2025/3/30

入社1年以内の退職理由

 いよいよ4月。今週、入社式を迎える新卒者も多いだろう。期待に胸を膨らませる人たちに冷や水を浴びせるようで恐縮だが、大卒の1割、短大卒・高卒の2割が入社1年以内に退職してしまう。

 では、入社1年以内に退職する理由には、どのようなものがあるのだろうか。今月公表された労働政策研究・研修機構の「第3回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査」によると、主な退職理由の上位は以下の通りである(複数回答、正社員・全学歴、数字は男・女)。

①人間関係がよくなかったため(39.1%、45.1%)
②肉体的・精神的に健康を損ねたため(30.9%、41.2%)
③仕事が上手くできず自信を失ったため(30.0%、32.9%)
④労働時間・休日・休暇などの労働条件がよくなかったため(21.7%、29.1%)
⑤自分がやりたい仕事とは異なる内容だったため(26.5%、22.0%)

 調査では、勤続年数別の数字を示しており、入社1年以内とそれ以降では、結構な違いが見られる。たとえば、上記の①②③は、入社1年以内が突出して多い。つまり、新卒1年目の社員に対しては、人間関係・業務遂行上の悩み相談、精神的な健康のケアが、離職防止のために特に重要と考えられる。一般に活用されているメンター制度や人事部門による定期的な面談は、やはり有効といえそうだ。

 一方、若年者の離職理由として思い浮かぶ「キャリアアップのため」や「会社の将来への不安」は、入社1年以内は少なく、勤続年数が増えるにつれて高まる傾向がみられる。特に男性には顕著で、「キャリアアップするため」は、1年以内の12.2%に対し、10年超だと42.3%に上る。また、「会社に将来性がないため」は、1年以内の18.7%に対し、10年超だと42.3%となる。

 ①~③ほどではないにしても、⑤の「自分がやりたい仕事とは異なる内容だったため」も1年以内が他と比べて多い。いわゆる「配属ガチャ」によって生じるケースもあれば、希望する部署に配属されたものの、実際の仕事内容がイメージと異なっていたというケースもあるだろう。インターンの充実や、入社前の職場見学、職場体験、社員との面談を深めるなどの方策が求められる。

 このように、若年者の退職といっても、その理由は入社1年以内と他では違いが見られる。1年目に特有の理由に着目し、それに応じた対策をとることが必要である。

 大卒の場合、入社3年で3割が退職するが、その中でも多いのは入社1年以内の退職である。若年者の離職に頭を悩ませている企業は、まず、入社1年目の退職を防ぐことに注力してほしい。        

 


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