2025/11/23

厚労省カスハラ指針案

 11月17日、厚生労働省の労働政策審議会の分科会で、職場のカスタマーハラスメント対策を企業に義務づける改正労働施策総合推進法の施行期日を2026年10月1日とする案が示された。

 改正法第33条4項では、厚労省が指針を定めることが規定されており、分科会ではその指針(「職場におけるカスタマーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針」)の素案が提示された。

 構成内容は、1.カスハラの内容、2.事業主・労働者の責務、3.事業主の雇用管理上講ずべき措置、4.他の事業主への協力、5.カスハラの要因を解消するための事業主の取組、6.自社の労働者以外の者への取組、である。枠組みとしては、パワハラやセクハラと同様である。

 1ではカスハラの定義を、「職場において行われる①顧客等の言動であっ て、②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から ③までの要素を全て満たすもの」としている。

 さらに、「顧客等」に該当する具体例を示しており、その中に、
・取引先の担当者
・企業間での契約締結に向けた交渉を行う際の担当者
 が挙げられている。一般にカスハラといえば店舗などでの消費者の行為が思い浮かぶが、法人営業をはじめとする企業間取引でもカスハラに該当しうることが、あらためて明示されたといえる。

 また、カスハラ行為の具体例も示されており、身体的・精神的な攻撃や威圧的な言動、執拗な言動などのほかに、
・契約内容を著しく超えたサービスの提供を要求すること
・契約金額の著しい減額の要求など、対応が著しく困難な又は対応が不可能な要求をすること
 も挙げられている。程度の差はあれ、法人営業経験者には思い当たることがあるだろう。

 対消費者と違って、法人営業等の企業間取引では、あからさまな暴力や暴言を受けることは少ないと思うが、取引が継続的で金額も大きく、失注が会社の業績や社員の評価に大きな影響を及ぼすため、理不尽な要求や態度があっても我慢を強いられるケースが多い。

 セクハラやパワハラがそうだったように、カスハラも法制化により社会的な関心が一層高まるはずだ。企業間取引で「買い手」の立場にある人にも、浸透していくに違いない。これを機会に「カスハラは許さない」との機運が醸成され、理不尽な思いを強いられている人たちが減ることを望む。         

 


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