2018/10/22

派遣労働者の多くは正社員を希望

 
 一般に派遣労働者の待遇は正社員よりも不利であり、その格差是正は長年の課題であった。今夏、成立した働き方改革法案では、最も大切と言える収入面での格差是正に一定の目途が立ったわけだが、一方で、派遣労働者の中にはそのような格差を承知の上で、あえて派遣という働き方を希望する人も少なくないとされる。
 派遣労働者の意向は、実際のところどうなのだろうか。
 
 厚生労働省の平成29年派遣労働者実態調査によると、今後の働き方に対する希望について、派遣労働者、派遣労働者以外等のいずれかで働きたいかを訊いたところ、

「派遣労働者以外(正社員、パート等)の就業形態で働きたい」48.9%
「派遣労働者として働きたい」26.8%
「その他」22.9%
「不明」1.4%

 となっており、半数近くは派遣労働からの脱却を望んでいることがわかる。
 「派遣労働者以外」を年齢階級別に見ると、35~39歳が62.0%と最も高く、逆に65歳以上ではわずか8.4%となる。

 「派遣労働者以外(正社員、パート等)として働きたい」労働者の内訳は、

「正社員として働きたい」80.8%
「正社員以外の就業形態で働きたい」11.0%
「その他」7.8%

 となっており、正社員希望が圧倒的に多い。ただこれも年齢による差があり、49歳までは80%超だが、50歳から59歳だと70%台、60歳~64歳は41.9%、65歳以上は27.8%と年齢が高まるにつれて下がる。

 このように、50歳くらいまでの派遣労働者の多くに「正社員願望」があることは明らかである。では、これに対する企業側の意向はどうだろうか。

 同調査によると、派遣労働者を正社員に採用する制度がある事業所の割合は13.1%で、このうち過去1年間に「派遣労働者を正社員に採用したことがある」は1.5%となっている。採用する制度がない事業所は83.8%で、このうち過去1年間に「派遣労働者を正社員に採用したことがある」は1.5%となっている。つまり、全体の3%しか正社員採用はなく、実態は非常に厳しいことがわかる。
 もっとも、派遣労働者が就業している事業所についてみると、派遣労働者を正社員に採用する制度がある事業所で、「派遣労働者を正社員に採用したことがある」は6.3%、採用する制度がない事業所で6.7%となっており、実際に派遣労働者がいる企業では、正社員への門戸は多少広がる。

 今のところ、派遣労働者の正社員ニーズと企業の正社員化ニーズはマッチしていないが、人手不足の深刻化により、企業の正社員ニーズは高まることが想定される。さらに、冒頭でも触れたように、2020年4月から派遣労働者の待遇は大きく変わる。これにより、派遣労働者の正社員志向は低下し、逆に企業の派遣労働者の正社員化が進む可能性がある。 これらを受けて、どのような変化があるか要注目といえる。


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