度化や患者・家族の医療への主体的な参画が進展する中で、病院内の各種委員会活動が頻繁となるとともに、医療関係記録の作成も増加し続けている。
 
このため、病院等において、看護師等の業務を一層効率化する観点から、業務の見直し等の取組等を支援し、働きやすい職場環境を整備していく必要がある。
 
4 多様な働き方
 
健康問題とともに育児等との両立の困難さが離職等の大きな要因の一つとなっていること等を踏まえ、看護師等の離職を防止するとともに、再就業を促進するため、ワーク・ライフ・バランスに配慮した多様な働き方(短時間正規雇用、出退勤時間の柔軟化、夜勤を伴わない就業区分の導入等)を可能とする環境を整備することも重要である。
 
病院等において多様な働き方を導入しようとする場合に、障害となる要因として、労務管理を担当する者(看護師長等)に多元的な労務管理を行う上で前提となる知識が不足していること等が指摘されている。また、一部の病院等で取り組まれている好事例が他の病院等において必ずしも知られていないことなども、導入が進まない要因と考えられる。
 
このため、労務管理を担当する者に対し、各制度を導入する際の課題とその解決策について、先行事例の普及啓発等により、多様な働き方の導入を推進するための環境整備を図っていく必要がある。
 
また、病院内保育所の運営や施設整備に対する補助、短時間正規雇用等の多様な勤務形態導入の支援等、医療現場のニーズに応じた支援施策の強化を図っていく必要がある。
 
5 キャリア形成
 
病院等において、看護師等の資質・専門性の向上を図るための研修の実施等、継続的なキャリア形成支援を行うことは、看護業務を専門職として、より働きがいのある魅力的な職業とすることはもとより、医療機関等にとっても、量のみならず質も含めた人材の確保に資するものと考えられる。
 
第2 当面の対応
 
1 基本的な考え方
 
高齢化の進展による医療需要の増大に対応し、持続可能で質の高い医療提供体制を確保するため、看護師等の勤務環境の改善等を図ることにより、看護業務が「就業先として選ばれ、健康で生きがいを持って能力を発揮し続けられる職業」となることが求められ、それなくして、持続可能な医療提供体制や医療安全の確保は望めない。
 
この点について、医療現場とともに、医療行政と労働行政が共通認識を持ち、それを国民全体に広げていくことがまず重要である。その上で、関係者がそれぞれの立場で、整合的に看護師等の勤務環境の改善等に向けて可能なものから取り組んでいく必要がある。
 
特に、その多くが夜勤を含む交代制を伴う勤務を行っている病院勤務の看護師等については、重点的な取組が求められる。
 
医療機関等においては、看護師等の確保に向けた勤務環境の改善等について、既に様々な主体的な取組が進められてきている。厚生労働行政としては、関係団体との密接な連携の下、こうした医療界の取組の幅広い展開や効果的な促進等に取り組む。
 
具体的な取組としては、“魅力ある職業”のための「職場づくり」、「人づくり」、「ネットワークづくり」を推進することとする。
 
まず、「職場づくり」として、勤務環境の改善を図るため、①労働時間等の改善、②看護業務の効率化、③多様な働き方が可能な環境の整備、の3つの視点が重要である。
 
すなわち、夜勤や交代制勤務は、看護師等の職業の特性から生ずる避けがたい要素であるが、医療現場の実情に即した段階的・漸進的なアプローチを基本とし、業務の効率化等を進めつつ、負担を少なくする工夫を行うなどの改善を図り(下記2(1)①・②)、少子化により労働力の供給制約が強まる中、看護師等が、子育て期や高齢期を含めできる限り就業を中断することなく活躍できるようにする(下記2(1)③)必要がある。
 
次に、「人づくり」として、質と量の両面で人材確保を図る観点から、看護師等が医療の高度化に対応するとともに、将来のキャリアの展望を持ち、希望を持って働き続けられるようにするため、体系的な教育体制や、能力に応じた処遇システムの整備等を図る(下記2(2)①)必要がある。また、人材の採用に苦慮している医療機関等も多く見られ、それが勤務環境の改善が進まない大きな原因ともなっていることから、人材採用の円滑化等、就業の促進(下記2(2)②)が必要である。
 
最後に、「ネットワークづくり」として、取組の推進体制を整備するため、医療行政、労働行政及び関係者の協働を地域レベルも含めて深化させることが求められている。
 
以上の基本的な考え方に従い、以下のとおり、共同の取組を、平成23年度から速やかに開始し、フォローアップを行いながら、24年度以降も継続実施する。
 
なお、特に平成23年度については、被災地支援への優先的かつ緊急的な取組の必要性を十分念頭に置き、可能なところから着実な推進を図っていくものとする。
 
2 平成23年度の取組
 
(1) 勤務環境の改善(職場づくり)
 
① 労働時間等の改善
 
イ 医療機関等における取組
 
医療機関等で労務管理を行う責任者の立場にある者(医療機関等の実情に応じ、院長、事務長、看護部長、看護師長等)を「労働時間管理者」として明確化した上で、労働時間の適正な管理はもとより、現場の実情に応じた労働時間等の設定改善策の検討、推進等を図る。
 
※ 労働時間等の設定改善とは、労働時間、休日数、年次有給休暇を与える時季その他の労働時間等に関する事項について、労働者の健康と生活に配慮するとともに、多様な働き方に対応したものへ改善することをいう。看護師等に関する具体的な改善策としては、交代制の運用面の工夫、所定時間外労働の削減等が考えられる。
 
このような取組を行うことにより、「複数を主として月八回以内の夜勤体制」を基本としつつ、十分な勤務間隔(インターバル)の確保を含め、より負担の少ない交代制に向けた取組を着実に進めることが望まれる。
 
このため、例えば、管理的立場にある医師や看護師等に対する教育研修等の機会において、労務管理や労働関係法令等に関する内容の充実を図ることなどにより、労働時間等の設定改善への積極的な取組を促すことが適当である。
 
さらに、医療機関等においては、労働時間等の設定改善に加え、メンタルヘルス不調の予防等の観点を含む健康確保も重要であり、病院で健康管理を担う産業医に対する研修会等の取組の充実も望まれる。
 
ロ 行政における取組
 
行政としては、医療現場の労使の主体的な取組を促進する観点から、労働基準法令の遵守等に関する研修会の開催及び労働時間設定改善コンサルタントによる支援等を実施する。
 
なお、これらの取組は、労働時間等労働条件の確保に関する従来の主な手法である法違反に対する監督指導とは異なり、労働者の健康と生活への配慮や、多様な働き方への対応に資する改善を側面から援助する手法であるが、医療機関等の業務の特性を踏まえ、現場の実情に即した労務管理について支援を行う必要があることから、関係職員等は、業務を適切に遂行するための研鑽に努めることとし、厚生労働本省は、都道府県労働局に対し必要な援助を行うものとする。
 
(イ) 労働基準法令の遵守等に関する研修会の開催
 
都道府県労働局労働基準部は、職業安定部及び雇用均等室並びに都道府県(保健福祉担当部局等)と連携し、関係団体等の協力も得ながら、以下により研修会を開催する。
 
(i) 実施時期・地域
 
平成23年度後半に各都道府県において実施する。(被災地への緊急的対応の必要性に照らし、実施が困難な県を除く。)
 
(ii) 対象者
 
医療機関等において労務管理を担う責任者(院長、事務長、看護部長、看護師長等)
 
(iii) 研修の内容
 
研修は、以下を参考にしつつ、各地域の実情を踏まえた内容とする。
 
・「労働時間管理者」の明確化と現場の実情に応じた取組の奨励
 
・より負担の少ない交代制勤務についての好事例
 
・仕事と家庭の両立支援に関する制度、短時間正規雇用の導入に係る支援、多様な働き方の導入についての好事例等
 
・労働基準関係法令等の内容
 
・メンタルヘルス対策の推進
 
・ハローワークの活用、看護師等を確保するための効果的な求人の方法等
 
(ロ) 労働時間設定改善コンサルタントによる支援
 
都道府県労働局に配置されている労働時間設定改善コンサルタントを活用し、以下により個別の医療機関等への訪問等を実施する。
 
(i) 実施時期・地域
 
平成23年度においては、東京・大阪・愛知の各労働局において、先行的に実施する。
 
(ii) 訪問等の実施
 
労働時間設定改善コンサルタントが、医療機関等を訪問し、看護師等の労働時間等の設定改善に向けた課題や好事例等についてヒアリングによる現状把握を行う。
 
これを踏まえつつ、医療現場の実情に即した労働時間面の改善に係る知見の収集・分析を行った上で、各医療機関等の状況に応じた対応策を助言するなどの支援を行う。
 
(ハ) 健康の確保
 
上記のほか、メンタルヘルス対策を含む職場における心身の健康の確保に関し、医療機関等において、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」や「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づき、衛生管理者、産業医、衛生委員会等の活動を通じ、職場の実態に即した形で取組が進められるよう、必要に応じ支援を行う。
 
② 看護業務の効率化
 
イ 医療機関等における取組
 
看護業務の効率化については、これまでも申送りの改善や電子カルテの導入など各医療機関等において取り組まれてきたところである。提供される医療サービスの内容も多様なこともあって、その進展状況も様々であり、今後とも各医療機関等の状況に応じた看護業務の効率化を図ることが望まれる。
 
また、「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供する」というチーム医療を推進していく中で、従来看護師等が行っていた業務に関しても、他職種との連携・補完を進めていく必要がある。特に、医療関係事務に関する処理能力の高い事務職員(医療クラーク)の導入や、看護業務等を補助する看護補助者の活用について検討すべきである。
 
ロ 行政における取組
 
厚生労働省においては、都道府県の地域の実情に応じた効果的・効率的な看護師等確保対策に関する特別事業について助成してきたところであるが、今後も、こうした事業を通して、看護業務の効率化の観点での各医療機関等の取組やそうした取組に関する情報の共有を推進していくこととする。
 
また、各施設における就業環境改善の取組については、病院管理者及び看護管理者等のマネジメント能力の向上や労務管理に関する教育が不可欠であり、既存の事業を活用した管理者研修等の取組について積極的に支援していくことが求められている。
 
チーム医療における他職種との連携や、医療クラークの導入や看護補助者の効果的な活用については、実践的事例集の普及等を図るべきである。
 
③ 多様な働き方が可能な環境の整備
 
イ 医療機関等における取組
 
看護師等の離職を防止し、子育て期の看護師等も含めた様々な人材の活用を図るためには、医療機関等において、短時間正規雇用の導入、出退勤時間の柔軟化、夜勤を伴わない就業区分の導入、院内保育所の設置等、個人の置かれた状況に応じた多様な働き方を支える制度整備と利用しやすい職場風土作りが求められる。
 
また、多様な働き方を支える制度整備等に際しては、夜勤等の負担について不公平感が生じないよう工夫すること、また、各人の置かれた状況に配慮しながら、夜勤等の負担を職場内で適切に分かち合いサポートし合う風土を培うこと等が重要である。
 
なお、短時間勤務等の導入が、これらの制度を利用しない者の負担増にならないよう、多様な働き方の導入に当たっては、必要な人員の確保にも留意する必要がある。
 
ロ 行政における取組
 
行政としては、多様な働き方が可能な環境整備に向けて、医療機関の取組に対する支援を行う。
 
具体的には、労働時間設定改善コンサルタントによる助言等のほか、研修会等の機会を通じて、医療機関等に対し、両立支援に関する制度の周知啓発を図るとともに、短時間正規雇用の導入を促進する。また、これらの制度を含む多様な働き方の導入について、参考となる取組例を収集し、好事例等の普及に努める。
 
これまでも、国は、子どもを持つ看護師等、女性医師を始めとする医療従事者の離職防止及び再就業を促進するため、医療機関に勤務する職員の乳幼児や児童の保育を行う事業に対する支援を実施してきたところである。
 
多様な働き方が実現できるよう、今後もこうした取組の強化を図っていく必要があるものと考えており、平成23年度予算においては、病院内保育所の運営等に対する支援として、新たに休日保育加算を行っている。
 
(2) 人材の育成・確保(人づくり)
 
① 継続的なキャリア形成と資質の向上
 
イ 医療機関等における取組
 
看護師等は、勤務する医療機関等において、それぞれの就労経験に応じたキャリア形成を積み重ねていくことが期待される。
 
免許取得後初めて就労する看護師等(新人看護職員)については、各医療機関等において、後述の新人看護職員研修ガイドラインに基づいた研修を実施する等、研修体制、研修内容の充実に努めることによって、その職場定着を促すよう努めることが期待される。
 
さらに、医療機関等に専門性の高い看護師を積極的に配置し、活用することは、高度化する医療サービスの安全な提供に重要であるとともに、看護師等のキャリア形成にも資するものである。
 
ロ 行政における取組
 
看護師等に対しては、その資質の向上を図るための様々な施策が実施されており、それらは結果的に看護師等のキャリア形成の促進につながるものと考えられる。
 
(イ) 新人看護職員研修の支援拡充
 
厚生労働省においては、平成22年度から新人看護職員研修事業を創設し、①医療機関等が実施する新人看護職員研修ガイドラインに沿った新人看護職員研修、②都道府県が実施する医療機関等の研修責任者に対する研修、③新人看護職員研修の実施が困難な施設に対して都道府県が実施するアドバイザー派遣等に対する支援を実施している。
 
平成23年度予算においては、新たに、新人保健師や新人助産師の研修や教育担当者、実地指導者を対象とした研修に対する支援を行い、新人看護職員研修の充実を図ることとしている。
 
(ロ) 専門性の高い看護師等の養成支援
 
(2)①イのとおり、厚生労働省においては、平成15年から、がん性疼痛や救急看護などの看護分野において専門性の高い看護師を育成するための研修の実施に対する補助等、看護師等の資質向上に向けた様々な施策を実施しており、平成23年度においても一層の強化を図っていくこととしている。
 
② 就業の促進
 
イ 医療機関等における取組
 
医療機関等にとって、医療サービスの提供に必要な人材を確保し続けることは、極めて重要な課題である。このため、各医療機関等においては、看護師等の募集に当たって、どのような医療現場へ就労を求めるのか求職者に十分理解されるよう、効果的な情報提供(医療機関等の理念、地域での役割、人材育成方針など)や職場見学の機会の設定などの取組に努めることが望まれる。
 
また、医療機関等においては、後述の潜在看護職員復職研修事業による講習会の技術実習等の運営に積極的に協力をすることにより、潜在看護師等の再就業支援を促進するとともに、潜在看護師等に対し、現場での看護を通して看護の魅力を再発見する機会を提供することも期待される。
 
ロ 行政における取組
 
第七次看護職員需給見通しに沿った看護師等の養成を促進するため、厚生労働省においては、引き続き看護師等学校養成所の運営費補助を行うほか、再就業を支援するため、以下の取組を行う。
 
(イ) 潜在看護職員等復職研修事業の実施
 
潜在看護師等の再就業支援については、各都道府県ナースセンター等において、復職に向けた講習会が実施されているところである。
 
厚生労働省においては、再就業の一層の促進を図るため、平成22年度から「潜在看護職員復職研修事業」を創設し、再就業を希望する看護師等に対し、最新の看護に関する知識及び技術に関する研修の実施について支援している。
 
(ロ) ハローワークの利用促進等
 
ハローワークでは、離職後の看護師等や潜在看護師等に対して、求職申込み等来所時を活用し、「福祉人材コーナー」での支援内容等の積極的な周知及び更なる利用促進を図ることにより、それら求職者の就業を促進していく。
 
また、「福祉人材コーナー」を中心に、きめ細かな職業相談・職業紹介、看護分野の求人情報の提供、ナースセンター等関係団体との連携により収集した研修情報の提供等を、積極的に行うことにより、支援の充実を図っていく。
 
一方、求人者に対しては、分かりやすい求人票の作成等求人充足に向けたコンサルティングや、求職者に対する求人情報の提供等を積極的に行い、求人充足支援の充実を図っていく。
 
さらに、労働基準法令の遵守等に関する研修会の開催時に、出席者(労働局(監督課・安定課)、都道府県(保健福祉担当部局等))が「福祉人材コーナー」を含むハローワークの取組内容に関する情報を共有し、あらゆる機会を捉えてその周知を図っていく。
 
(ハ) ナースセンターの役割等
 
ナースセンターについては、ハローワークにおける実績と比較すると職業紹介にまで至った件数は少ないものの、看護の有資格者によるきめ細かい相談を実施できることから、ハローワークを始め雇用関係部局とも連携した取組を進めることにより再就業支援の効果を一層増大させていくことが期待される。
 
(3) 地域における推進体制の整備(ネットワークづくり)
 
本プロジェクトチームでは、厚生労働本省の中で、医療行政と労働行政が垣根を越えて協働する体制を構築したが、こうした協働の枠組みは地域においても必要かつ有効なものと考えられる。
 
このため、都道府県労働局労働基準部は、職業安定部及び雇用均等室と連携しつつ、都道府県に加え、地域の実情に応じ、関係団体など地域の医療関係者の参加を求めて企画委員会を開催し、(1)①ロ(イ)の研修会の開催に向けた調整を行うとともに、関係者が協働して、地域の医療従事者の勤務環境の改善等に取り組む恒常的な連絡協議の場として活用する。
 
さらに、中長期的には、医療関係者のみならず、地域住民等の参画も図ることにより、医療についての国民の理解を深めるための仕組みとしても活用されることが考えられる。
 
なお、地域において、関係機関間の連絡協議のための既存の枠組みがある場合には、これによることとして差し支えないものとする。
 
また、東日本大震災の被災地域においては、被災者等に対する緊急的かつ優先的な対応の必要性にかんがみ、平成23年度は可能な範囲での取組を進める。
 
(4) その他
 
医療機関等においては、経営・管理層と現場スタッフとの間のコミュニケーションを密にする等を通じ、職場の人間関係の改善に努めるという視点をもって、上記の取組を進めることが重要である。
 
また、国民は誰もが病を得ることがあることから、医療機関等の受診に当たり、国民一人ひとりが、医療の公共的性格、医療従事者の勤務環境等への理解を深めることが望まれる。
 
第3 今後の課題と継続的な取組
 
1 今後の課題
 
本プロジェクトチームでは、医療機関職種の中で最大の人数を占めている看護師等を対象として検討を行った。一方、医師の勤務環境の厳しさについては、医療提供体制の根幹に関わる大きな問題として指摘されてきたところであり、チーム医療の観点からも、医療従事者全体の勤務環境の改善を図っていくことが求められている。これは、医師の不足・偏在の問題とも密接に関わるものであるが、今後、関係部局においては、可能なものについては医師等他職種への活用も図りつつ、第2の2に掲げる取組を推進しながら、医療現場での勤務環境の改善に向けた課題と対応に関する幅広い知見の収集及び分析に努めていくこととする。
 
また、中央社会保険医療協議会において、看護師等を含めた病院医療従事者の負担軽減策に関して、平成22年度診療報酬改定の結果を検証しつつ、医療従事者の勤務状況、病院内の役割分担、病院の長時間勤務に対する取組などを踏まえながら、次期診療報酬改定に向けて検討を行う。
 
2 平成24年度以降における取組の強化・継続
 
平成24年度以降においては、第2の2に掲げる平成23年度の取組の実施状況について、プロジェクトチームの構成部局等によるフォローアップを行うとともに、看護師等の業務負荷の状況についての継続的な把握、分析を行い、これを踏まえ、平成24年度以降も、関係部局が有機的に連携しつつ、有効な取組を強化・継続することとする(取組状況等については、厚生労働省ホームページ等による情報発信を行う。)。

 


 
 
 





代表者:重本 由宇
経済産業省登録:中小企業診断士
社会保険労務士(有資格者)


〒152-0001
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