重本コンサルティングオフィス
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2018/4/23

日本郵政の住居手当廃止

 
 先日、マスコミが報じた日本郵政の住居手当廃止は、人事労務実務に関心の高い人たちにとって“衝撃的”だったのではないだろうか。筆者もその記事には瞠目した。

 同一労働同一賃金の法制化が迫り、企業はどのように対応すればよいか不安を感じている。そのようななか、日本郵政では正社員の労働条件を引き下げることて非正規社員との均衡を図るという手法をとった。理論上の選択肢としてはありえても実際には困難というのが人事の常識である。たとえば筆者がコンサルで提案するにしても、通常は非現実な案として最初から除外する。

 内容をあらためて確認すると、

・今年の10月から、
・転居を伴う転勤のない条件の正社員(約2万人)のうち住居手当を受け取っている約5千人を対象に、
・当該住居手当を10年間かけて10%ずつ段階的に削減・廃止する

 というものだ。

 廃止の発端は、日本郵政グループ労働組合(JP労組)が今春闘で、正社員だけに認められている「年末年始勤務手当」「住居手当」「寒冷地手当」「隔遠地手当」「扶養手当」の5手当を非正規社員にも支給するよう求めたことにあるという。
 これに対して、会社側は次の内容を逆提案した。

•年末年始勤務手当……年始手当は非正規社員にも支給。年末手当は廃止
•住居手当……転居を伴う転勤がない正社員への支給を廃止
•寒冷地手当……正社員に対する支給額を削減
•隔遠地手当……正社員に対する支給額を削減
•扶養手当……今後も協議を継続

 当然ながら組合は反対したものの、10年間もの長期にわたる“激変緩和措置”を設けることで折り合ったという。

 最大の関心は、今回の日本郵政の対応が他企業のモデルとなるかどうかだろう。「このやり方が認められるのなら、わが社も是非」という企業は多いはずだ。

 いうまでもなく今回の内容は、正社員にとって不利益変更に該当する。不利益変更が合理的と認められるための要件は労働契約法第10条に記載があるが、端的に言えば、変更の必要性が労働者の被る不利益を上回るかどうかである。ただし、賃金等の重要な労働条件の変更は、「高度な変更の必要性」が求められるとされ、住居手当等の諸手当もこれに該当する。

 今回のポイントをまとめると次のようになる。
 
・正規・非正規の格差是正という大義名分があること。
・経過措置として異例の10年にわたる長期の期間を設けたこと。
・代替措置を設けたこと(正社員には賞与の支給月数の引上げや初任給の引上げを実施するとのこと)。
・これらにより有力労働組合の合意を得たこと。ちなみにJP労組は組合員24万人(正規18万人、非正規6万人)、単一労組として日本最大である。

 こういった要因から、少なくとも労使間では合理性があると判断とされたのだろう。

 合意の背景には、正規・非正規の待遇格差の解消が求められるなか、グループ全体の収益環境は厳しく、正規社員に合わせるのは困難である一方、人員確保のために非正規社員の待遇改善が必要という喫緊の課題があったとの指摘もある。そこで今回は正規社員に我慢をしてもらおうということだ。

 このように本件は特殊とまではいえないものの、合意に至ったことに一定の要因がある。したがって、どの企業であっても今回の対応ができるとは限らない。日本郵政においても、とりあえず決定はしたものの、今後、本件に同意できない社員が訴え出るなどのリスクもある。

 ただ、同一労働同一賃金への対応に1つの方向性を示したのは確かで、主流にはならずとも同様の対応をする企業が出てくるのは間違いないと思われる。


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代表者:重本 由宇
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