男性育休の取得率は2022年度で17.13%となっている(厚労省「令和4年度雇用均等調査」。大企業や公務員を対象にした調査ではもっと高い数字が出ているが、民間企業全体で言えば、男性の育休取得はまだまだ発展途上である(国家公務員の2022年度の男性育児休業取得率は72.5%!)。
以前、日経新聞で、男性の育児休業の取得が進まないのは、制度の問題ではなく意識の問題との記事(書評)があり、非常に納得感があった。日本の男性の育休制度は諸外国の中でもトップクラスの充実度であるが、それにもかかわらず取得率が低いのは、男性が取得しづらい職場風土にあるとの指摘である。
これを裏付けるのが、パーソル総合研究所が11月に発表した「男性育休に関する本音調査」である。男性の中で、育休を「取らない(取るつもりがない)」、「1か月未満」を選んだ人の理由(3つまで回答)として挙げられた上位を見ると、
「勤務先の人員が不足している(代替人員の不足)」21.4%
「上司や同僚に迷惑をかけたくない」19.2%
「育休取得中もしくは復職後の収入が減少してしまいそう」17.5%
「勤務先に前例が乏しい」15.8%
「勤務先に制度がない」13.7%
となっている。上の2つはほぼ同じ要因と言え、要は「周りの目が気になるので取れない」ということだろう。「前例が乏しい」「制度がない」も、男性は育休を取ってはならないのが職場の暗黙の了解であること思わせる。なお、「制度がない」ことはないはずなので、社員にそう誤認させるくらい、男性の育休取得は例外的事項、さらに言えば想定外のことなのだろう。
日経の記事では、育休を義務化して強制取得させるしかないとの指摘だったが、確かにそれも一法である。現に、同様に周囲を気にして取得が進まなかった年次有給休暇は5日取得が義務化された。ただ、年休と違って、育休の対象者は全社員ではないので、実際にそのような義務化は困難と思われる。
となると、休むことでなるべく周囲に迷惑をかけない方法を考えなければならない。1つは、育休取得によってその分の負担を負うことになる上司・同僚へのメリットの提供である。
具体的には、負担が増えたことへの対価としての“応援手当”の支給だ。愛媛県など一部の自治体などで実施されているほか、三井住友海上では、取得者の職場全員に最大10万円の一時金を支給している。また、建築のコスモスモアでは、月最高10万円を部門長の判断で業務引継ぎ者に配分・支給する「子育て休業応援手当」を創設している。
一見、人件費が増えそうだが、育休取得者は無給となるので、その分を上司・同僚に振り向けると考えればよいかもしれない。中小企業には、手当を補助する両立支援等助成金もある。
職場のメンバーにメリットがあれば、取得者の“罪悪感”も軽減し、長期取得の促進にもつながるだろう。
取得者本人の収入補填をする仕組みもよいが、「自分だけ得をするのはどうか」と考えてしまうのが日本人の性である。男性に(もちろん女性にもだが)気兼ねなく取ってもらうための仕組みとして、応援手当は一考に値すると思う。