2022/7/10

70歳就業確保措置が進んでいない

 2021年4月から努力義務となっている70歳までの就業確保措置だが、取り組み状況は芳しくないようだ。

 厚生労働省が6月24日に公表した2021年「高年齢者雇用状況等報告」によると、2021年6月1日時点で実施済みの企業は25.6%で4社に1社ということである。努力義務とはいえ、法制化された割には異様に低い数値に思える。

 当該調査で理由についての質問はないが、別の経団連の調査(「2021年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」)では、「努力義務であるため(44.6%)」というのが、「検討する人員・時間が不足しているため(11.4%)」を引き離して圧倒的に多かった。コロナに振り回される中、現状そこまで手が回らないという企業が多いようだ。

 規模別では、中小企業が26.2%に対し、大企業は17.8%と停滞感が目立つ。一般に大企業の方が法令にきちんと対応するものだが、本件に関しては例外である。中小企業の方が進んでいるのは、人手不足のためにシニア人材に頼る必要があるからだろう。

 どのような措置を取っているかを、実施済みの企業の内訳で見ると以下の通りである。
 

・定年制の廃止(4.0%)
・定年の引上げ(1.9%)
・継続雇用制度の導入(19.7%)
・創業支援等措置の導入(0.1%)

 やはり継続雇用制度等の65歳雇用の枠組みが目立つ。業務委託契約の締結などの創業支援等措置の導入はわずかである。実施済みの企業も、とりあえず現在の仕組みを流用して済ませた、と言っては言い過ぎか。

 筆者が実際に接している範囲でも動きは鈍い。導入の有無を尋ねてもキョトンとする感じで、間が空いてから「導入していません」という返事が多い。中には「ああ、そういのもありましたね」とすでに過去のテーマとなっている企業もある。

 たとえ努力義務であっても、必要性が高ければ企業は取り組むはずである。定年再雇用制をはじめ、シニア雇用の運用に課題を抱える企業は多い。「65歳までの雇用に四苦八苦しているのに、70歳までの雇用など勘弁してほしい」というのが多くの企業の本音ではないだろうか。特に大企業で進んでいないのは、そういった実情による可能性が高い。

 救いを言えば、調査は1年前のものなので、リアルタイムではもっと導入が進んでいると思いたい。特にこういった新たな仕組みの導入は、他社の様子をうかがってから取り組むパターンが多い。実際にはもう少し導入が進んでいることを期待する。            

 


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