2025/3/16

組合があるほうが賃上げ率は高い

 厚生労働省が昨年12月に公表した2024年「労働組合基礎調査」結果によると、労働組合に加入している人が雇用者に占める割合を示す「推定組織率」は16.1%と、前年に記録した過去最低水準を更新した。

 このような労組の衰退には、第3次産業の普及や非正規労働者の増加など様々な要因があるだろうが、一言でいえば、組合が労働者のニーズに応えてこなかったからといえる。この点は、組合側も自覚し、反省する必要がある。

 ただ、組合にとってうれしい指摘が2月に内閣府から公表された「日本経済レポート(ミニ白書)」でなされている。労働者の最大の関心の一つである賃上げについて、会社に組合があるほうが賃上げ率は高いというものである。

 ミニ白書では、厚労省「賃金引上げ等の実態に関する調査」を確認した結果、2024年については、労働組合を持つ企業の賃金改定率が4.5%であったのに対し、労働組合がない企業は3.6%と、1ポイント近い乖離があることがわかったと指摘している。その差は、労働組合の有無別の調査開始の1999年以降で最も大きいとのことである。

 ちなみに、2024年は連合傘下の組合のほうが、賃上げ率が高かったそうである。連合加盟組合とそうでない組合との間のバーゲニングパワーの違い等が要因として考えられるとしている。

 組合が存在することで賃上げ率が高くなるのは、考えてみれば当然のことである。近年は経営側にも賃上げの意向が強く、組合の要求に満額回答する企業も多い。中には、要求を上回る企業も散見される。ただ、一般的には組合の要求と会社の意向とは乖離があり、そのギャップを侃々諤々議論しながら埋めていくのが普通だ。だからこそ“春闘”である。

 組合がなければ、会社側の提示する額がそのまま通るため、組合があることで、ある程度上がるのは当然である。

 ところで、組合運営には費用がかかり、その負担は組合員が負う。コストパフォーマンスを考えるとどうだろうか。組合の有無により賃上げ率が1%違うということなので、賃金が30万円とすると、3,000円の違いが生じることになる。連合の「2022年労働組合費に関する調査報告書」では、正規従業員組合員1人あたりの月額組合費は約5,000円なので、その差は約2,000円。

 これを「賃上げだけで6割回収できている」と捉えるか、「6割しか回収できていない」と捉えるか。組合の努力・成果は、賃上げだけでなく労働者の様々な待遇の改善に及ぶので、前者で考えてもらいたいものだが、賃上げ以外は、そのメリットをなかなか実感しづらいのも確かだ。その辺は労組も悩みの種だと思う。

 ともあれ、最近の賃上げトレンドは、久々に労働組合の存在意義を示す機会となっている。ミニ白書の指摘を活用して、組合の働きぶりを組合員にアピールしてみてはいかがだろうか。        

 


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