
2021年にパーソル総合研究所が実施した「人事評価制度と目標管理の実態調査」によると、被評価者が自ら評価を行う自己評価を実施している企業の割合は、79.3%と約8割にのぼる。
筆者も評価制度を作る際は、基本的に自己評価の仕組みを取り入れるようにしている。人材育成を主眼とする評価制度において、自己評価は大きな意義を持つと考えられるからだ。
このように自己評価はスタンダードな制度であるが、一方で課題も抱える。それは「自己評価の高い社員」への対応である。
自己評価が高いと、上司評価もそれに引きずられて高評価となり、評価に不公平が生じてしまう。評価を下げようにも、1つ、2つならともかく、多数の項目に対して、納得性のある根拠をもって下げるのは難しい。往々にして自己評価の高い社員というのは、一癖ある人が多く、自信家で弁も立つ。フィードバックで説得するのも厄介だ。結果、上司として釈然としない気持ちを抱きつつ、高めの評価をせざるを得ない…。
このようなケースは、自己評価を実施しているほとんどの企業で起きているのではないだろうか。筆者が導入した企業からも、必ずといっていいほど受ける相談である。
本コラムで、あらためて自己評価の高い社員にどう対応すべきかを整理してみたい。今回は、そもそも自己評価の高い人にはどういう特徴があるかを確認する。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という。被評価者を敵とみなすのは何だが、相手の人間性を知ることで適切な対応につなげられる。また、評価者自身のストレスを減らすことにもなる。「このような人なので、自己評価が高いのも仕方がない」と達観できるからだ。
心理学や社会学の観点から見ると、自己評価の高い人は以下のような特徴を持つとされる。
1.自己高揚バイアスが強い
自己高揚バイアスは、自分の能力や成果を他者よりも高く見積もる傾向のことだ。その背景に、成功は自分の実力、失敗は外部要因(環境や他人のせい)と考えやすいことがある。結果は悪くても、それは自分の能力の問題ではないのだから、自己評価は高くなる。
2.ダニング=クルーガー効果
能力が低い人ほど自分を過大評価し、能力が高い人ほど自己評価が低くなる傾向をいう。能力が不足している人は、単に能力が低いだけでなく、「自分の未熟さ」に気づけないことに起因する。「自分は十分に優れているから、今のままで十分」と考える。能力が低い→自己評価が高い→成長しない、の悪循環である。
3. ナルシシズム(自己愛傾向)が強い
自己愛が強い人(ナルシシスト)は、「自分は周りよりも優秀」という特別意識が極端に強い。当然に自己評価は高くなる。他者から低い評価を受けると、「不当な評価で見る目がない」と考え、その人に敵意を抱く。もっともその優越感に根拠はないので、内心深く落ち込む。過大な自己評価で自分を守っているということだ。
4. 下方比較傾向が強い
自己評価が高い人は、自分より下の人と比較することで安心することが多い。「あの人より自分の方が仕事ができる」「周囲より努力している」と思うことでプライドや自己肯定感を保てる。この対極にあるのが、自分より上の人と比べて、現状に満足せず、「自分はまだまだ」と努力する上方比較である。
5. 自己効力感が強い
1~4は自己評価が高い人のネガティブな側面だが、自己効力感の高さから、自己評価が高くなることもある。自己効力感とは「やればできる」との感覚であり、それ自体はポジティブなものだ。この場合、根拠のない自信ではなく、過去の成功体験に裏付けられた自己評価であることが多い。自己評価が高いからといって、必ずしも問題があるとは限らないことに留意したい。