2026/7/12

失敗を成長につなげるには

 人材サービスのジェイックが6月に発表した、20代正社員の「仕事における失敗経験」に関する調査結果によると、直近1年間で「大きな失敗を経験した」人は31.0%で、失敗経験者の64.0%が「成長につながった」と回答している。

 一般にも、仕事上の失敗は今後の成長のためになると言われており、若手社員に失敗を奨励する経営者も多い。実際、「失敗が成長につながる」という実証的な研究・調査結果はある。

 研究全体をまとめると、「仕事上の失敗は成長の契機になり得るが、失敗しただけで自動的に成長するわけではない」というものである。より正確には、
失敗経験+原因の振り返り+フィードバック+失敗が共有される職場がそろったとき、知識・スキルや判断力、未知の状況への対応力が高まりやすいとされる。以下、簡単に説明しよう。

1.失敗を許容する訓練は、その後の成果を高める
 2008年にKeithとFreseが行った「エラー・マネジメント・トレーニング」の分析では、失敗を回避するよりも、失敗を経験しながら試行錯誤を促し、対処方法を学ぶほうが、成果が高まることが示唆された。特に、新しい課題への応用に大きな効果があることが確認されている。

2.重要なのは、失敗後の「振り返り」である
 業務や訓練の終了後に、「何を目指したか」「実際に何が起きたか」「なぜ違いが生じたか」「次回どうするか」を検討する方法を、アフター・アクション・レビューあるいはデブリーフィングなどと呼ぶ。

 2021年に複数の研究をまとめたメタ分析では、こうした振り返りによる改善効果の有効性が示され、特に、映像や記録、数値などの客観的資料を用い、一定の構造に沿って振り返ることが効果を高めていた。成長を生むのは失敗そのものというより、失敗を具体的に検証し、次の行動に変換するプロセスだといえる。

3.失敗だけでなく、成功も併せて振り返る方がよい
 兵士のナビゲーション訓練を対象とした準フィールド実験では、失敗した出来事だけを振り返ったグループよりも、失敗と成功の両方を振り返ったグループの方が、その後の成績が有意に向上した。失敗からは「何を変えるべきか」を、成功からは「何を再現すべきか」を学べるためとされる。別の実験でも、失敗後には、正しかった行動・誤っていた行動のいずれを検討しても改善につながりやすいことが示されている。

4.「失敗を話せる職場」ほど、成果やイノベーションにつながりやすい
 オランダの65組織を対象とした研究では、失敗について率直に話し、早期に発見し、原因を分析して修正する「エラー・マネジメント文化」が、組織の目標達成に影響していた。また、こうした文化は、組織レベルと個人レベルの双方のイノベーションにも関連していた。失敗を隠さず共有できれば、本人だけでなく、周囲も同じ失敗を避けたり、新しい方法を試したりできるためである。

 ジェイックの調査では、失敗経験者の55.0%が、上司や職場から「失敗の原因を分析し、次に活かす方法を一緒に考えてくれた」と回答している。これは、失敗後の振り返りや上司の支援が学習を促すという研究結果と整合している。

 失敗は、本人がこれまでの知識や判断方法の限界に気づくきっかけになるため、成功よりも強い学習材料になることがある。一方、失敗を叱責されるだけ、原因があいまいなまま、再挑戦の機会がない、といった場合には、萎縮や自己防衛、失敗の隠蔽につながり、成長しないこともある。失敗を成長につなげるには、本人だけでなく上司をはじめとする周囲の支援や職場環境も重要である。         

 


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