2022年7月の女性活躍推進法の改正に伴い、男女の賃金格差の開示が大企業に義務付けられた。2023年3月決算の会社は、本年6月までの開示が求められるので、これから本格的にスタートすることになる。
ところで、男女の賃金格差はどれくらいあるのだろうか。先月公表された厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」で確認してみたい。
一般労働者(短時間労働者以外の労働者)の月額賃金は、男性34万2,000円(前年比1.4%増)、女性25万8,900円(同2.1%増)である。男女間賃金格差(男性=100)は75.7(前年比0.5ポイント上昇)となっている。この数値は長期的に増加傾向にあり、格差は徐々に縮まっているといえる。
格差縮小に大きな影響を与えたのは、1986年に施行された男女雇用機会均等法である。1976年から1986年までの数値は58.8から59.7とわずか0.9ポイントの上昇に過ぎないが、1986年から1996年は3.1ポイントの上昇を示している。その後も1996年から2006年は3.1ポイント、2006年から2016年は7.1ポイント、2016年から2022年が2.7ポイントの上昇となっており、格差は着実に縮まりつつある。
とはいえ、現状でも女性の賃金は男性の4分の3である。要因としては、女性の方が大学進学率が低い、役職者が少ない、中小企業労働者が多い、などが考えられる。それはそうなのだが、同じ条件、つまり同学歴、同役職、同規模であっても男女差がある。具体的には以下の通りである(カッコが女性)。
●学歴別
高校297.5千円(222.9千円)、大学392.1千円(294.0千円)
●役職別
部長級593.1千円(520.1千円)、課長級495.6千円(435.0千円)、係長級379.1千円(337.6 千円)
●規模別
大企業 386.6千円(278.2千円)、中企業331.2千円(257.0千円)、小企業308.1千円(241.3 千円)
ちなみに初任給は、高卒で男性183.4千円、女性177.6千円、大卒で男性229.7千円、女性227.2千円である。大卒に関しては、ほとんど差はない。これが30年後には、14万円もの差が現状では出ているのである(大卒男性50~54歳:500.0千円、女性:364.2千円)。
このように個別にみても差があるのは、1つの要因に他の要因がからんでいるためと考えられる。たとえば、同じ大卒であっても、男性の方が高役職者が多く、大企業の社員が多いために差が生じている、ということだ。
したがって、このような要因を取り除いて差を見るには、同学歴、同役職、同規模で比較する必要がある。そうすれば、大卒50~54歳で14万円の差はつかないはずだ。
ただ、男女差がなくなることもないだろう。賃金には家族手当や住宅手当が含まれており、これらの支給対象は女性よりも男性の方が圧倒的に多いと考えられるからだ。男女賃金格差是正の道のりは遠い。