2026/5/24

新入社員が仕事をする上で大事にしたいこと

 前回に続いて、東京商工会議所が4月22日に発表した「2026年度新入社員意識調査」結果から、興味深いデータをピックアップしてみる。今回は、新入社員が仕事をする上で大事にしたいことである。

 ベースとなっているのは経済産業省が提唱している「社会人基礎力」だ。これは、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力と、それを具体化した12の能力要素で構成される。調査は、この12の能力要素の中から、最大3つまでを回答してもらうものだ。

 結果は、「主体性(60.3%)」、「実行力(40.8%)」(いずれも「前に踏み出す力」の要素)が上位となっている。3・4位は「計画力(27.7%)」「課題発見力(21.3%)」(いずれも「考え抜く力」の要素)で、5位に「柔軟性(19.1%)」が入る。最も低いのは「規律性(8.2%)」で、唯一10%未満の数値となっている(「柔軟性」と「規律性」は「チームで働く力」の要素)。総じて「前に踏み出す力」を重視しており、次いで「考え抜く力」で、「チームで働く力」の重要性は低いと言える。

 面白いのは、会社が求めるものとの違いである。人材育成担当者が回答した上位5つは、「主体性(76.4%)」、「実行力(36.6%)」、「規律性(29.8%)」、「傾聴力(20.2%)」、「柔軟性(18.0%)」である。

 主体性がトップとなっているのは新入社員と同じだが、人材育成担当者のほうが16.1ポイントも高く、重要度がさらに高いことがうかがえる。一般にZ世代は主体性が不足していると言われる。新入社員が考えている以上に、会社はその認識が強いと言えそうだ。

 注目したいのは、規律性が最大のギャップを示している点である。理由としては、新入社員側では、入社直後の意識として、「自分らしく主体的に働きたい」「早く戦力になりたい」という発想が前面に出やすいため、規律性は相対的に後順位になったと考えられる。一方、人材育成担当者にとっては、遅刻・欠勤連絡、報連相、期限順守、情報管理、社内ルール順守などが、配属後すぐに問題化しやすい実務課題となる。そのため、能力発揮以前の土台として、規律性を強く求めていると考えられる。

 また、新入社員は規律性を、古い上下関係や形式的なルール順守、自由を制約するものとして受け止めている可能性がある。一方、育成担当者は、顧客・上司・同僚との約束を守る、組織で信頼される行動を取るという、実務上の信頼形成の意味で捉えており、まずは規律性を重視してほしいとの思いが強いはずだ。

 もう1つギャップが大きかったのは「計画力」である。新入社員は、学業、就職活動、資格取得などでは、予定を立てて準備することが成果に直結しやすい。その延長で、社会人になっても計画力が重要だと考えやすい。また、新入社員は業務経験が少ないため、何をどう進めればよいかが見えにくい。そのため、まず計画を立てることが安心材料になる。計画力を重視する背景には、失敗を避けたい、きちんと準備したいという心理もあると思われる。

 一方、育成担当者から見ると、新入社員はまだ業務知識・経験が不足しており、いきなり自分で計画を立てることよりも、まずは指示されたことを理解し実行することや、報連相をきちんと行うことを重視すると考えられる。育成担当者からすると、入社直後は“自分で計画する段階ではない”ということだ。

 このようなギャップを抱えたままでは、各々の目指す方向性が異なっており、指導の効果を得るのは難しい。新入社員の指導に悩む人は多い。今回の結果は、その悩みを減らすヒントが示されている。まずは、お互いに何を重視するのかを話し合ってみてはいかがだろうか。         

 


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