2019年4月に導入された高度プロフェッショナル制度は、⾼度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で⼀定の年収要件を満たす労働者を対象として、労基法上の労働時間、休憩、休⽇及び深夜の割増賃⾦に関する規定から除外する制度だ。
昨年12月、本制度の適用者に行ったアンケート結果が労働政策・研修機構から発表された。調査の特徴は、高プロ対象者である22事業場の472名に対する全数調査という点だ。まあ、それだけ対象者が少ないということだが、高プロ社員の実態がよくわかるので結果を概観してみよう。
属性は、性別は男性が 82.3%、女性が 16.9%である。年齢は「30 代」が 45.7%と最も多く、次いで「20 代」22.4%、「40 代」19.7%、「50 代」11.0%、「60代以上」1.2%となっている。高プロ制度には年収1075万円以上という要件があるので、若年者はほとんどいないのではと思っていたが、「20 代」も結構いるのが意外である。
対象業務は、「コンサルタントの業務」が 60.2%と最も多く、次いで「ファンドマネジャー、トレーダー、ディーラーの業務」31.5%、「証券アナリストの業務」5.5%、「金融商品の開発の業務」1.6%、「新たな技術、商品又は役務の研究開発業務」1.2%となっている。この中で「研究開発業務」が最少なのが意外である。労働者のボリュームとしては「研究開発業務」従事者が最大と思われ、高プロ適用者のかなりの割合を占めると予想していたが、見当違いだったようである。
役職は、「一般社員」50.0%、「係長・主任」15.0%、「課長クラス」22.0%、「部長クラス」7.9%となっている。これも管理職クラスが多いのが意外である。というのも、管理職であれば時間外・休日労働規制は受けないため、高プロ社員にする必要性は低いと考えられるからだ。管理職であっても適用するのは、「名ばかり管理職」を回避するため、あるいは、深夜業の規制を免れ過るためだろうか。
給与形態は、「年俸制」が81.1%と大多数を占め、「月給制」は18.5%と少数派である。これはプロフェッショナル社員の特性から納得のいく数値である。年収は、「1,075万円以上1,500万円未満」が55.2%と過半数を占め、「1,500万円以上 2,000万円未満」が26.3%、「2,000万円以上」が16.4%である。
現在の高プロ制度適用の満足度については、「満足」(「満足している」と「やや満足している」の合計)87.7%に対して、「不満」(「やや不満である」と「不満である」の合計)は12.3%と、「満足」が圧倒している。
今後の高プロ制度適用の希望の有無についても、「希望する」が 89.4%、「希望しない」が 10.6%と、先の満足度と同様の結果が見られる。
ちなみに、2021年の厚労省「裁量労働制実態調査」によれば、裁量労働制の満足度は80.4%(「満足している」41.8%、「やや満足している」38.6%)である。
このように裁量労働制に比べても労働者の満足度の高い高プロ制度だが、冒頭で述べたようにとにかく対象者が少ない。2021年3月末時点で、導入企業は20社(21事業場)、対象労働者数は552人だった。約3年経過しているのだが、事業場は1つ、対象者は20人しか増えておらず、頭打ち状態である。
苦労して法制化した制度であり、「自分の能力を発揮して成果を出しやすい」「時間にとらわれず自由かつ柔軟に働くことができる」制度として、労働者の評価も高いようだ。適用者が増えるよう、対象業務の拡大など検討してみてはいかがと思う。