2022/1/23

70歳就業機会確保措置の現状

 昨年4月に努力義務となった70歳までの就業機会確保措置だが、企業の取り組みの現状はどうなっているのだろうか。

 経団連の「2021年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査」によると、2021年9~11月時点の調査で以下のようになっている。

・対応済み(決定済みを含む)(21.5%)
・対応を検討中(29.5%)
・検討する予定である(38.6%)
・検討していない(10.4%)

 「対応済」「対応を検討中」の企業の取り組み内容に挙げられたのは、「70歳までの継続雇用制度の導入(自社・グループ)94.3%」が圧倒的に多く、以下、「業務委託契約を締結する制度18.7%」「70歳までの継続雇用制度の導入(他社)11.4%」と続く(複数回答)。他は5%未満である。「業務委託契約締結」が意外と多いという印象である。

 「検討する予定」「検討していない」企業の検討していない理由として挙げられたのは、「努力義務であるため44.6%」が「検討する人員・時間が不足しているため11.4%」などを大きく引き離してのトップである。コロナ禍にあって、努力義務なのでとりあえず先送りしておこうとの姿勢がうかがえる。

 別の調査も見ておこう。マイナビが2021年12月に実施した「企業人材ニーズ調査2021年版」では、以下の結果となっている。

・70歳までの継続雇用制度の導入(24.2%、自社19.8%と他の事業主等4.4%の計)
・70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入(17.3%)
・70歳までの定年引上げ(11.9%)
・定年廃止(5.6%)
・社会貢献事業に従事できる制度の導入(4.1%)
・いずれの対応も行わない(36.8%)

 「対応しているか」「対応していないか」で区分すると、6対4というところである。経団連の調査を含め、企業の5~6割が努力義務を実施しているというのが実態のようだ。

 取り組み内容は、複数回答ではないこともあり、経団連のものとは違う結果となっている。ただ、「業務委託契約」の人気が高いことがこちらの調査にも表われている。特に製造業では、「継続雇用20.1%」に対し「業務委託契約21.7%」と、業務委託契約の方が上回っている。

 一般に製造現場では、複数の作業者により製品づくりがなされるので、各工程内、工程間の連携が重要となるため、個々の作業の業務委託は困難と思うがどうなのだろうか。もちろん、工程そのものをまるごと業務委託するケースは現状よくあるが、これだと、「継続雇用制度の導入(他の事業主)」に該当するはずだ。

 ともあれ、70歳就業機会確保措置として、業務委託契約のニーズが高いことがわかった。社員との業務委託契約というのは、ほとんどの企業で経験がないと思う。導入・運用にはそれなりの手間がかかるはずだが、その手間があっても、65歳超の高齢者を社員として抱えるよりはよいという判断なのだろう。            

 


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