2025/2/23

ベアの配分方法

 物価上昇が家計を圧迫するなか、今春のベースアップに期待する社員も多いはずだ。各種報道を見ると、2025年のベアは1万円~1万5,000円程度が相場となっている。

 仮にベア1万円の会社であれば、定期昇給とは別に給料が1万円アップするとの期待が高まるが、実際そうなるかどうかはわからない。

 というのも、ベア1万円というのは1人当たりの平均額であり、社員個々人で見ると、1万円以上もあり得るし、1万円以下もあり得るからだ。ベアの配分の仕方は企業によってさまざまである。

 では、ベアの配分方法にはどのようなものがあるのか。代表的なのは次の5つだ。それぞれメリット・デメリットを含め整理してみよう。

1.一律定額配分
 全社員に同じ金額で引き上げるものだ。ベア1万円であれば、全社員1万円上げることになる。

 メリットは、シンプルで公平感がある、説明しやすく社員の納得を得やすい、低賃金の社員の給与改善に効果的、などである。デメリットは、成果や貢献度を反映できない、給与の高い社員にはインパクトが弱い、などである。

2.一律定率配分
 全社員同じ割合で引き上げるものだ。ベア率5%であれば、全社員の給与を5%アップさせる。このため、金額で見ると、高賃金社員に有利で、低賃金社員に不利となる。

 シンプルで公平感がある、説明しやすく社員の納得を得やすい、というメリットは一律定額配分と同様だが、管理職やベテラン社員の給与改善となる点が一律定額配分と異なる。デメリットについても、成果や貢献度を反映できない点は一律定額配分と同じだが、給与の低い社員へのインパクトが弱い点が異なる。

3.重点配分
 若年層、中堅層、ベテラン層といった区分に分け、配分を変える方式である。メリットとしては、企業の給与体系の是正ができる、意図する人材政策を反映できる、などがある。デメリットは、社員に納得のいく説明が必要、対象外となった層のモチベーション低下、賃金体系のバランスが崩れるおそれがある、などである。

4.成果・評価連動型
 評価に応じて配分額を変えるものだ。メリットは、業績向上や社員のモチベーション向上につながる、優秀な人材を厚遇できる、成果主義の文化を醸成しやすい、などがある。デメリットは、評価基準が不明確であったり、 評価制度の精度が低いと不満が生じる、低評価者のモチベーションが下がる、などだ。

5.職務・資格別配分
 職務や資格、役職等に応じて配分するものだ。メリットとして、役割に応じた貢献度を反映できる、専門性を高めるインセンティブになる、組織の求める人材像に合わせた調整が可能になる、などがある。デメリットは、役職ごとの配分基準の納得感を得るのが難しい、一部の職種・職位に偏ると不公平感が出る、配分のルール設計が複雑になる、などだ。

 各方式の採用状況は、経団連「2024年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」によると以下の通りである(選択は「あてはまるものすべて」)。

・一律定額配分(51.1%)
・一律定率配分(10.2%)
・重点配分(若年層)(34.6%)
・重点配分(中堅層)(9.4%)
・重点配分(ベテラン層)(1.1%)
・成果・評価配分(17.3%)
・職務・資格別配分(25.2%)

 合計が100%を超えていることからもわかるように、いずれかを組み合わせて採用する企業も多い。また、昨年は一律定額配分をしたので、今年は一律定率配分をするといったやり方もある。社員の納得感や人事政策・制度との整合性を考慮し、企業にはバランスの取れた配分が求められる。        

 


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