
「定年後にどうするか?」は会社員にとって大きな関心事である。もっとも20代・30代であれば、まだ先のことなので、深く考えることはないだろう。だが、仕事・私生活ともにある程度将来が見えてくる40代後半になると、真剣に考え始めるのではないだろうか。
定年後の選択肢としては、大きく、①自社での雇用延長、②他社への転職あるいは独立、③リタイア、の3つに分けられよう。どれを選ぶかは、40代後半に入ったばかりの45歳と定年直前の59歳とでは違ってくると考えられる。
一般に予想されるのは、45歳時は②や③が多く、徐々に①が増えていく、というものではないだろうか。つまり、定年が近づくにつれて、よりリスクの低い現実的な選択をするようになるということだ。
これに関し、公益財団法人産業雇用安定センターが、大企業に勤務する45歳~59歳の社員を対象に実施した「ミドルシニア世代のセカンドキャリアに関する意識調査」結果を見てみよう。
今後の働き方に対するイメージについて、「まだ決めていない」を除いた全体の回答結果は次の通りである。
①定年後は同じ会社(グループ)で雇用延長し、そこで働くのをやめたい(34.5%)
②定年をもって働くのをやめたい(32.7%)
③定年を機に、転職または独立したい(14.4%)
④定年後は同じ会社で雇用延長し、そこから転職または独立したい(10.7%)
⑤定年前に転職または独立したい(7.8%)
①を雇用延長志向、②をリタイア志向、③~⑤を転職・独立志向とすると、それぞれ34.5%、32.7%、32.9%となり、ほぼ3分の1ずつで拮抗しているのがわかる。
これを40代後半層(45~49歳)と50代後半層(55~59歳)に分けて見ると、以下の通りとなる。
40代後半層:37.3%、32.8%、29.9%(内訳③11.4%、④9.0%、⑤9.5%)
50代後半層:37.9%、22.9%、39.3%(内訳③17.8%、④14.5%、⑤7.0%)
雇用延長志向はほぼ変わらないが、リタイア志向と転職・独立志向は10ポイントもの差が生じている。50代後半層は40代後半層に比べて、リタイア志向が弱まる一方、転職・独立志向が強まっている。リタイア志向が減少する点は予想どおりだが、増えるのは雇用延長志向ではなく、転職・独立志向であった。
定年が近づくにつれて転職・独立志向が増えるのは、自社の継続雇用の仕事内容や賃金に魅力がないことや、予想以上に体力の衰えを感じることなどだろうか。近年の人手不足で、以前よりもシニアの転職市場が拡大していることも背景にあるかもしれない。
それはともかく、実際に定年を迎えてそうするかと言えば、やはり自社で雇用延長をするケースが多いのではないだろうか。筆者が知っている企業でも、9割近くは継続雇用を選択している。
この調査結果を踏まえれば、転職や独立をしたいと思いながらも、様々な事情により、不承不承自社で働いている人が一定割合いることになる。定年再雇用者のモチベーション向上は大きな課題となっているが、この辺りも要因の1つと考えられる。