2024/1/28

昇格時の昇給の仕方

 先日、賃金テーブルを作成中の企業から、社員が昇格したときの賃金の取り扱いについて質問があった。具体的には、昇格した社員を昇格後の賃金テーブルにどう張り付けるかと、定期昇給は昇格前にするのか昇格後にするかの2つである。

 初めて賃金テーブルを作成する企業では、そのような疑問を持つこともあると思われる。本稿では、昇格した際の昇給の仕方について、一般的なやり方を整理しておこう。

 まずは、昇格後にどう張り付けるかだが、昇格後の賃金テーブルの1号俸とするのが原則である。ただし、賃金テーブルが重複型(下位等級の最高号俸が上位等級の最低号俸を上回っているもの)となっている場合、昇格後に賃金が下がってしまうケースがあるので、その場合は、昇格後の賃金と同額の号俸または直近上位の額の号俸とする。

 たとえば、2等級270,000円の社員の昇格を考えてみよう。このとき、3等級の1号俸は250,000円とすると、270,000円を下回るので原則の適用はできない。次に270,000円の近似値を見たとき、14号俸269,500円、15号俸271,000円があるとする。270,000円と同額の号俸はないので、直近上位額の15号俸271,000円に張り付けることになる。

 一般に賃金テーブルは重複型が多いので、実際のところは、この例外を適用するケースが多くなる。

 次に、定期昇給を行う場合、昇格前(=旧等級のテーブル)に行うのか、それとも昇格後(=新等級のテーブル)に行うかであるが、前者が一般的である。定昇というのは前年度の賃金に対する昇給である。4月1日が定昇日だとすると、3月末の賃金をベースに定昇を行うものだ。4月1日の賃金をベースに行うものではない。したがって、旧等級のテーブルで行うのが原則となる。特に評価を定昇に反映させる場合は、旧等級での評価は旧等級の賃金テーブルに反映させるのが整合的である。

 たとえば、2等級30号俸260,000円の社員が昇格するとしよう。評価はAで、この場合3号俸(3,900円)の昇給があるとする。そうすると、2等級33号俸263,900円としたうえで、3等級のテーブルに移行することになる。

 ところで、この原則の場合、重複型の賃金テーブルだと多くの人は昇格しても定昇分しか賃金が増えない。昇格へのモチベーションを高めるために、昇格時に定昇以上に賃金を上げたい企業もある。そのために、同号俸に移行させるという考え方もある。たとえば、2等級30号俸で昇格したのなら、3等級でも30号俸にするというものだ。ただ、この方法は2つの点から注意が必要である。

 1つは、各等級テーブルでピッチが異なる場合、号俸によって昇給額に違いが出てしまうことである。たとえば、2等級のピッチが1,300円、3等級のピッチが1,500円であったとしよう。25号俸のAさんと35号俸のBさんが昇格した場合を考えると、BさんはAさんに比べて2,000円(200円×10号俸分)昇給額は多くなる。一般に上位等級の方がピッチが大きいと思うので、高号俸にある人ほど昇給額は大きくなってしまう。

 もう1つの問題は、高号俸で移行した場合に、すぐにテーブルの天井に突き当たってしまいかねないことである。たとえば、2等級の号俸の上限近くで昇格した場合、3等級のテーブルも号俸数が同じであれば、昇格後も上限近くに張り付けられることになる。せっかく昇格したのに、数年で昇給ストップという事態になるのは、モチベーションの点からも問題だろう。

 したがって、昇格時に定昇以上の昇給を行いたいのであれば、等級ごとに一定の昇給額を決めておくのがよい。たとえば、2等級から3等級に昇格した場合は、定昇とは別に1万円昇給するといったルールを設けておく。3等級に張り付ける際には、定昇分にこの1万円を加えて張り付けることになる。    

 


 過去記事は⇒ミニコラムもご参照ください。
 お問い合わせは⇒お問い合わせフォームをご利用ください。

にほんブログ村 経営ブログ 人事労務・総務へ

にほんブログ村 士業ブログ 中小企業診断士へ
 

PVアクセスランキング にほんブログ村
にほんブログ村に参加しています。