2023/7/9

採用面接での不適切発言

 リクルート就職みらい研究所の「就職プロセス調査」によれば、6月1日時点の大学生の就職内定率は79.6%(前年同月比+6.5ポイント)と、 6月選考解禁となった2017年卒以降、最も高くなったとのことだ。ただ、内定取得者の3分の1は依然就活を継続していることや、内定取得者の2割は複数の内定を保有していることから、内定辞退の増加が予想されると指摘している。

 内定辞退の理由は様々あろうが、その1つに就活中に得た当該企業のマイナスイメージがあるはずだ。特に印象を残すのは面接時の対応だろう。

 採用面接は、志望者のことを知ろうとするのが最大の目的のため、志望者のプライバシーに踏み込まざるを得ないこともある。特に
人格や性格が重視されるメンバーシップ型雇用の日本では、仕事と直接関係のない部分にまで踏み込みがちである。

 普段から慣れている採用部門であれば、どこまでが許されるかの線引きができるだろうが、それ以外の部門の社員や役員などは、彼・彼女らの“良識”に頼らざるを得ないのが実情だろう。面接者へのレクチャーなど事前に準備をするのも限界がある。結果、今の時代(あるいは今でなくても)許されない発言をしてしまい、志望者をドン引きさせるケースもあるようだ。

 連合の「就職差別に関する調査2023」結果によると、採用試験の面接で、不適切だと思う質問や発言をされたことが「ある」は 19.5%、「ない」は 80.5%となっている。

 「ある」が約2割なのは意外に少ないようにも思えるが、これは被面接者の意識にも問題がありそうだ。つまり、質問内容に対する許容範囲が広いのだ。

 調査では、「面接官が面接で聞いてはいけない質問だと思うもの」を尋ねているが、上位に「宗教に関すること」(56.7%)や「支持政党に関すること」(50.1%)が挙げられている。宗教や支持政党の質問は完全にNGのはずだが、約半数はそうは思っていないということだ。したがって、一般的な基準に従えば、不適切発言はもっとあると推察される。

 不適切発言の具体例を見ると、「女性だからどうせ辞める」「恋人がいたか、どこまで進んだかを聞かれた」などは論外として、「結婚や妊娠をしても仕事を続けるか」「親の会社について聞かれた」など、昭和の質問がいまだになされているのがわかる。また、「女性のほうが仕事が丁寧だから」など、アンコンシャス・バイアスに基づく発言も、今の時代避けなければならない。

 政治家の不適切発言に見られるように、多くの場合、本人に悪気はなく、むしろ円滑なコミュニケーションの一環として発言しているケースが多い。ただ、感覚がズレており、永年の習性は簡単に直せない。特に役員などは普段周りから注意されることも少ないので、そのような昭和のコミュニケーションをしがちである。時代感覚のズレた発言は、一事が万事でその会社の仕事環境や労務環境も古いのではと思わせる。

 このところ、人材採用の厳しさが急速に増していることは企業も実感しているはずだ。不用意な一言で志望者から見限られてしまうような事態は避けたいものである。     

 


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