2026/9/20

転勤インセンティブ

 近年、転勤に対する忌避感が強くなっている。マイナビ「転勤と転職に関する調査2026」によると、転職希望者の68.8%が転勤のある会社で「働きたくない/どちらかといえば働きたくない」と回答している。また、77.3%が就職先を決める際に転勤の有無を考慮し、39.7%が「将来転勤する可能性」を理由に転職を考えた経験があると回答している。

 このような状況を受け、転勤に伴うインセンティブの新設や拡充を行う企業が増えている。インセンティブを分類すると、①一時金支給、②月額手当・継続的な金銭支給、③住宅・帰省支援、④その他のメリット提供、がある。それぞれ事例を紹介しよう。

①一時金・まとまった金銭支給
・サントリーHD〔2025年1月~〕
転居を伴う転勤のたびに、支度金・引越費用とは別に一律50万円を支給。
・新菱冷熱工業〔2025年4月~〕
転勤者に最大100万円の転勤一時金を新設。
・大成建設〔2025年7月~〕
転勤距離・家族帯同の有無などに応じて5万~100万円の転勤一時金。
・住友重機械工業〔2026年1月~〕
住居変更を伴う国内転勤者に、従来の転勤手当・別居手当とは別枠で一律50万円。

②月額手当・継続的な金銭支給
・BuySell Technologies〔2025年1月~〕
全国転勤に対応する社員に全国転勤手当 月3万円を新設。
・林ケミック〔2025年4月~〕
従来の単身赴任手当月5万円等に加え、転勤手当 月2万円を新設。
・住友生命〔2026年4月~〕
中堅以上の転勤者に、年2回の賞与へ各10万円を最大3年間上乗せ=最大60万円。

③住宅・帰省支援
・サントリーHD〔2025年1月~〕
単身赴任者の帰省交通費を月3回、年36回まで会社負担。
・JR九州〔2025年4月~〕
単身赴任者は自社特急・新幹線を年52往復利用可能。九州外勤務では家族帯同者年8往復、単身赴任者年12往復の帰省等交通費を支給。
・三機工業〔2026年〕
単身赴任者の帰省交通費を6カ月間で24回まで実費支給。

④その他のメリット提供
・昭和産業〔2026年4月~〕
鹿島工場等への転勤者を対象に、通勤用自動車購入費を最大30万円補助。
・レオパレス21〔2026年4月~〕
「いつ戻れるか分からない」という不安を軽減するために最大3年間の「転勤任期制」を導入。
・損保ジャパン
実際の転勤の有無にかかわらず、全国・ブロック転勤に同意する社員に転勤同意手当月3万円を支給。

 以前の転勤支援は、「引越代を会社が払う」「社宅を用意する」「単身赴任手当を出す」という実費・負担補填型が中心であった。これに対し、最近の事例を見ると、考え方に変化が見られる。

 特に、サントリー、新菱冷熱、大成建設、住友重機械工業などの50万~100万円という金額は、通常の引越費用補填とは明らかに性格が異なり、転勤を受け入れたこと自体に対する「転勤プレミアム」といえるものだ。

 また、損保ジャパンの「転勤同意手当」もユニークである。実際には転勤していなくても、転勤する可能性を受け入れていること自体に月3万円を払う仕組みである。これは、従来の「転勤したら費用を補填する」という考え方から、会社に配置転換の柔軟性を提供していることへの対価という考え方への転換と見ることができる。

 一方、昭和産業の自動車購入補助やレオパレス21の3年任期制のように、お金だけでは解決できない転勤の不利益を減らす施策も出てきている。

 マイナビ調査に、「どのような条件なら転勤を受け入れるか」という質問がある。結果は、「基本給が上がる(47.4%)」「毎月の手当が充実(44.7%)」「転居費用の支援(35.8%)と経済的インセンティブが上位を占めた。事例で挙げたような経済的なものを中心に、転勤インセンティブの強化は不可欠な施策となりそうである。          

 



人事制度の構築・見直し、評価制度、労務管理、研修などについて、お困りのことがありましたら、
お気軽にご相談ください。

 過去記事は⇒ミニコラムもご参照ください。
 ご相談・お問い合わせは⇒お問い合わせフォームをご利用ください。
 

 
にほんブログ村 経営ブログ 人事労務・総務へ  にほんブログ村 士業ブログ 中小企業診断士へ 

にほんブログ村に参加しています。