前回、評価における日常行動の観察・記録の重要性を指摘した。今回は、それを実施する上での留意点を整理しておきたい。留意点は次の5つである。
第一に、「事実」と「解釈」を分けて記録することである。
記録で重要なのは、事実を書くことだ。たとえば、「6月12日の定例会議では積極性が見られなかった」の「積極性が見られなかった」は解釈であり、何があったかがわからない。そこは、「6月12日の定例会議では担当業務に関連するテーマにもかかわらず発言がなかった」とすれば事実として明確になる。
評価の根拠は、日時・場面・行動がわかる形で残すことが重要である。これに関しては「SBI情報」という整理の仕方も有効だ。SはSituation:状況、BはBehavior:行動、IはImpact:影響である。特に「インパクト:影響」を記録しておくと、フィードバックに役立つ。単に「○○をした」だけでなく、「それによって△△となった」を伝えることで、部下は自分の行動が外部にどのような影響をもたらしたかを再認識できる。よい影響であれば行動の促進につながるし、悪い影響であれば改善の動機づけが高まる。
第二に、良い行動も悪い行動も両方観ることである。
組織のマネジメントを任されている管理者は、部下の問題行動やミスに目が行きがちとなる。まずは計画通りに進めることが第一だからだ。ただ、マイナス面だけを記録すると、評価が減点主義となってしまう。良い行動も意識して拾うことで、被評価者の強みを把握することができ、フィードバック面談等で「誉めるネタ」として使える。プラス面とマイナス面を偏りなく記録することが大切である。部下の長所を見つけるという意識を持っておきたい。
第三に、目立つ部下だけでなく、そうでない部下もよく観るというものである。
声が大きい、発言が多い、上司との接点が多いなど、目立つ人は評価されやすい。逆にそうでない部下はどうしても記録が少なくなりがちである。そうでない部下も、実際には、「粘り強く取り組んでいる」「トラブルを未然に防いでいる」「周囲を陰で支えている」といった貢献も多い。見えやすさと貢献度は一致しないことに注意したい。
第四に、記録は「その都度・短く」を基本とすることである。
期末にまとめて思い出そうとしても限界がある。したがって、たとえば、「週1回定期的に」「打ち合わせや会議の後」「案件の節目」などに、短くてもよいので都度残すのが効果的である。長文である必要はなく、メモレベルでOKだ。完璧な記録よりも、小まめに継続して残すことを優先したい。
第五に、普段と違う場面に特に注目することである。
普段と違う場面とは、トラブルが発生した時、非常に忙しい時、新規の業務に取り組んでもらったときなどである。こういった場面では、部下の能力や姿勢が顕在化しやすい。たとえば、新たな業務をお願いしたときに、興味を持って「やります」と答えたか、「ちょっと、自分には…」とネガティブな反応を示したか、その背景は何なのか、などをしっかり見ておきたい。個々の部下の特性が現れてくると思う。
これら5つに留意することで、日常行動の観察・記録の質・量が向上するはずだ。それは同時に管理者のマネジメント能力の向上に直結するものである。