在宅勤務が増え、通信費や設備費などの費用を企業・労働者がどのように負担するかが課題となっている。どちらが負担するかに法的な定めはなく、当事者の合意で決めることになる。ただ、業務上の出費であり、社員のモラールも考慮すれば、企業が何らかの負担をするのが妥当だろう。
厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」でも、費用負担について、「テレワークを行うことによって労働者に過度の負担が生じることは望ましくない」とし、「あらかじめ労使で十分に話し合い、企業ごとの状況に応じたルールを定め、就業規則等において規定しておくことが望ましい」としている。
それでは、企業の実態はどうなっているかを、先日公表された人事院の「令和2年民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要」で見てみよう。なお、この調査は、国家公務員の勤務条件を検討するためのもので、対象は従業員数50人以上の民間企業である。
正社員が在宅勤務を行っている企業のうち、在宅勤務に対する経費を「負担している」企業の割合は34.7%で、内訳は次の通りである。
・給与として支給(42.9%)
・福利厚生費として支給(7.9%)
・その他(49.2%)
「その他」の中身は明らかでないが、おそらく実費支給が多いと思われる。負担している経費の支給方法は、負担する経費の費目を特定している企業では、
・実費を毎月支給(23.8%)
・定額を毎月支給(22.5%)
・その他(53.8%)
と「実費」と「定額」がほぼ同割合である。また、負担する経費の費目を特定していない企業では、
・実費を毎月支給(11.6%)
・定額を毎月支給(41.4%)
・その他(47.0%)
と「定額」のほうが圧倒的に多い。
ただ、いずれも「その他」が半分近くを占めており、企業により、さまざまな支給の仕方をしていると思われる。
「定額を毎月支給」の金額は、「3,000円以上4,000円未満」が34.7%と最も多く、以下、「5,000円以上6,000円未満」(26.4%)、「2,000円以上3,000円未満」(15.6%)となっている。平均額は4,101円で、最高額は10,000円、最低額は1,000円である。
以上から類推すると、手当は3,000円あるいは5,000円というケースが多いと考えられる。社員の納得性と企業の人件費負担の双方から見て、妥当な金額といえそうだ。
最後に、在宅勤務の費用負担についての留意事項をまとめておく。
・上にも述べたように負担者や割合は当事者の合意で決めればよいが、労働者に費用負担をさせる場合は、労基法89条の定めにより就業規則に記載しなければならない。
・手当として支給をする場合は、給与として課税対象となる。また、パソコン等の事務用品を貸与ではなく、支給をした場合は現物給与として課税対象となる。
・手当は割増賃金の対象になる。