2025/8/10

新入社員は福利厚生を重視

 懲りずに新入社員調査シリーズの第3弾。前回触れた産業能率大学総合研究所の「2025年度(第36回)新入社員の会社生活調査」で、最も関心を惹いたのは「就職先を選ぶ際に重視した点」で、「福利厚生」(56.4%)が「業種」(53.9%)、「給与水準」(42.8%)を抑えてトップに立ったことである。「仕事内容」という項目もあるが、これも23年度の3位(36.1%)から6位(24.1%)に下がっている。

 会社選びにあたって、業種や仕事内容よりも福利厚生を重視というのはとういうことだろうか? 確かに福利厚生が充実していれば、社員を大切にしてくれそうなイメージがあるし、安定して働き続けることもできそうである。

 2026年卒の大学生・大学院生を対象としたマイナビの「大学生キャリア意向調査3月<就活生のワークライフバランス意識>」によると、企業に安定性を感じるポイントとして、最も回答が多かったのは「福利厚生が充実している(57.3%)」である。以下、「安心して働ける環境である(52.5%)」、「業界大手である(44.1%)」と続く。福利厚生の充実度が、最近の若者が重要視する「安定性」を測る指標になっていることがわかる。

 ところで、福利厚生といえば、保養施設やスポーツクラブの優待利用といった余暇・健康関連が思い浮かぶかもしれないが、学生が望むのはもっとオーソドックスなものである。

 マイナビの調査で、学生が就職先に求める福利厚生を聞いたところ、半数以上の学生が「交通費支給制度(57.0%)」、「住宅手当・家賃補助制度(53.6%)」を回答しており、生活費の負担を軽減させる制度へのニーズが多かった。

 交通費支給は、非課税の範囲内であれば、ほとんどの企業で行われていると思う。一方、住宅手当等の支給・補助は、近年減少傾向にある。東京都「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)によると、住宅手当を支給する企業は前年0.5ポイント減の34.7%である。ただ、近年の賃貸相場の高騰を背景に、新卒者や若手転職希望者のニーズは高い。このような状況を踏まえ、人材争奪戦で優位に立つべく、住宅手当等の復活や増額を実施する企業も一部見られるようになっている。

 多くの企業は、採用にあたって福利厚生がそこまで重要であるとの認識には至っていないと思う。せいぜい、応募者が迷った際に考慮するもの程度に考えているのではないだろうか。

 ところが、少なくとも新卒者の意見は異なる。福利厚生は、企業が考えている以上に採用の重要なファクターになっている可能性がある。人事施策の中では、どちらかといえば傍流、副次的な存在であった福利厚生が中核的な存在になる時代が来るのだろうか。         

 


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