2022/11/13

自ら管理職を降りる制度

 日経ビジネス誌で、中小企業の若手社員に「管理職になりたいか」というアンケートがあった。20代・30代の正社員200人を対象としたもので、8割以上が「なりたくない」と回答している。理由としては、「人の管理が面倒(56.6%)」「報酬と仕事量が見合わない(39.2%)」が上位に挙げられている。

 少し強い言葉で指導をすればパワハラを疑われる、部下に長時間労働はさせられないのでその分自分が頑張る、といった上司の姿を見て、その魅力のなさを痛感していることがうかがえる。

 当の管理職の思いは不明だが、大半の管理職者が程度の差はあれ、「やってられない」との気持ちを抱いているのは推察できる。中には完全にやる気を失って管理職から降りたいと望む人もいるだろう。そのような管理者の存在は、本人だけでなく、部下、会社にとっても不幸である。

 そのようなケースに対応するものとして、自らの意思で管理職を降りる制度はどうだろうか。実は、この制度は公務員の世界では広く存在する。「希望降職(あるいは降任)制度」というもので、本人の病気や家族の介護等で管理職の職責を果たせない場合のほか、業務の増大等によって身体的・精神的な負担が過大になった場合にも利用できる。つまりは、管理職に嫌気がさした場合でも利用可能ということだ。実際の利用者は多くないようだが、大規模な自治体では年に数人はいるようである。

 制度概要は以下のとおりである。

対象:「係長」など一定職位にあるもの以上
降職後の職位:本人が選択、あるいは1つ下の職位など
降職後の給与:降職後の職級に応じて設定。たとえば、下位級の同号俸にするなど
降職の可否:本人の希望を尊重しながら任命権者(首長など)が決定
再昇格:降職した理由がなくなれば再昇進できる場合もあり

 民間で制度化している企業はあまりないと思うが、民間でも同様に様々な要因で管理職がつらいと思っている人はいるはずだ。そのような人を「無責任だ」とか「情けない」と責めるのではなく、本人の意向に沿って別の役割で能力を発揮してもらうのも、今の時代には必要な考え方だろう。管理職が多数いる大企業など、導入を検討してみてはいかがだろうか。       

 


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