2026/1/25

パート・有期労働者の家族手当

 2025年12月25日に開催された労働政策審議会分科会において、同一労働同一賃金ガイドラインの見直し案が示された。その中で、これまで触れられなかった家族手当の取扱いが新設された点は、企業実務に少なからぬ波紋を広げそうだ。

 見直し案では、「労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の家族手当を支給しなければならない」と記されている。単純に読めば、「契約更新を数回重ねたパート・有期社員にも家族手当を支給しなければならないのではないか」と受け止められかねない内容である。

 しかし、この点について「更新〇回で自動的に支給義務が生じる」といった機械的な理解は適切ではないだろう。これまでの同一労働同一賃金を巡る判例や行政解釈を踏まえれば、判断に求められるのはあくまで実質性である。すなわち、更新回数や勤続年数のみならず、契約更新の期待性、職務内容の恒常性、正社員登用の可能性、といった事情を総合的に見て判断される。

 とはいえ、今回の見直し案が企業に突きつけている問いは明確である。つまり、「長期間にわたり戦力として活用している短時間・有期雇用労働者に対し、家族手当だけを一律に排除する合理的理由を、果たして説明できるのか」という点である。

 多くの企業では、家族手当について「正社員は、通常の労働者としての職務を遂行し得る人材の確保・定着を図る目的があるため支給するが、短時間・有期雇用労働者はそうではない」といった整理をしてきたのではないだろうか。制度設計としては一見もっともらしいが、実態と照らすと苦しくなりつつある。

 現実には、パートや有期社員であっても、同一部署で5年、10年と勤務し、欠かせない戦力となっているケースは少なくない。人手不足が常態化する中で、企業がそうした人材の定着を期待していないとは言えないだろう。形式上は非正規であっても、実態として長期雇用を前提に活用しているのであれば、「定着目的は正社員にしかない」という説明は説得力を失う。

 今回の見直しは、「直ちに全てのパート・有期労働者に家族手当を支給せよ」というメッセージではない。しかし、「非正規労働者に対して、家族手当を一切支給しない」という状態を、これまで以上にリスクの高いものにするのは確かである。

 企業の対応としては、いくつかの選択肢が考えられる。1つは、一定の勤続年数や更新実績を基準に、限定的に短時間・有期雇用労働者にも家族手当を支給する方法である。法的な安全性は高いが、人件費への影響は避けられない。2つ目は、家族手当そのものを見直し、基本給や他の手当、福利厚生などに組み替える方法である。同一労働同一賃金リスクを根本から低減できる一方、制度変更に伴う説明や調整が必要となる。

 いずれにしても、重要なのは「家族手当を出すか、出さないか」という二択ではない。自社は短時間・有期雇用労働者を、どのような位置づけで活用しているのか。定着を期待する人材なのか、そうでないのか。その実態と処遇制度が整合しているかが、これまで以上に問われる。見方を変えると、非正規を含めた人材活用のあり方そのものを検討する機会ともいえる。         

 


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