2024/9/29

経営管理職は労働者よりも長生き

 カードル(経営管理職)は労働者(ブルーカラーワーカー)よりも長生きをするというフランス国立統計経済研究所(INSEE)のレポート(「職種別平均余命調査」)を、労働政策研究研修機構が紹介している。

 カードルとは、修士以上の高等教育を受けたエリート管理職・専門職で、日本のキャリア国家公務員のイメージだ。スタート地点は同じで、そこから認めれて昇進していく日本企業の管理職とは違い、最初から栄達の道が開かれている人たちである。

 レポートの要点は以下の通り。

・経営管理職はブルーカラーよりも男性で5.3年、女性で3.4年長生きする。
・35歳の男性が65歳までに死亡するリスクをブルーカラーと経営管理職で比較した場合、前者(15%)は後者(6%)より2.5倍高い。女性では前者(8%)は後者(4%)の2倍に上る。
・65歳から75歳の間に死亡するリスクを男女合計でみると、ブルーカラーは経営管理職の1.7倍である。
・学歴別にみた場合、高学歴ほど長生きする。大学院修了レベルの男性は職業資格の無い男性よりも8.0年長生きする。

 「概ね納得できる」というのが大方の感想だろう。その理由としては、経営管理職であれば仕事の権限・裁量も多く、他者に指示をする立場であり、仕事を進める上でのストレスは少なく、その分、長生きできそうだからである。

 もちろん、しっかり成果を求められ、競争も激しく、ハードワークも必要となる立場でもある。その意味ではストレスは多いと思えるが、上からあれこれ命令されるストレスに比べれば、大したことではないのだろう。

 INSEEでは、経営管理職がブルーカラーワーカーよりも長生きする要因について、以下のように分析している。

・経営管理職はブルーカラーよりも職業的リスクに晒されることが少ない、つまり、ブルーカラーの方が労働関連の事故や病気、過酷な労働条件などにさらされることが多い。
・ブルーカラーは経営管理職に比べて、健康リスクの高い行動をしたり、医療機関を利用しない傾向があり、肥満になりやすい。
・職種や学歴による平均余命の差は、健康状態が原因となっているというよりも、結果として、不健康な行動をとる者が勉学に励むことや仕事を継続することができなくなったり、昇進機会を得られなくなったり、キャリアを形成する中で高い職業資格を必要とする職に就くことが難しくなるために生じている、という見方もできる。

 偶々だが、9月25日の日経新聞夕刊でも、高所得や高学歴のほうががん死亡のリスクが低くなるとの記事があった。他にも、経営者が労働者よりも長生きする傾向があるという研究結果はいくつもある。一般に、企業の上の立場に立つ人の方が、寿命は長いというのは真実なのだろう。

 とはいえ、本レポートは、カードルという特殊な管理職とブルーカラーを比較したものだ。管理職と言っても、経営者と一般社員の板挟みにあって苦悩する日本の中間管理職とは別物と考えたほうがよさそうである。日本の中間管理職が、仕事の裁量が少ない割に成果だけを求められるとすると、本レポートとは逆の結果にならないか心配である。     

 


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