
エン・ジャパン社が、面接官経験がある人事担当者を対象に行った調査によると、8割もの担当者が面接官として悩みを感じているという結果が出ている。悩みの内容としては、「候補者の能力や適性を正確に見極めるのが難しい(84%)」「候補者の本音や意欲を引き出す質問が難しい(70%)」の2つが突出して多い。
この2つは深く関連している。候補者の本音や意欲を引き出せていないことが、能力・適性を正確に見極められない要因の1つと考えられるからだ。つまり、候補者の本音や意欲を引き出す質問ができれば、能力や適性を正確に見極められる可能性が高まるということである。
それでは候補者の本音を引き出す質問とはどういうものか。目的別に具体的に考えてみよう。
①志望動機の本音を探る質問
質問例:「数ある会社の中で、特に当社に惹かれた理由をもう少し具体的に教えてください」
「御社の成長性に魅力を感じました」等の表面的な志望動機の奥にある真の思いを見抜く質問である。表面の動機から深掘りすることで、実際の比較・選択基準が明らかになる。
質問例:「会社選びで、どんな点をいちばん重視していますか?」
優先順位を確認する質問である。安定志向か成長志向か、競争重視か人間関係重視かなど、候補者の価値観を把握できる。
②経験・実績が真実かどうかを確かめる質問
基本はSTAR法(Situation-Task-Action-Result)を意識し、体験の深さや実際の行動を聞き取る。その上で、次のような質問を投げかける。
質問例:「そのとき、最も苦労した点は何でしたか?」「 なぜその方法を選んだのですか?」
単に成功談だけでなく、課題にどう向き合ったかを確認する。実体験の深さが現れる質問である。
質問例:「チームで進めたとのことですが、ご自身はどんな役割を担いましたか?」
チーム成果を自分の功績として誇張していないかを確認する。
③転職動機・キャリア観の本音を探る質問
転職理由を聞くときは、「なぜ辞めたか」よりも「何を得たかったか」に焦点を置く。
質問例:「前職では、どんな点にやりがいを感じ、どんな点で物足りなさを感じましたか?」
退職理由の背景を探ることで、前向きな転職か、逃避型かを見極める。
質問例:「今後5年、どんな仕事をしたいですか?」
キャリアビジョンに現実性と一貫性があるかを確認する。欠けていれば、明確なビジョンを持たずに退職した可能性があり、入社しても早期離職につながるおそれがある。
④志望の本気度を確かめる質問
質問例:「入社後、最初の半年でどんな成果を出したいと考えますか?」
この会社で働きたいという思いが強ければ、ある程度具体的なイメージは持てるはずである。
質問例:「今日の話を聞いて、気になる点や確認しておきたい点はありますか?」
志望の本気度、その前提として情報収集の度合いを確認する。本当に入社したいのであれば「特にありません」とは答えない。何らかの質問を返すか、質問がないにしても何らかの感想を言ってくるはずだ。
以上、候補者の本音を探る質問を整理してみたが、ベースとなるのは候補者への関心である。これから一緒に働くのであれば、関心を持って当然である。心から関心をもって聞けば、人は本音を語ろうとするものである。