2026/5/31

不足する人材は営業職と30代

 5月11日に公表されたエン・ジャパンの「人材不足の状況に関する実態調査」では、人材不足を感じている企業が84%に上り、不足している職種では営業職が34%で最多となった。また、不足している年代では30代が91%と突出している。

 人材不足の理由も、退職による欠員が57%、中途採用で人員確保ができなかったことが49%となっており、単なる一時的な欠員ではなく、採用・定着・育成の複合的な問題としてとらえる必要がある。

 まず、営業職の不足が目立つ背景には、営業が売上に直結する職種である点が挙げられる。企業が成長しようとすると、最初に必要になるのは案件を獲得し、顧客との接点を広げる人材である。特に中小企業では、営業担当者が新規開拓、既存顧客対応、提案、見積り、納品後フォローまで幅広く担っていることも多い。そのため、1人の退職が売上機会の喪失に直結し、不足感が強く表れやすいと考えられる。

 加えて、営業職は成果責任が明確である一方、業務負荷や心理的負担も大きい。顧客対応、数字へのプレッシャー、移動や商談準備、社内調整などが重なり、処遇や評価に納得感がない場合には離職につながりやすい。営業職の不足は、求人を出せば解消するという問題ではない。自社の営業職がどのような役割を担い、どのような成長機会や報酬があるのかを明確に示せなければ、採用競争では不利になる。

 一方、30代の不足が最多となっている点にも注目が必要である。30代は、現場の即戦力であると同時に、若手を指導し、管理職候補にもなり得る中核層である。20代はまだ育成途上、40代以上は管理職や専門職に移行しているケースが多いため、プレイヤーとしてもリーダーとしても期待できる30代に需要が集中しやすい。過去の採用抑制や若手の早期離職により、社内の年齢構成がいびつになっている企業では、30代層の薄さがより深刻な問題として表れる。

 では、企業はどう対応すべきか。調査では、2026年に検討している対応として、人材採用の強化が79%で最多である。次いで、既存業務の効率化、AI活用・DX等が30%、既存社員の教育・能力向上が23%、社員のモチベーション向上のための処遇見直しが20%となっている。採用強化が中心になるのは自然だが、それだけでは限界がある。

 そのことは「人材不足についての悩みや課題」にも表れている。採用競争力、すなわち給与・ブランド力が低いことを課題に挙げる企業が42%で最多であり、社内で育成・教育の仕組みが整っていないことが33%、課題が多岐にわたり優先順位の判断が難しいことが31%となっている。つまり、多くの企業は採用を強化したいと考えながらも、採用市場で選ばれるだけの条件整備や、入社後に育てて定着させる仕組みに不安を抱えている。

 したがって、営業職不足への対応では、採用広報の見直し、処遇・インセンティブの再設計、評価基準の明確化、営業支援ツールの活用を一体で進める必要がある。営業担当者を増やすだけでなく、少人数でも成果を出せる営業プロセスに変えることが重要である。たとえば、見込み客管理の仕組み化、提案資料の標準化、メールやオンラインによるインサイドセールスの活用、営業事務との分業などにより、営業職の負荷を下げることができる。

 30代不足については、30代の中途採用だけに頼るべきではない。30代は多くの企業が欲しがる層であり、採用競争は厳しい。むしろ、20代を早期に戦力化する育成計画、30代が定着したくなる評価・処遇・キャリアパス、40代以上の専門性活用を組み合わせることが現実的である。特定の年代に業務や責任が集中しないよう、役割分担や育成の仕組みを見直すことも欠かせない。

 人材不足対策は、採用数を増やすことだけではない。採用できる会社になること、育てられる会社になること、辞めにくい会社になること、そして少ない人数でも成果を出せる会社になること。この4つを同時に進めて初めて、営業職不足や30代不足への実効性ある対応となる。調査結果は、企業に対して、人材不足を採用部門だけの課題ではなく、経営課題として再設計する必要性を示している。         

 


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