2024/5/19

別居手当の支給実態

 中央労働委員会が4月30日に公表した2023年「賃金事情等総合調査」に、別居(単身赴任)手当に関する調査結果があった。別居手当の調査というのは結構レアなものと思うので、この機会に確認しておきたい。なお、調査対象企業は資本金5億円以上かつ労働者数1,000人以上の大企業である。

 まず、別居手当のある企業は、調査産業計で149社(集計161社の92.5%)となっている。対象が大企業ということもあってか、大半の企業で採用されている。

 平均支給額は、「定額支給」とする48社(採用企業の32.2%)では39.9千円となっている。また、「支給額に幅がある」とする82社(同55.0%)では、最高額が79.4千円、最低額が30.0千円となっている。支給額を社員一律とする企業よりも、社員により支給額が異なる企業の方が多いことがわかる。

 それでは、どのような基準で支給額に幅を設けているのだろうか。支給額の決め方(複数回答可)を見ると、以下の通りとなっている。

「資格別」33社
「自宅からの距離」26社
「帰宅運賃を基に算定」23社
「基本給にリンク」6社
「その他」38社

 「その他」が最も多く、決め方は多様なことがわかる。

 支給条件をみると、「支給に際し配偶者との別居条件を問わない」とする企業は、調査産業計で53社(採用企業の35.6%)となっており、「支給は配偶者との別居条件による」ほうが優勢である。

 支給対象となる別居条件(事由)にどのようなものがあるかと言えば、以下のものが挙げられている(複数回答可)。

「子供の教育」61社
「親の介護」56 社、
「転勤先が遠隔地」48社
「自宅所有」42社
「会社事情(社宅不備など)」18社
「その他」25社

 近年、テレワークの進展や転勤を忌避する社員が増えていることなどから、転勤制度を見直す企業が多い。独身者の割合も増えていることから、単身赴任そのものが減っており、別居手当の対象者は少なくなっていると思われる。

 とはいえ、共働き世帯が専業世帯の倍を超える現在、単身赴任せざるを得ない社員も一定数いる。二重生活を強いられる当該社員にとって、別居手当はありがたいものに違いない。

 別居手当は、単身赴任をする従業員にとって重要な支援策だが、家族との離別に伴う精神的・感情的な負担も無視できない。企業は、別居手当の金銭的サポートに加え、従業員とその家族の心身の健康を維持するためのサポート体制を整えることも重要となる。

 たとえば、単身赴任者の帰省手当や家族の訪問手当、オンラインコミュニケーションツールの提供や通信費の補助など、単身赴任者が安心して仕事に取り組めるよう、多様な観点からのサポートも考えたい。    

 


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