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2019/3/4

非正規社員の賞与と退職金

先月、非正規社員への賞与と退職金の支給を認める画期的な2件の判決が示された。いずれも1審の地裁で認められなかったものが、2審の高裁で逆転判決となったものである。

 同一労働同一賃金については、昨年6月に改正パート有期契約労働法が成立し、2020年4月(中小企業は2021年4月)から施行されることとなっている。今回の判決は、現行の労働契約法に基づいて行われたものであるが、労契法の内容が改正パート有期労働法に承継されることから、2020年以降も有効な判例になると考えられる。

 2件の概要を見てみよう。

 1件目は、大学でフルタイムのアルバイト職員として秘書業務に従事した女性が、賞与の不支給など正職員らとの待遇格差を違法として差額の支給を求めたものだ。
 1審の大阪地裁は女性の全面敗訴に終わったが、2月15日に行われた2審の大阪高裁では、大学に約109万円の支払いを命じた。翌日の日経新聞朝刊は、「裁判長は、判決理由で、大学の賞与額が基本給に連動し、就労自体への対価の趣旨を含む点を踏まえ『有期契約社員へは正社員の約8割の賞与があるが、アルバイト職員に全くないのは不合理だ』と指摘。約6割が支給されるべきだと指摘した」と報じている。

 2件目は、東京メトロの子会社で売店販売員を務めていた4人が、正社員との間に不合理な待遇格差があるとして損害賠償を求めたものである。
 1審の東京地裁は請求の大半を棄却したが、2月20日の2審の東京高裁において、「裁判長は、『長期間勤務した契約社員に退職金の支給を全く認めないのは不合理』とし、4人のうちの2人に退職金45万~49万円を支払うように命じた」(2月21日付日経新聞朝刊)。
 さらに、「裁判長は、原告の2人が10年前後にわたって勤務していたことから『退職金のうち、長年の勤務に対する功労報償の性格をもつ部分すら支給しないのは不合理だ』と述べた。金額は正社員と同じ基準で算定した額の『少なくとも4分の1』とした。」(同新聞)。
 なお、原告は支給額が低いとして上告する方針だという。

 1件目については、賞与が成果連動ではなく、基本給に連動する形で一律に支給していたことが要因と考えられる。「働いたこと自体への対価」という解釈である。
 基本給等の扱いについて具体例を示した「同一労働同一賃金ガイドライン」では、賞与で”問題となる例”として、
 
賞与について、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給しているA社においては、通常の労働者には職務の内容や会社の業績等への貢献等にかかわらず全員に何らかの賞与を支給しているが、短時間・有期雇用労働者には支給していない。(下線は筆者)

 を掲げている。下線部が今回判示された「働いたこと自体への対価」と同趣旨と思われる。ガイドラインはあくまで2020年4月以降の新法に適用されるものだが、その考え方は、現行の労契法やパート労働法に既に取り込まれているといえる。
 大半の企業は、少なくとも賞与の一部は就労そのものに報いるために支給しているはずだ。そうすると、その部分は非正規社員にも支給しなければならないことを、あらためて裁判所が指摘したわけである。
 
 2件目は、非正規社員に退職金の支給を認めた初めての司法判断という点で、よりインパクトは強い。ちなみに、「同一労働同一賃金ガイドライン」では、退職金についての例示はなく、「この指針に原則となる考え方が示されていない退職手当、住宅手当、家族手当等の待遇や、具体例に該当しない場合についても、不合理と認められる待遇の相違の解消等が求められる。このため、各事業主において、労使により、個別具体の事情に応じて待遇の体系について議論していくことが望まれる」と、賞与に比べてあいまいな表現となっている。あくまで”望まれる”であり、無理に支給する必要はないとの解釈もできそうである。
 
 ただ、この判示が出たことで、「長年の勤務に対する功労報償」部分は支給すべきとの認識が強まる可能性がある。たとえば、ポイント制退職金でいえば、勤続ポイント分は支給の必要があるという結論になるかもしれない。

 少なくとも後者の退職金は最高裁で争われる見込みだ。労働者側から上告するということなので、流れからして再度の逆転敗訴にはならないという読みだろう。最高裁で同様の判断が下されれば、非正規社員への退職金はより現実的なものとなる。ともあれ、重要な判決となるのは間違いない。

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