2021/6/13

定年再雇用の賃金低下

定年再雇用の賃金低下
 パーソル総合研究所が5月28日に発表した、「シニア従業員とその同僚の就労意識に関する定量調査」結果によると、定年後再雇用によって、約9割は年収が減少し、全体平均では年収が44.3%減ったとのことだ。詳細を見ると、「50%程度下がった」が22.5%、「50%よりも下がった」が27.6%となっており、深刻さがうかがえる。

 再雇用後は仕事内容が変わるので低下も仕方がないという意見もあるだろう。この点について、仕事内容の変化による低下割合は、

・定年前とほぼ同様の職務:39.3%
・定年前と同様の職務だが業務範囲・責任が縮小:49.7%
・定年前とは全く異なる職務:55.9%

 と変化が大きいほど低下割合も大きいことが見て取れるが、「定年前とほぼ同様の職務」であっても4割ほど低下していることがわかる。再雇用というだけで4割減となってしまうことに、当該シニア社員は釈然としない思いだろう。

 もっとも、若年社員からすれば、元々高すぎだったのだから減らされるのは当然という見方も強いようだ。同調査で、「私の会社では、シニア社員が給料を貰いすぎていると思う」は、50代の15.9%に比べて、20代は30.0%、30代は27.6%と倍近い。

 シニア社員のモチベーションを考えて賃金を引き下げずにいると、今度は若手社員のモチベーションが低下してしまう懸念が出てくる。一概にシニア社員のことだけを考慮すればよいというわけではないのが、本問題の難しいところである。

 折しも、6月4日に公務員の定年を65歳とする法案が成立し、60歳以降の給与は、60歳時点の7割程度となることが決まった。民間からすると、7割もらえる公務員の待遇のよさをうらやむ人も多いに違いない。

 対応に向けて1つのヒントとなる考え方が、6月10日の日経新聞の「私見卓見」欄に寄稿されていた。どういうものかというと、シニア社員にこそジョブ型雇用を導入すべきとの意見である。シニア社員は、働き方の意向や健康状態に大きな差があるので、個人の希望を踏まえ、会社が職務内容や処遇を個別に設定するというものだ。自社にとってのジョブ型雇用の先行事例にもなるとの案である。

 ジョブ型雇用の本旨といえる職務内容に応じた賃金を設定できるか(シニア社員から見れば、これまでの賃金ではなく担当職務に応じた賃金となる、つまり人によって低下割合が違ってくることに納得できるか)という問題はあるが、シニア社員個々人の特性に合わせて処遇を行うというのは、再雇用をはじめとする雇用延長制度の基本となるだろう。手間はかかるが、当のシニア社員のみならず、若手社員への影響も含め会社全体にとってメリットの大きい方法と言える。      
 

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