2025/8/3

新入社員は年功序列を望む?

 前回に続いて新入社員の意識調査結果の話題である。産業能率大学総合研究所が発表した「2025年度(第36回)新入社員の会社生活調査」では、成果主義よりも年功序列を望む者が多いことが示された。

 「年功序列」と「成果主義」のどちらを望むか尋ねたところ、「成果主義」43.6%に対し、「年功序列」は56.3%だった。「年功序列」が「成果主義」を上回るのは初めてとのことだ。近年の若者は競争を避けると言われるが、その現れだろうか。

 もっとも、新入社員なので成果主義や年功序列の具体的なイメージがあるわけではないだろう。結果を求められてギスギスしていそうな成果主義よりも、年功序列のほうがのんびり過ごせそうで自分に合っているといった単純な思いかもしれない。そもそも、今の若者が「成果主義」に対して、あまり良いイメージをもっていないことも考えられる。「成果を追い求めた結果が、今のこれかよ」という冷めた視線があるからだ。

 振り返ってみれば、この30年間、企業の人事施策は年功序列から成果主義への流れだった。ちょうど「失われた30年」と重なる。あたかも、成果主義は「失われた30年」の戦犯の1つのようである。

 もちろん、成果主義への移行が「失われた30年」の一要因かどうかはわからない。原因というより結果かもしれない。経済成長が停滞したために、企業は年功序列に基づいて社員を処遇する余裕がなくなり、成果主義が求められるようになったのも事実だからだ。

 また、成果主義が本当に進んだかの疑問もある。成果主義をうたいながら、実態としては「年功序列」が根強く残っている企業もたくさんあるからだ。たとえば、役割等級や職務等級を導入しながらも、従来の職能資格等級で行われた年功的な運用から脱しきれない企業は多い。そう考えると、成果主義に転換できなかったことが「失われた30年」の一要因となり、真逆の結論となる。

 ともあれ、新入社員の「年功序列」的なものへの期待感は高まっている。調査では、「年功序列」以外にも、「終身雇用」を望む割合は69.4%、「同じ会社に長く勤めたい」51.8%といずれも増加傾向にあることが示された。

 今後、この傾向がさらに強まれば、成果主義人事から年功主義人事に切り替える企業が出てくるのだろうか。そこまでいかなくても、新卒採用にあたり、「当社は年功的です」といのがアピールポイントになる可能性はある。         

 


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