2026/1/4

男女雇用機会均等法40年

 1986年4月1日に施行された男女雇用機会均等法は、2026年に40年という節目を迎える。日本の雇用慣行において、性別による差別が長く当然視されてきた中で、本法は「男女の均等な機会と待遇」を明確に掲げた画期的な法律であった。40年の間に社会や企業の姿は大きく変化したが、その変化を促した基盤の1つに均等法の存在がある。

 施行当初の均等法の内容は、現在の感覚から見れば限定的であった。募集・採用、配置、昇進、教育訓練、福利厚生などについて、男女差別的な取扱いを「してはならない」ではなく、「努力義務」とする規定が中心であり、法的拘束力は弱かった。また、結婚や妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止も明確ではなく、実効性には大きな課題があった。当時は、男女別コース制や女性の補助的業務への固定化が一般的であり、均等法はそうした慣行に一石を投じる存在であったと言える。

 その後、均等法は社会の変化に合わせて段階的に改正されてきた。1997年改正では募集・採用や配置・昇進における差別が禁止規定となり、2007年改正では間接差別の禁止や妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止が明文化された。さらに、セクシュアルハラスメント防止措置の義務化など、職場環境整備に関する規定も強化されている。現在では、均等法は単なる理念法ではなく、企業に具体的な対応を求める実践的な法律へと変容している。

 加えて、均等法を軸としつつ、周辺領域でも規制は拡充されてきた。たとえば、妊娠・出産、育児・介護と仕事の両立支援に関する制度整備は、均等な就業継続を支える重要な要素となっている。また近年では、ハラスメント対策の重要性が高まり、2025年には就職活動中の学生等に対するハラスメント、いわゆる就活ハラスメントについても、防止措置を講じることが事業主の義務とされた(2026年10月施行予定)。採用選考の場面も職場の一部ととらえ、企業の責任を明確にした点は、均等法の理念を一層前進させるものである。

 男女雇用機会均等法が果たしてきた最大の役割は、「性別による差は是正されるべきものだ」という価値観を、社会と企業に浸透させた点にある。女性総合職の拡大、管理職への登用、育児と仕事の両立を前提とした制度設計など、今日では多くの企業で当然視されている取り組みは、均等法の積み重ねなしには実現しなかったに違いない。また、企業が人材活用を考える際に、「性別」ではなく「能力・役割」を基準とする発想への転換を促した点も評価できる。働いて働いて働き抜かなければ、男性と同じステージに上げてもらえなかったことを思えば、大きな進歩ではある。

 一方で、問題が解消されたわけではない。賃金水準をはじめ、昇進スピードや管理職比率、職務内容、キャリアの選択肢などにおいて、男女間の差は依然として存在する。制度上は中立であっても、長時間労働を前提とした働き方や、無意識のバイアスが結果として不均衡を生んでいるケースも多い。今後の均等法の課題は、形式的な均等から一歩進み、実質的な公正をいかに実現するかにある。

 その意味で、施行40年を迎える男女雇用機会均等法は、完成された制度ではなく、社会の変化に応じて進化を続けなければならない。企業側も、次の均等法を見据えた取り組みが求められる。

 企業にとっては、法令遵守にとどまらず、多様な人材が力を発揮できる環境をどう整えるかが、持続的成長の鍵となる。それが当たり前のように意識され、実行されれば、もはや均等法など不要ということだ。10年後、20年後、あるいは30年後になるかもしれないが、均等法がその役割を終えるときが来ることを望む。         

 


 過去記事は⇒ミニコラムもご参照ください。
 お問い合わせは⇒お問い合わせフォームをご利用ください。

にほんブログ村 経営ブログ 人事労務・総務へ

にほんブログ村 士業ブログ 中小企業診断士へ
 

PVアクセスランキング にほんブログ村
にほんブログ村に参加しています。