毎年話題となる米ギャラップ社の“エンゲージメント調査”の最新版がこのほど公表された。組織に貢献したいと思っている従業員の割合が、日本は2022年で5%に止まり、世界平均の23%より18ポイントも低くなったとのことだ。
近年、仕事や組織への愛着を意味する「エンゲージメント」への関心が高まるなか、日本の労働者のエンゲージメントの低さも知られるようになった。国としても危機感を抱いた…かどうかは不明だが、厚生労働省もポータルサイトでエンゲージメントの概要を説明したり、企業の取り組みを支援するためのリーフレットを作成したりしている。
エンゲージメントに関心を持つ企業が増えているものの、実際にどうすればよいかはなかなかイメージしづらいと思う。これについて、厚労省のリーフレットでまとめているので簡単に紹介しておきたい。
リーフレットでは次の6つの取り組みを示している。
①働き方の現状の確認
②柔軟・多様・快適な労働環境の整備
③仕事の意味や面白さを見出せるような働きかけ
④従業員と組織の方向性を一致させる
⑤納得感のある評価や処遇で報いる
⑥能力・キャリア開発の充実
それぞれ具体例を示しているのも参考になる。たとえば、③の「仕事の意味や面白さを見出せるような働きかけ」については、現在の業務が何につながっているかを上司から説明する、仕事をしてうれしかったことや工夫したことを紹介し合う場を設ける、などを例示している。
上記の①~⑥は取り組みのステップと言えるが、リーフレットでは、特に伸ばしたい点や特に課題と感じている点を踏まえ、できることから始めるのが大切と指摘している。
とはいえ、とりあえずやってみて、その後尻すぼみになるのは避けたい。必要と思って実施した人事施策が竜頭蛇尾になってしまった経験はどの企業にもあるはずだ。特に法的な義務付けのない取り組みはその傾向が強い。
リーフレットで各社の成功事例を掲げているが、共通しているのは継続的な取り組みである。エンゲージメントというのは、何か対策を打つことで劇的に向上するものではない。打ち上げ花火に終わらせることなく、地道な取り組みが求められる。
近年、人的資本に係る情報開示が進んでいる。会社として腰を据えて取り組むために、エンゲージメントに関するデータを公表するのもよいと思う。公表することで、実行せざるを得ない状況に追い込むわけである。これを毎年ウォッチすることで継続的な改善が期待できるようになる。開示が義務付けられていない非上場の中小企業にもぜひ勧めたい。