2024/6/16

部下の適正人数

 評価者研修などで管理職の方によく聞かれる質問の1つが、1人の上司が持つ部下の適正人数、スパン・オブ・コントロールである。

 「一般に5~10人」と答えているが、この質問をしてくるのは、たいてい、たくさんの部下を抱える人だ。したがって、次に「自分には30人の部下がいて、正直、講師の言うような細かな部下の観察やフィードバック面談は現実的にムリ」というような話に展開していく。

 まあ、それはともかく、マネジャーが管理できる部下の人数は、いくつかの要因によって異なる。一般的には、以下のような要因を考慮して適正人数が決まる。

1. 業務の複雑さ
 複雑な業務や高度な専門知識を必要とする場合、マネジャーが1人1人に対してより多くの時間を割く必要があるため、部下の人数は少なくなる。
2. 業務の標準化の程度
 業務が標準化され、業務プロセスが明確化している場合は、マネジャーが管理しやすくなるため、部下の人数を増やすことができる。製造部門のライン業務などが典型的である。
3.マネジャーの経験とスキル
 マネジャーの管理スキルや経験によっても適正人数は変わる。経験豊富なマネジャーであれば、多くの部下を効率的に管理できる。
4. メンバーの経験とスキル
 逆の視点から、経験豊富でスキルの高いチームメンバーが多ければ、マネジャーのサポートは少なくて済むので、多くの部下を管理できる。

 これらは業種の特性にも反映される。1の「業務の複雑さ」から言えば、専門知識・スキルが必要とされるIT業界は、効率的なコミュニケーションや迅速な問題解決が求められるため、部下の適正人数は少な目となる。

 一方、2の「業務の標準化の程度」から言えば、現場の作業が比較的ルーティン化されている製造業では、部下の適正人数は多目となる。同様に、作業のフローがマニュアル化されている飲食業や小売業も多くなる。

 また、4の「メンバーの経験とスキル」の観点から、専門知識・スキルが必要とされる業種であっても、教育や医療、法務、コンサルティングなどは、メンバーの経験・スキルが資格等により一定水準を確保していることが多いので、部下の適正人数は多くなる場合もある。

 現代のマネジャーはプレイヤーを兼務するのが普通である。このため、部下のマネジメントに割ける時間は以前より少なくなっており、適正人数はこれまでよりも少なく見積もるのが妥当かもしれない。

 一方で組織のフラット化が進み、部下の人数は増えることも予想される。そのような中、部下の人数がキャパシティを超えるマネジャーにはどのような工夫が必要だろうか。

 最も効果が高く、現実性もあるのはやはり「権限委譲」である。サブリーダーやチームリーダーを任命し、権限を委譲することで管理の負担を分散するのが王道といえる。これにより、「メンバーの経験とスキル」が高まれば、マネジャーの関与をさらに減らせる効果も期待できる。逆に何でもマネジャー自身でやろうとすれば、部下は育たず、結果、自分で自分の首を絞めることになる。部下の多すぎで苦慮するマネジャーには、まず権限委譲を検討してほしい。

 冒頭の評価の話に戻れば、部下の観察や面談をすべて一人でやろうとせず、信頼できる部下に分担してもらうのもよいということだ。もちろん、上司や人事部門の了解が必要であり、最終的な責任はマネジャーが負う必要はあるが、評価や面談を本当に機能させるために、マネジャーとして適切な判断であると思う。    

 


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