2023/2/19

賃上げをしないことのリスク

 前回、中小企業など賃上げを期待できない会社も多いことを述べたが、別のデータから裏付けてみよう。帝国データバンクが1月に実施した「2023 年度の賃金動向に関する企業の意識調査」によると、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引上げ)が「ない」と見込むのは、

「大企業」13.1%
「中小企業」18.0%
「小規模企業」25.7%

 となっており、やはり規模間の差が現れている(なお、賃金改善には定期昇給は含まないことに注意したい)。特に従業員「5 人以下」は33.1%で、規模が小さいほど、賃上げを期待できないことがうかがえる。

 この数字は、あくまで見込みであって実際にどうなるかだが、2022年度の実績は見込みよりも10ポイントほど増えており、2023年度も小規模企業では少なくとも30%を超えると思われる。小規模企業のおよそ3分の1は賃金が増えず、物価上昇を考えれば、実質的に5%の賃下げになってしまうということだ。

 なぜ賃金改善をしないのか、その理由を見てみると、上位に挙げられたのは次のものである(複数回答)。

「自社の業績低迷」62.2%
「物価動向」20.2%
「同業他社の賃金動向」15.5%

 「物価動向」というのは、本来、賃上げの理由となるものだが、物価上昇に伴うコスト増により収益が悪化していることを指していると思われる。

 「同業他社の賃金動向」は、同業他社も賃上げができていないので、人材定着・確保の上で不利にはならないとの思惑だろう。もっとも、賃金改善が「ある」と回答した企業の中に、「このご時世に賃上げしないと人財が流出してしまう。赤字になっても賃上げするしかない」との声が上げられており、賃上げしないという選択が、人材流出のリスクを高めるのは間違いない。

 そのリスクを減らすために、恒久的な人件費増となってしまうベアが難しいのなら、インフレ手当を一時金、あるいは一定期間支給するというのも考えられる。その余裕すらないのであれば、会社の状況を社員にきちんと説明することである。その際、併せて「何とか困難を一緒に乗り切ってほしい」とお願いもしたい。理と情の2つに訴えかけるのがポイントである。社員はわかってくれている、で済ませず、経営者自らが誠実に話をすることに意味がある。

 無策のまま、社員が辞めてしまっては元も子もない。そのリカバリーや人員補充のための労力・コストは、ベアやインフレ手当の何倍にもなると考えるべきである。     

 


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