2025/2/16

自分の市場価値を高めているか

 日本生産性本部は1月30日、第16回「働く人の意識に関する調査」結果を発表した。この調査では、「あなたに勤め先から支払われている給与は、あなたのキャリアや能力、成果から見て、世の中の相場に見合っていると思いますか」と尋ね、自身の市場価値に対する認識を調べている。

 結果は、「相場より低いと思う」、すなわち現在の給与よりも自身の市場価値が高いと考えている人が35.7%で、最も多かった。
「相場に見合っていると思う」すなわち市場価値に合った妥当な給与だと思っている人は33.5%、「相場より高いと思う」すなわち自身の市場価値よりも多くの給与を受け取っていると回答した人は4.2%、「わからない」が26.5%である。

 この点については、3年前の当コラム「自分の市場価値」でも触れたが、今回も同様の結果となった。自分の市場価値は、今の給与以上はあると考える人が多数を占めるということだ。

 では、社員は自らの市場価値を高めるために、どのような取り組み(=自己啓発)をしているのだろうか。同調査によると、自己啓発を「行っている」が12.5%、「行っていないが、始めたいと思っている」が21.9%、「特に取り組む意向は無い」が62.9%と、やや心もとない結果である。しかも、この4年間で「行っている」と回答した割合は減少傾向にあり、2021年1月には20.1%だった。

 自己啓発の方法(複数回答)については、「書籍・雑誌等を読む」59.9%がトップで、以下、「Webなどのオンラインツールの利用」46.0%、「社内外の勉強会、セミナーへの出席」32.8%、「通信教育の受講」22.6%、「大学・大学院・専門学校等の教育機関で受講」8.0%と続く。本格的なものより、手軽に取り組めるものが主体となっていることがうかがえる。自己啓発の取り組み度合いにも濃淡がありそうだ。

 そもそも社員はどのような能力を伸ばしていきたいと考えているのか。具体的に伸ばしていきたい特定のスキルや能力として挙げられた(3つまで選択)のは、「ITを使いこなす一般的な知識・能力(OA・事務機器操作(オフィスソフトウェア操作など))」が16.5%と最も多く、次いで「専門的なITの知識・能力」12.5%、「コミュニケーション能力・説得力」12.2%、「チームワーク、協調性・協働力」10.3%、「語学(外国語)力」9.7%と続く。他にも、「職種に特有の実践的スキル」「高度な専門的知識・スキル」なども9%を超えており、多様なものに分かれている。その中で、「特にない」が42.5%もあるのが目立つ。先の自己啓発意欲の低さにも表れているように、能力向上への問題意識が低いことは否めない。

 近年、政労使をあげて賃上げの大合唱だ。これを受け、社員も自分の給与が上がるのは当然と考えているかもしれない。実際、給与が上がった人も多いだろう。しかしその上昇は物価の影響によるものであり、必ずしも自身の市場価値が向上したとは限らないことを認識する必要がある。        

 


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