2023/5/14

情報サービス業の労働実態

 今、最も引っ張りだこの職種としてITエンジニアが挙げられる。学生の中にはITエンジニアになるために、情報産業サービス業に就職しようと考える人は多いだろう。

 ただ、一般に情報産業サービス業といえば、「長時間労働」「キツイ」「その割に給与が低い」「定着率が悪い」といったマイナスイメージもある。実際のところどうなのだろうか。情報労連が毎年発表している「ITエンジニアの労働実態調査」の2022年版で確認してみたい。

 まず給与面だが、年齢別の大卒の所定内賃金は以下の通りだ。

30歳:285,237円(30~34歳:301千円)
40歳:367,573円(40~44歳:386千円)
55歳:439,417円(55~59歳:485千円)

 カッコ内は全産業の平均値である(2021年賃金構造基本統計調査)。年齢の切り取り方が少し異なるが、全産業に比べてやや低額となっている。

 役職別では以下の通りである。

一般職:247,779円(非役職者:277千円)
係長・主任相当:324,931円(係長級:368千円)
課長相当432,148円(課長級:476千円)
部長相当536,622円(部長級:578千円)

 カッコ内は同様に全産業の平均値で、役職別に見てもやや低額となっている。

 一般に賃金というのは企業規模間で格差があるものだが、情報サービス業で特徴的なのは、企業規模よりも元請・下請といったタイプ別の差が顕著なことである。たとえば大卒50歳の賃金を規模別・タイプ別で示すと以下のようになる。

1,000人以上:452,549円
100人未満:436,230円
元請型:486,487円
下請型:411,577円

 規模の違いよりもタイプの違いのほうが、賃金の差に影響していることがうかがえる。

 次に労働時間を見ると、2021 年度の年間総労働時間は1,955時間で、2006年の2,100時間から減少傾向にある。全産業は1,945時間(2021年毎月勤労統計調査)で、ほとんど変わりない。情報サービス業が長時間労働というのは、少なくとも現在は当てはまらないといえそうだ。

 年次有給休暇の取得状況は、2021 年度の実績(平均値)は以下の通りである。

付与日数:18.4日(17.6日)
取得日数:12.4日(10.3日)
取得率:67.3%(58.3%)

 カッコ内は、2022年就労条件総合調査による全産業の数値である。どちらかと言えば、年休を取得しやすい業種といえる。

 勤務形態を見ると、フレックスタイム制等の導入状況は以下の通りとなっている。

フレックスタイム制:56.2%(8.2%)
専門業務型裁量労働制:17.2%(2.2%)
企画業務型裁量労働制:4.0%(0.6%)
事業場外労働のみなし労働時間制:7.9%(12.3%)

 カッコ内は、2022年就労条件総合調査による全産業の数値である。事業場外みなし制を除き、全産業の数値を大きく上回っており、一般的な働き方とは異なる場合が多いのが、情報サービス業の特徴といえる。

 平均勤続年数は13.0年である。2021年賃金構造基本統計調査によると全産業では12.8年なのでほぼ同じだ。情報サービス業の定着率が悪いというのは誤ったイメージといえる。     

 


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