2018/1/29

春闘で何を交渉しているのか

 春闘が始まった。今年は労働者側の4%の賃上げ要求に対し、使用者側は3%を見込んでいるとのことだ。どのような形で妥結するか注目しておきたい。

 ところで、春闘といえば、このように賃上げをめぐって労使が丁々発止のやり取りをする姿が思い浮かぶが、テーマは必ずしも賃上げだけではない。

 では、どのようなことを話し合っているのだろうか? 経団連が1月16日に公表した「2017年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」によれば、協議内容は、月例賃金の賃上げ、賞与・一時金の支給額、賃金以外の事項の3つに大きく分けられる。以下、調査結果を踏まえながら、詳細を見ていこう。

1.月例賃金の賃上げ
 具体的な中身は次のとおりである(%は企業の割合)。

●月例賃金について、春季労使交渉・協議で要求された内容(複数回答)
 ・定期昇給の実施、賃金体系の維持           70.2%
 ・基本給のベースアップ                   58.9%
  ・初任給の引上げ                       16.2%
  ・諸手当の増額                        13.7%
  ・有期契約社員・パートタイマー等の賃金の引上げ  13.4%
  ・定年後継続雇用労働者の賃金の引上げ         7.1%
 ・割増賃金率の引上げ                     2.8%

 月例賃金について、組合からの要求事項は定昇とベアが主体となっており、他の項目の関心は高くないことがわかる。 このうち初任給の引上げは、「月例賃金について、労働組合等からの要求とは別に、会社の施策として決定した内容」で2番目に多い項目(42.9%)となっており、主に会社側からの提案により議題となっているケースが多いと見られる。
 
2.賞与・一時金の支給額
  賞与・一時金を労使交渉で決定しているのは75.7%と4社に3社となっている。残りの約25%は、業績連動方式など自動的に決める仕組みをもっているケースが多数を占めると思われる。

3.賃金以外の事項
●賃金以外について、議論した内容(複数回答)
  ・時間外労働の削減・抑制         64.5%
 ・年次有給休暇の取得促進        47.9%
 ・育児関連施策の導入           33.0%
  ・介護関連施策の導入           23.8%
  ・女性の活躍推進に向けた取組み    20.6%
  ・定年後継続雇用労働者の処遇改善  19.5%

 働き方改革やワークライフバランス関連が上位を占め、これらに対する労使の関心の高さがうかがえる。「その他」も29.8%あり、企業によって多様な項目が協議対象となっていることがわかる。

 このように春闘では、賃上げ以外にも多岐のテーマにわたって検討・交渉がなされている。
 2017年の労働組合の組織率は17.1%で、6年連続過去最低を更新しており、組合の存在感は薄れつつあるのも事実だが、健全な経営のために使用者に適切な緊張感を与える存在ともいえる。互いの立場を尊重しながら、企業と社員をよりよい方向へと導く場として、春闘を活用してほしいものである。


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