シニア社員、特に60歳定年退職後に65歳まで継続雇用されている社員のモチベーション向上が大きな課題となっている。
経団連の「2022年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」によれば、企業の8割近くが、60~64歳の高齢社員のモチベーションに課題を感じている(「大いに感じている」22.5%、「やや感じている56.1%」)。
ちなみに、65歳以降だと5割(「大いに感じている」10.6%、「やや感じている」39.2%)にまで減少する。65歳以降の場合は、年金の受給資格があることから、どちらかと言えば好きで働くシニアの割合が多くなるためと考えられる。
一方で、60~64歳の場合、企業は雇用義務があるので雇わざるを得ず、社員は年金をまだもらえないので働かざるを得ず、というように仕方なく雇い・雇われているケースが多い。そのような状況でモチベーションを高く持つのが困難なのは容易に想像できる。
とはいえ、企業もそういった現状を放置しているわけではなく、シニア社員のモチベーション向上に取り組んでいる。どのような施策を講じているか、同調査を見ると、上位に挙がったのは以下のものである(複数回答)。
①人事評価の実施(79.8%)
②賞与・一時金の支給(71.4%)
③勤務時間・日数など柔軟な勤務制度の適用(55.2%)
働きぶりを認めて報酬に反映させることや、社員のニーズに即して働けるようにすることが主流となっているのがわかる。もっともな施策といえるが、「最も効果が高い施策(1つを回答)」として挙げられたのは、次のものである。
①基本給水準の引上げ(32.5%)
②賞与・一時金の支給(22.7%)
③人事評価の実施(19.6%)
「まずは給与を何とかしてほしい」というのが、多くのシニア社員の願いのようだ。特に本調査は経団連所属企業のものなので、現役時は結構な給与をもらっていたことが推察され、現状とのギャップは大きいはずである。
「基本給水準の引上げ」は、「実施している施策」としては4番目の36.7%であるが、「実施を検討している施策(複数回答)」では、トップの45.7%となっている。これまではシニア社員の賃上げに消極的であったが、今後は前向きな姿勢を示していることがうかがえる。
と言っても、シニア社員だけを特別に上げるのではなく、最近の物価高に伴う全社的な賃上げの一環と思われるが、それでも、賃金の引き上げにより、モチベーション向上に一定の効果は見込めるだろう。逆に、現役社員は上がったのに、再雇用者は変わらないということになると、さらなるモチベーションダウンを招くのは間違いない。
このところ大企業を中心に賃上げブームの様相を呈しており、対象は正社員だけでなく、非正規社員にも広がっている。先日も、イオンがパートの時給を7%引き上げることが話題となった。企業としては、再雇用者などのシニア社員の賃上げをどうするかについても検討しなければならない。