2023年の最後に、来年施行される主な労働関係の法律を整理しておこう。
まず、労働基準法関係では、労働条件明示事項の追加(労基法15条、労規則5条)が挙げられる。労働契約の締結の際、使用者は賃金・労働時間等の労働条件を明示しなければならないが、4月1日から以下の事項が追加される。
①全ての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時における、就業場所・業務の変更の範囲
②有期労働契約の締結時と更新時における、更新上限(通算契約期間または更新回数の上限) の有無と内容
③無期転換申込権が発生する契約の更新時における、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件
①に関し、就業場所・業務に限定がない場合は、すべての就業場所・業務を明示する必要がある。たとえば、就業場所については、「会社の定める営業所」「海外(イギリス・アメリカ・韓国の3か国)及び全国(仙台、東京、名古屋、大阪、福岡)」などとする。在宅勤務もあり得るのなら、「労働者の自宅での勤務」も含める。業務については、「会社の定める業務」「会社内での全ての業務」などとする。
なお、有期労働契約の場合は、当該労働契約の期間中における変更の範囲を示せばよく、契約が更新された場合に可能性がある就業の場所・業務を示す必要はない。
②の有期労働契約の更新回数の上限は、契約の当初から数えた回数でも、残りの契約更新回数でも、どちらでも構わない。
また、②に関して、厚生労働大臣告示(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準)の改正により、更新上限を新たに定める場合や上限を短縮する場合には、その理由を説明することが義務づけられる。「担当業務に関する事業を縮小することになったため」等の説明が必要となる。
③に関し、労働条件の明示を行う際には、正社員等の他の通常の労働者との均衡を考慮した事項(例:業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)について説明をする努力義務が課された(厚労大臣告示)。「Aさんの給与が正社員と異なるのは、正社員が〇〇の業務であるのに対し、Aさんは△△の業務だからです」といった説明をするよう努めなければならないということである。
労基法関係では、裁量労働制の改正もある(4月1日施行)。主な事項としては以下のものである。
①専門業務型の対象業務にM&Aアドバイザリー業務が追加
②専門業務型において、本人同意を得ることや、同意をしなかった場合に不利益取り扱いをしないことを労使協定に定めること
③企画業務型において、対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容について、使用者から労使委員会に対する説明に関する事項を労使委員会の運営規程に定めること
④企画業務型において、対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うことを労使委員会の決議に定めること
もう1つ、労基法関係では、建設事業、自動車運転業務、医師、鹿児島県・沖縄県の砂糖製造業において猶予されていた時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間、特別条項付は年720時間等)が、4月1日から適用開始となる。但し、建設事業は災害時の例外、自動車運転業務は特別条項を付した場合は上限を年960時間とする、医師は特別条項を付した場合は年1860時間とする等の例外がある。
その他の法律では、改正障害者雇用促進法が4月1日から施行となり、法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられる。これに伴い、労働者数40人以上の企業に障害者雇用が義務付けられることになる。また、労働時間20時間未満は雇用率の算定対象外であったが、精神障害者、重度身体障害者、重度知的障害者等は、週の所定労働時間が10時間以上20時間未満であっても算定対象となる。