
民間企業の障害者の法定雇用率が、7月1日に2.5%から2.7%に引き上げられた。これに伴い、義務対象となる企業の範囲も、常用労働者40人以上から37.5人以上に拡大された。
厚生労働省の令和7年「障害者雇用状況」集計結果によると、民間企業に雇用されている障害者の数は約705千人(対前年比4.0%増)で、22年連続で増えている。もっとも、法定雇用率達成企業の割合は前年と変わらず46.0%。近年、2~3年ごとに法定雇用率の引き上げが行われており、障害者雇用数は増えているものの、法定雇用率達成企業の割合は50%弱で頭打ちの状態である。
達成企業の割合は、規模が小さいほどは低い傾向にあることを踏まえると、今回の引き上げにより数値の低下も予想される。割合を高めるには、現在よりもさらに障害者雇用を増やす必要がある。
ただ、義務的に障害者を雇用しても上手くいかない可能性が高い。そうした状況は障害者・企業双方にとって好ましくない。障害者雇用のメリットを認識し、そのメリットを活かす形での雇用が望まれる。それでは、障害者雇用のメリットとはどのようなものか、あらためて考えてみよう。企業にとっての障害者雇用のメリットは、次のように整理できる。
1.人材不足への対応・戦力の確保
障害特性と本人の能力に合った業務を設定することで、定型業務、専門業務、管理・補助業務などを担う安定した戦力を確保できる。人材の採用対象を広げることにもつながる。
2.業務の見直し・生産性向上
業務を切り分け、手順を明確化し、マニュアルや指示方法を改善する過程で、属人化や無駄な作業が見直される。その結果、障害のない社員を含めた業務効率化につながる。
3.誰もが働きやすい職場づくり
作業環境の整備、分かりやすい指示、柔軟な勤務制度、相談体制の整備は、高齢者、育児・介護中の社員、傷病を抱える社員などにも有効であり、職場全体の働きやすさを高める。
4.助け合いの風土の醸成
パーソルダイバースが障害者雇用企業の担当者389人を対象に行った2022年調査では、障害者雇用の取組が「企業活動に貢献している」と答えた割合は約7割であり、その理由のトップに「助け合いの風土の醸成(23.9%)」が挙げられている。
5.管理職のマネジメント力向上
個人の特性を把握し、仕事の与え方やコミュニケーションを工夫する経験を通じて、管理職の業務配分、指導、面談などの能力向上が期待できる。
6.企業評価・社会的信用の向上
障害者雇用は、ダイバーシティ、人的資本経営、CSRの具体的な取組として、求職者、社員、取引先、地域社会などからの信頼向上につながる。
7.法令遵守と経済的負担の軽減
法定雇用率の達成により、行政指導や障害者雇用納付金の負担を回避でき、一定の場合には調整金・報奨金や設備整備等の助成金も活用できる。
このように、障害者雇用には企業経営や社員全体への波及効果が期待できる。言葉を換えると、障害者雇用は、単なる「法定雇用率への対応」ではなく、人材確保、業務改善、職場環境の整備を同時に進める経営施策としてとらえることが重要である。人数の確保だけを目的とせず、本人の能力に合った職務設計と配属後の支援を行うことが、メリットを実現する前提となる。